童話のような魔法は無いけれど

ハナミツキ

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「キレイな銀髪、羨ましいです……」

「どうせなら、カチューシャもお付けいたしましょうか……」

「メイクは……必要なさそうですね」

 その後もしばらくされるがままにされた後、私はユウリ様の元へと通された。

「その恰好は……?」

 両手の指では数えきれないほどの人数が座れそうな長机に一人腰かけていたユウリ様が、私の姿を見て目を丸くする。
 
「……私が、お願いしたんです」

 何やらユウリ様が文句を言いたげに見えたので、三つ子メイドが何かを言われる前に言葉を加える。

「あ、いや……そう、なのか?」

「……はい」

 どの服を着ても不釣り合いに感じたので、という部分については黙っておく。

「ふむ……」

 私からの回答を聞いた後でも、やはりユウリ様は怪訝そうな顔で私を見つめ返している。

「……もしかして、似合っておりませんか?」

 などと尋ねてみても、

「い、いや。そんなことはないぞ、うん」

 といったような様子でなんだかはぐらかすような言葉が返ってくるだけ。

「いやー、王子が……」

「こんなになっちゃうなんて……」

「これからが、楽しみ……」

 遠巻きにこちらの様子をうかがっている三つ子メイドがまた三者三様に何か言っていたが、その内容はよく聞き取れなかった。

「おや、珍しいね……お前が新しいメイドを雇うなんて」

 その時、なんだか妙な空気が流れていた私とユウリ様の間を切り裂くように力強い声がしたかと思うと、私が通された入口とは別の奥にある扉から一人の女性が現れた。

「……母上、違います。リリはメイドではありません」

 その声にハッと我を取り戻したように、ユウリ様が反応する。

(……母上?)

 確かによくよく見てみると、少し曲がった髪質も、美しく光る金色の髪も、海をそのまま閉じ込めたような青い瞳も、全てが二人の血の繋がりを表している。

「いや、どう見てもメイドにしか見えないが……随分とちっこいようだけど」

「その恰好には色々と事情がありまして……って、そんな事よりも」

 言い合うような姿勢になっていたユウリ様が突然私の方へ向き直り、私の肩を抱く。
 あまりに突然のことに、私の身体は完全に硬直して動かなくなった私だったが、

「改めて紹介します、母上。婚約者のリリです」

 続く言葉に今度は思考までも停止してしまった。

「ほう……じゃあ、その恰好はお前の趣味というわけか」

 しかし女王様はそんな情報を得ても別段驚く様子もなく、

「それもちょっと違いまして……いや、もうそれでいいです」

 ユウリ様もユウリ様で、大した報告などしてなどいないと言わんばかりの様相で。
 むしろこの会話の外にいる三人メイドの方が、なにやら大はしゃぎしている。

「……あの、ユウリ様?」

「どうした、リリ」

「……婚約者、というのは、一体」

 あまりに急な展開に付いてこない頭をなんとか叩き起こし、かろうじて質問を投げかけると、なぜかユウリ様の表情が曇ってしまった。
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