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第四章 叶わない願いはないと信じてる
第97話 町人Sは世にも愛らしい幼女に慰められる
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賑やかな鳥のさえずりで、目を覚ました翌朝。
安心しきった、無邪気なデゼルの寝顔の可愛らしさに、僕は、ため息をつきそうになった。
腕の中のデゼルの肌が優しい温かさに落ち着いていて、体調はもう、すっかりいいみたい。
やっぱり、デゼルはずっと、心がやすめていなかったんだ。
一晩で快方に向かうくらい、僕の腕の中で安心してくれて、それは、とっても嬉しいんだけど。
デゼルもエトランジュもむにゃむにゃ言いながら、心地好さそうに羽根の枕と掛け布団に埋まって、天使そのもの。
あんまり、平和で幸せな朝だったから。
失いたくない。
切ないくらい、そう思ったんだ。
デゼルが目を覚ましたら、失うかもしれない一日が始まる。
僕はまだ、全然、足りない。
もっと、たくさん、優しい時を過ごしていたい。
デゼルの百倍は僕を困らせてくれるエトランジュとの決着がついてないよ。
デゼルと二人がかりでも、なかなか、おとなしくさせられない、この可愛いさかりのエトランジュを。
元気いっぱいなエトランジュを。
どうやって守ろうか、どうやって育てようか、デゼルと一緒に考えるの、とっても楽しいのに。
闇魔法で寝かしつけても、起きるのはふつうに起きちゃうから。
いつの間にか起き出して、どこにでも這って潜り込んでしまって、昨日も三度は、エトランジュを探し回ってひやひやしたの、楽しかった。
僕の手が届かないところに潜り込んで、じーっと僕を睨んでるエトランジュをつかまえたい時はね。
ふいっとそっぽを向いて、デゼルとふたりで楽しそうにしておけば、ちっちゃなエトランジュは途端に寂しくなって、のこのこと這い出してくるんだよ。
……。
もっと、一週間でも一ヶ月でも、デゼルの体調が優れなければよかったのに、なんて。
こんなこと、考えてしまうのは初めて。
僕――
デゼルを殺しかけたこと、すごく、ショックだったのかもしれない。
無理を続けるデゼルをどうやってやすませようか考えてた間は、それに気を取られて、気がつかなかった。
この三日の間は、危ないことはしなかったし。
デゼルを失うことが怖くて、安心できるように、寝台に紐で縛ってみたりしたのかもしれない。
高熱で起きられないデゼルを抱いたのも、デゼルの回復が遅れるように、デゼルがどこにも行けないようにって――
目が覚めたら、デゼルはすぐまた聖サファイアの魔物を人に戻してあげに行こうって、言い出しそうで怖いんだ。
今度こそ、ケイナ様に殺されるかもしれなくても。
嫌だよ。
危険な場所に、僕はまだ、デゼルを行かせたくない。
こういうのが、錯乱?
デゼルの残りわずかな命の砂が、すべり落ちてゆくよう。
光が零れるような、波打つ銀の髪も。
透明感の高いきめ細かな白い肌も。
こんなに、綺麗なのに。
まだ、死んでしまうには早いよ。
僕にもエトランジュにも、まだまだ、デゼルがいてくれないと困るよ。
せめて、あと一週間。あと一か月。
死にさらわれない場所に、デゼルを隠しておきたい。
もう少しだけ、三人で一緒にいたい。
「ぱぁぱ?」
困ったな、声が出ないんだ。
僕が泣いてしまっていたから、目を覚ましたエトランジュが心配して、ぺちぺち、僕のほっぺを叩いて、慰めようとしてくれた。
もぉ、エトランジュって、なんでこんなに可愛いのかな。
お腹すいたよね?
お腹すいてるのに、僕を心配してくれる、エトランジュは優しいね。
可愛くって、愛しくって、抱き上げたエトランジュを、ぎゅっと抱き締めた。
どうか、あと少し、このままで――
安心しきった、無邪気なデゼルの寝顔の可愛らしさに、僕は、ため息をつきそうになった。
腕の中のデゼルの肌が優しい温かさに落ち着いていて、体調はもう、すっかりいいみたい。
やっぱり、デゼルはずっと、心がやすめていなかったんだ。
一晩で快方に向かうくらい、僕の腕の中で安心してくれて、それは、とっても嬉しいんだけど。
デゼルもエトランジュもむにゃむにゃ言いながら、心地好さそうに羽根の枕と掛け布団に埋まって、天使そのもの。
あんまり、平和で幸せな朝だったから。
失いたくない。
切ないくらい、そう思ったんだ。
デゼルが目を覚ましたら、失うかもしれない一日が始まる。
僕はまだ、全然、足りない。
もっと、たくさん、優しい時を過ごしていたい。
デゼルの百倍は僕を困らせてくれるエトランジュとの決着がついてないよ。
デゼルと二人がかりでも、なかなか、おとなしくさせられない、この可愛いさかりのエトランジュを。
元気いっぱいなエトランジュを。
どうやって守ろうか、どうやって育てようか、デゼルと一緒に考えるの、とっても楽しいのに。
闇魔法で寝かしつけても、起きるのはふつうに起きちゃうから。
いつの間にか起き出して、どこにでも這って潜り込んでしまって、昨日も三度は、エトランジュを探し回ってひやひやしたの、楽しかった。
僕の手が届かないところに潜り込んで、じーっと僕を睨んでるエトランジュをつかまえたい時はね。
ふいっとそっぽを向いて、デゼルとふたりで楽しそうにしておけば、ちっちゃなエトランジュは途端に寂しくなって、のこのこと這い出してくるんだよ。
……。
もっと、一週間でも一ヶ月でも、デゼルの体調が優れなければよかったのに、なんて。
こんなこと、考えてしまうのは初めて。
僕――
デゼルを殺しかけたこと、すごく、ショックだったのかもしれない。
無理を続けるデゼルをどうやってやすませようか考えてた間は、それに気を取られて、気がつかなかった。
この三日の間は、危ないことはしなかったし。
デゼルを失うことが怖くて、安心できるように、寝台に紐で縛ってみたりしたのかもしれない。
高熱で起きられないデゼルを抱いたのも、デゼルの回復が遅れるように、デゼルがどこにも行けないようにって――
目が覚めたら、デゼルはすぐまた聖サファイアの魔物を人に戻してあげに行こうって、言い出しそうで怖いんだ。
今度こそ、ケイナ様に殺されるかもしれなくても。
嫌だよ。
危険な場所に、僕はまだ、デゼルを行かせたくない。
こういうのが、錯乱?
デゼルの残りわずかな命の砂が、すべり落ちてゆくよう。
光が零れるような、波打つ銀の髪も。
透明感の高いきめ細かな白い肌も。
こんなに、綺麗なのに。
まだ、死んでしまうには早いよ。
僕にもエトランジュにも、まだまだ、デゼルがいてくれないと困るよ。
せめて、あと一週間。あと一か月。
死にさらわれない場所に、デゼルを隠しておきたい。
もう少しだけ、三人で一緒にいたい。
「ぱぁぱ?」
困ったな、声が出ないんだ。
僕が泣いてしまっていたから、目を覚ましたエトランジュが心配して、ぺちぺち、僕のほっぺを叩いて、慰めようとしてくれた。
もぉ、エトランジュって、なんでこんなに可愛いのかな。
お腹すいたよね?
お腹すいてるのに、僕を心配してくれる、エトランジュは優しいね。
可愛くって、愛しくって、抱き上げたエトランジュを、ぎゅっと抱き締めた。
どうか、あと少し、このままで――
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