お姫様に「愛してる」と言ってくれる皇子様♡

冴條玲

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ヒトコマ・シリーズ

今日こそ勝つ! ~なぜか男装の麗人を装っている、正真正銘の王子様に~

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 それはいつもと違う、ご令嬢方の詰めかけた中庭。

「今日こそ勝ぁつっ!」




 可愛らしくも、勇ましい声が響く。
 タンと、枝を蹴る音。
 小柄な影が、くるくると宙で2回転して見事に着地した。

 ――決まった。

 ご令嬢方の大歓声と黄色い悲鳴、拍手喝采が、その小柄な影に惜しみなく送られた。
 短く切ったプラチナ・ブロンド。それが、さらさらと風に揺れている。
 可愛らしいことこの上ない顔立ちの、王子様? お姫様?

(この演出をマスターするのに、一ヶ月もかけたことはナイショだ。)

 迎えるはシグルドの宝塚、なぜかわざわざ胸まで作って、男装の麗人を装うアディス王子。

「ティリス様ーっ! 頑張ってーーっ!」
「アディス様ーっ! 最高ーーっ!!」

 助走をつけ、そのままタンっと強く地を蹴り、ティリスが跳び上がった。その初太刀をアディスが難なく受ける。
 ギャラリーが沸いた。
 もっとも、ここまではしょせん挨拶代わりだ。ここからが本番だった。
 弾かれたティリスは着地すると、不敵な笑みを見せてその反動を使い、再度アディスに向かった。

 キン! キン! キン!

 芸術的なくらいに無駄のない動きで剣と剣がぶつかり合い、眩しい陽光を弾いて、白い軌跡を残した。

「ていっ!」

 斬りかかると見せて、ティリスがえいと足をかけてアディスを転ばした。

「取った!」

 しかし、アディスも素早く転がって、難を逃れていた。



 ――カキっ!

 数分後。
 アディスの剣が、ついにティリスの剣をはね上げた。
 ティリスが疲れたところを狙い、やや余裕を残して勝負をつけたのだ。

 ――本日も、お兄様の勝ち。

「また負けかよーっ!?」
「だけど、腕はだいぶ上がっているよ。着替えなきゃいけなくなった」
「ええいっ! 次は勝つっ!」
 
 彼女を唯一負かしてくれるアディス王子が、ティリスはやっぱり大好きなのである。


―完―



◆ 余談.シグルド最強は誰? ◆
実力的にはアディス王子が最強だって言われてるけど、『女』を武器にする方法を知っているカタリーナに、本気でやっても、アディス王子が勝てたことは過去一度もないとか。――やっぱお姉様か。


【挿絵】あらたか桂様
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