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第二章 異形
十五話
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少し遅めの昼食に見知った犬の姿は無く、ひょろながの店での事もあってあなたは少し気に掛けていた。
どうやらめいも同じらしく、家事の最中にもしきりに縁側の方へ視線を送っては姿が無い事を確認して小さく息を吐いている。
成り行きで一緒にいたが、あなたはポチの事を何も知らない。こんな時にどうかとも思ったが、こんな時だからこそ聞きそびれては二度と聞く事も無さそうだったのであなたはめいに尋ねてみる。
庭先でポンプを動かしていためいは、あなたの声に少し照れたように笑うと、
「私がここへ来た時から一緒でしたので……姿が見えないと変に落ち着かなくって」
そう呟いてから、ポンプを握る手を片方離して頬に当てると、
「以前から度々いなくなることはあったのですが、ここまで頻繁ではなかったので少し心配なのです」
そう続けた。
この様子だと、めいもポチの行方を知らなそうだ。家から自由に出歩くことが出来ない事を考えると当然とも言えるが。
その後もめいはしばらく姿の見えぬ犬の事について憂いていたが、ばしゃばしゃと水が溢れる音で我に帰ると、すぐにポンプを動かす手を止めて桶から離れた。
そんな一連の流れを見て笑っていたあなたは、ふとどこからか視線を感じめいを視界から外した。
最初はあの茂みの方かと思ったがどうも違うらしく、あなたは辺りを見回して気配を探る。そんな様子のあなたを見つめるめいの表情は怪訝な物で、どうやらめいには感じないらしい。
先程の事に気を取られてめいは気付いていないのかもしれないし、あなたの気のせいなだけかもしれないが、用心に越したことはない、とあなたはスリッパをはいて縁側へ降りた。
あなたの横を桶を抱えためいが通り過ぎ、入れ替わるようにあなたが井戸の方へと歩を進めると、ガサリと玄関側の茂みが音を立てた。
どうやら気のせいではなかったらしい、あなたは咄嗟に身構えると、ゆっくりと茂みとの距離を縮めていく。
あと数歩で茂みの中へ手を伸ばせそうな位置まで近づいた所で、再び茂みが大きく揺れ、何かが勢いよく飛び出してきた。
明らかにあなたを狙って飛び出してきた何かへ向かって、あなたも負けじと渾身の手刀を繰り出す。
「むぎゃっ」
ゴツン、と鈍い音がしたかと思うと、ゆっくりとあなたの手に地味だが重い痛みが広がっていく。そんな痛みを誤魔化すようにぶんぶんと手を振りながら、あなたは飛び出してきた何かを確認するために視線を下げた。
俯せで大の字になりピクリとも動かないそいつは、背丈だけで言えばめいとあなたを足して二で割ったほどしかなく、一見ただの子供のようにも見えるが、白装束のような服の隙間から見える青い肌と伏せられた頭からちらりと覗く小さな角から、人間の子供ではない事だけは窺い知れた。
そこまで力を込めたつもりは無かったのだが、どうやらあなたの手刀によって完全に意識を失っているらしく、角の先を指で突いてみても全く反応が無い。
一瞬、ひょろなががやったようにぶん投げてしまおうか、という考えがあなたの頭をよぎったが、持ち上げた時の重量であえなく断念した。
そもそも、普通に人を抱えて投げるなどせいぜい玄関先へ転がすぐらいが限度と言うものだろう。鍛えればいつかあんな風に出来るのだろうか、などとアホらしいことを考えながらあなたはその子供を背負って家の中へと戻ると、めいの名を呼んだ。
思いがけぬ事とはいえ気絶させたのはあなたなので、このまま放置するのも何となく目覚めが悪い気がしたし、何より何でもいいから話を聞かせて欲しかったのだ。
どうやらめいも同じらしく、家事の最中にもしきりに縁側の方へ視線を送っては姿が無い事を確認して小さく息を吐いている。
成り行きで一緒にいたが、あなたはポチの事を何も知らない。こんな時にどうかとも思ったが、こんな時だからこそ聞きそびれては二度と聞く事も無さそうだったのであなたはめいに尋ねてみる。
庭先でポンプを動かしていためいは、あなたの声に少し照れたように笑うと、
「私がここへ来た時から一緒でしたので……姿が見えないと変に落ち着かなくって」
そう呟いてから、ポンプを握る手を片方離して頬に当てると、
「以前から度々いなくなることはあったのですが、ここまで頻繁ではなかったので少し心配なのです」
そう続けた。
この様子だと、めいもポチの行方を知らなそうだ。家から自由に出歩くことが出来ない事を考えると当然とも言えるが。
その後もめいはしばらく姿の見えぬ犬の事について憂いていたが、ばしゃばしゃと水が溢れる音で我に帰ると、すぐにポンプを動かす手を止めて桶から離れた。
そんな一連の流れを見て笑っていたあなたは、ふとどこからか視線を感じめいを視界から外した。
最初はあの茂みの方かと思ったがどうも違うらしく、あなたは辺りを見回して気配を探る。そんな様子のあなたを見つめるめいの表情は怪訝な物で、どうやらめいには感じないらしい。
先程の事に気を取られてめいは気付いていないのかもしれないし、あなたの気のせいなだけかもしれないが、用心に越したことはない、とあなたはスリッパをはいて縁側へ降りた。
あなたの横を桶を抱えためいが通り過ぎ、入れ替わるようにあなたが井戸の方へと歩を進めると、ガサリと玄関側の茂みが音を立てた。
どうやら気のせいではなかったらしい、あなたは咄嗟に身構えると、ゆっくりと茂みとの距離を縮めていく。
あと数歩で茂みの中へ手を伸ばせそうな位置まで近づいた所で、再び茂みが大きく揺れ、何かが勢いよく飛び出してきた。
明らかにあなたを狙って飛び出してきた何かへ向かって、あなたも負けじと渾身の手刀を繰り出す。
「むぎゃっ」
ゴツン、と鈍い音がしたかと思うと、ゆっくりとあなたの手に地味だが重い痛みが広がっていく。そんな痛みを誤魔化すようにぶんぶんと手を振りながら、あなたは飛び出してきた何かを確認するために視線を下げた。
俯せで大の字になりピクリとも動かないそいつは、背丈だけで言えばめいとあなたを足して二で割ったほどしかなく、一見ただの子供のようにも見えるが、白装束のような服の隙間から見える青い肌と伏せられた頭からちらりと覗く小さな角から、人間の子供ではない事だけは窺い知れた。
そこまで力を込めたつもりは無かったのだが、どうやらあなたの手刀によって完全に意識を失っているらしく、角の先を指で突いてみても全く反応が無い。
一瞬、ひょろなががやったようにぶん投げてしまおうか、という考えがあなたの頭をよぎったが、持ち上げた時の重量であえなく断念した。
そもそも、普通に人を抱えて投げるなどせいぜい玄関先へ転がすぐらいが限度と言うものだろう。鍛えればいつかあんな風に出来るのだろうか、などとアホらしいことを考えながらあなたはその子供を背負って家の中へと戻ると、めいの名を呼んだ。
思いがけぬ事とはいえ気絶させたのはあなたなので、このまま放置するのも何となく目覚めが悪い気がしたし、何より何でもいいから話を聞かせて欲しかったのだ。
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