勇者「その武器重くねぇの？」

31

魔王「ふんっ！」

勇者「はぁっ！」

ｷｨﾝ

魔王「ぬぅっ……」

勇者「くっ……」

ｷﾞｨﾝ

魔王「やるな……！」

勇者「お前もな……！」


魔法使い「勇者、頑張れーっ！」

僧侶「……がんば」

鎧騎士「魔王様、そこです！」

魔法使い「……ねぇ、あんた」

鎧騎士「む……」

魔法使い「そんなに睨まないでよ。どうせお互い何も出来ないんだから」

鎧騎士「……ふん」

僧侶（……武器、下した）

鎧騎士「先に言っておくが、慣れ合う気はないぞ」

魔法使い「むぅ、堅いなぁ」

鎧騎士「そういう貴様は軽すぎる。勇者が死ぬかもしれんのだぞ」

魔法使い「死なないよ」

鎧騎士「……なに？」

魔法使い「勇者は死なないよ」

鎧騎士「それは今までの話で……」

魔法使い「絶対、死なない」

鎧騎士「うぐ……ま、魔王様だって負けんぞ！」

僧侶（……仲良し？）


魔王「私は負けんぞ、勇者よ……！」

勇者「俺だって、負けん……！」

魔王「ずぇあっ！」

勇者「っ！！」

魔法使い「勇者、危ないっ！」

勇者「分かって……らぁっ！」

鎧騎士「来ます、魔王様っ！」

魔王「案ずるなっ……！」

鎧騎士「……ほっ」


鎧騎士（魔王様、魔王様……っ）

魔法使い「もう一つ、聞いてもいい？」

鎧騎士「今度は何だ」

魔法使い「なんであんたはあの魔王と一緒にいるの」

鎧騎士「あの魔王とはなんだ。失敬な」

魔法使い「だって魔族ってこう、力に従うようなイメージがあるからさ」

鎧騎士「……まぁ、その認識は間違っていないが」

魔法使い「でしょ？」

鎧騎士「私の一族は代々魔王様に仕えてきたのだ。そこらの魔族のように力の有無だけで魔王様を見てなどいない」

魔法使い「なるほどなるほど」

鎧騎士「そもそも、勝手に王を名乗る者どもがおかしいのであって……」

魔法使い「好きなんだね、魔王の事が」

鎧騎士「……は？」

魔法使い「なんとなく分かるな。ほっとけないんだよね、ああいうタイプって」

鎧騎士「おいこら」

魔法使い「あれ、違った？」

鎧騎士「話を聞いていなかったのか。私の一族は……」

魔法使い「それだけが理由じゃないよね」

鎧騎士「そ、そんなことは……」

魔法使い「……じぃ」

鎧騎士「お、お前だってあの弱い勇者と旅をしてきたんだろ？」

魔法使い「そうだね」

鎧騎士「そっちの方がよほど変だ」

魔法使い「変、かなぁ？」

鎧騎士「お前こそ、勇者の事が好きなんじゃないか」

魔法使い「うん、大好き」

鎧騎士「んなっ……」

魔法使い「だから、勇者は負けないよ」

鎧騎士「ぬぬぬ……わ、私だって魔王様をお慕いしておるわ！だから魔王様は負けん！」

魔法使い「ほら、やっぱり」

鎧騎士「だ、黙れ黙れっ！」

僧侶（……やっぱり、仲良し）


魔王「そろそろ倒れても、よいのだぞ」

勇者「お前こそ、もう限界なんじゃないか？」

魔王「……ふん、減らず口を」

勇者「……お互い様だろ？」


魔王（今の言葉、戯言ではないな）

勇者（多分、次で決まる）


魔王（ならば……）

魔王「こちらから行くぞ、勇者ぁ！」

勇者「来い、魔王っ！」


鎧騎士「魔王様っ！」

僧侶「……勇者っ」

魔法使い「負けるな、勇者ぁーっ！」




魔法使い『ゆうしゃー、いきなりたびなんてどうしたの？』

勇者『……おやじが、かえってこないんだ』

勇者『かあさんまいにちかなしそうだから……おれがさがしにいくんだ！』

魔法使い『でもゆーしゃ、まものとたたかえるの？』

勇者『うぐ……だいじょうぶ……なはず』

魔法使い『もー、しかたないなー、ボクがいっしょにいってあげる！』

勇者『なんでおまえが……』

魔法使い『だって、ボクのほうがゆうしゃよりつよいもん！』