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「お父様。ステラ、ただいま帰りましたわ」
工房のドアをがらりと開けると、懐かしい機械油の香りがふわりと広がる。
ここはいつ帰ってきても変わらない。
それだけで心に言い知れぬ安心感が湧いてくるのを感じた。
「おおステラ。よく帰ったな」
工房の奥から人影。
防塵用のゴーグルをつけ、大きめのつなぎを身にまとったとても貴族には見えないこの人物が、私の父ルト=アイアンギアその人である。
「ロイドの調整が必要になった……って、わけではなさそうだな」
「ええお父様、それが……」
とりあえず私は簡単に、この急な帰省の理由を話すことにした。
「なるほど……シュタインとこの息子が、そんなことを」
私が全てを話終えると、お父様はゴーグルを外して天井を仰いだ。
お父様とヴィントの父、シュタイン家の当主は旧知の仲らしく。
互いの子供の性別が違っていたら婚約をさせよう、なんて気軽に口約束をしてしまうくらいには仲が良かったらしい。
「だからって、シュタイン様に物申すようなことはしないでくださいね、お父様」
「……ステラはそれでいいのか」
どうやら私が止めなければ、何かしようとしていたらしい。
せっかくの二人の仲に、こんなくだらないことで亀裂が入ってしまうのは、それこそ忍びない。
「自由にはさせてもらっていましたし、それにヴィントの言っていることにも一理ありますわ」
「……ううむ、しかしな」
私の機械好きは確実に、そして大いにお父様の影響がある。
だから今の発言は、お父様にとって少し耳の痛いものだったかもしれない。
「あのね、お父様……」
「……ルト男爵は、いるか」
私がお父様に労いの言葉をかけようとしたのとほぼ同時に、工房のドアが開け放たれた。
(お客様、かしら?)
体格のいいお父様より少しだけ背丈の大きなその人物。
ボサボサの髪を無造作に束ねた髪型と不健康そうな表情から、同業者のようにも見えなくはないが。
「ジン侯爵様、今日はどういった御用で?」
「……右腕の調子が芳しくない。また看てもらえるか」
どうやらお客様だったようだ。
(でも、うちを病院と勘違いしているのかしら)
腕を看てくれ、なんていうからそんな考えが一瞬頭をよぎったが。
「では早速、見せて頂いてもよろしいですか」
「……ああ、頼む」
「ロイド、助手を」
「かしこまりました」
コートに隠されていた右腕が差し出されると、合点がいった。
(魔導義手……!)
従来の義手と違い、魔力を動力源とすることで精密な動作を可能にした義手。
大きな魔力を必要とする上に調整も難しいせいで、まだ実用性には乏しいといわれていたはずだったが。
「注ぎ込まれる魔力の量に、義手側が対応しきれていなかったようです」
「……そうか、なかなか難しいものだな」
魔導義手側対応しきれない魔力とは。
どうやら侯爵様は凄まじい魔力の持ち主らしい。
「とりあえず限界まで許容量をあげてみましたが、またすぐに調整が必要になる可能性が高いです」
「……ふむ」
「ご不便お掛けして申し訳ありません」
「……いや、試作品を無理行って使わせてもらっているのだからな。承知の上だ」
どうやらこの魔導義手、お父様が作った物らしい。
そうだろうとは思っていたが、さすがお父様だ。
なんてことを思っていたら、お父様との会話に興じていた侯爵様の視線が不意にこちらを向いた。
工房のドアをがらりと開けると、懐かしい機械油の香りがふわりと広がる。
ここはいつ帰ってきても変わらない。
それだけで心に言い知れぬ安心感が湧いてくるのを感じた。
「おおステラ。よく帰ったな」
工房の奥から人影。
防塵用のゴーグルをつけ、大きめのつなぎを身にまとったとても貴族には見えないこの人物が、私の父ルト=アイアンギアその人である。
「ロイドの調整が必要になった……って、わけではなさそうだな」
「ええお父様、それが……」
とりあえず私は簡単に、この急な帰省の理由を話すことにした。
「なるほど……シュタインとこの息子が、そんなことを」
私が全てを話終えると、お父様はゴーグルを外して天井を仰いだ。
お父様とヴィントの父、シュタイン家の当主は旧知の仲らしく。
互いの子供の性別が違っていたら婚約をさせよう、なんて気軽に口約束をしてしまうくらいには仲が良かったらしい。
「だからって、シュタイン様に物申すようなことはしないでくださいね、お父様」
「……ステラはそれでいいのか」
どうやら私が止めなければ、何かしようとしていたらしい。
せっかくの二人の仲に、こんなくだらないことで亀裂が入ってしまうのは、それこそ忍びない。
「自由にはさせてもらっていましたし、それにヴィントの言っていることにも一理ありますわ」
「……ううむ、しかしな」
私の機械好きは確実に、そして大いにお父様の影響がある。
だから今の発言は、お父様にとって少し耳の痛いものだったかもしれない。
「あのね、お父様……」
「……ルト男爵は、いるか」
私がお父様に労いの言葉をかけようとしたのとほぼ同時に、工房のドアが開け放たれた。
(お客様、かしら?)
体格のいいお父様より少しだけ背丈の大きなその人物。
ボサボサの髪を無造作に束ねた髪型と不健康そうな表情から、同業者のようにも見えなくはないが。
「ジン侯爵様、今日はどういった御用で?」
「……右腕の調子が芳しくない。また看てもらえるか」
どうやらお客様だったようだ。
(でも、うちを病院と勘違いしているのかしら)
腕を看てくれ、なんていうからそんな考えが一瞬頭をよぎったが。
「では早速、見せて頂いてもよろしいですか」
「……ああ、頼む」
「ロイド、助手を」
「かしこまりました」
コートに隠されていた右腕が差し出されると、合点がいった。
(魔導義手……!)
従来の義手と違い、魔力を動力源とすることで精密な動作を可能にした義手。
大きな魔力を必要とする上に調整も難しいせいで、まだ実用性には乏しいといわれていたはずだったが。
「注ぎ込まれる魔力の量に、義手側が対応しきれていなかったようです」
「……そうか、なかなか難しいものだな」
魔導義手側対応しきれない魔力とは。
どうやら侯爵様は凄まじい魔力の持ち主らしい。
「とりあえず限界まで許容量をあげてみましたが、またすぐに調整が必要になる可能性が高いです」
「……ふむ」
「ご不便お掛けして申し訳ありません」
「……いや、試作品を無理行って使わせてもらっているのだからな。承知の上だ」
どうやらこの魔導義手、お父様が作った物らしい。
そうだろうとは思っていたが、さすがお父様だ。
なんてことを思っていたら、お父様との会話に興じていた侯爵様の視線が不意にこちらを向いた。
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