101 / 177
第七章 もう一度
第九十二話 小賢しい道
しおりを挟む
俺、ファーリちゃん、ガラテヤ様の三人は、ものの数分で洞窟の最奥へと到着する。
そこには、かつてバグラディが繋がれていたであろう拘束具に加え、数人の囚われていた、おそらくは囚人と思しき人達の遺体が残されていた。
「見つけたわ!おそらく、あの牢の中に、貴方の父親が!」
「父さん!……父さん?」
拘束具の数が死体よりも二つ多いところを見るに、片方はバグラディのものだろうが、もう片方は、かつて父さんが繋がれていたものであろうということが容易に想像できた。
しかし、そこに父さんの姿は見当たらない。
既に、どこかへ連れ去られた後だと言うのだろうか。
或いは、俺達の侵入に気付いた残党が、裏口がどこかから連れ出したとも考えられる。
ここで死んでいる他の囚人達は、抵抗したか不必要と見做されたかで殺されたのだろうか。
「いないね」
「いないわね。天井に穴みたいなものも無いし」
ロディアが幻覚を見せている、或いは幻覚を用いたトラップもしくはカモフラージュを残していた可能性はあるが……。
一体、どこへ行ったのやら。
さっぱり見当がつかない。
「床……変なところある」
しかし、牢獄の床にファーリちゃんが異変を見つけた。
脱出口だろうか、これがどこに繋がっているかは分からないが、明らかに父さんを連れ出した際に用いたことは明白だろう。
「ここは使われたと思って間違いなさそうだけど……どこに繋がってるのかしらね?」
「こんな洞窟に地下……?」
「……っ!?」
ファーリちゃんが鉄格子へ顔を近づけた瞬間に、悪寒が走った。
「ん?どう……」
「そこだッ!」
そしてファーリちゃんが振り返る前に、背後へ向いて一突き。
「おおっと。伊達に一度殺されてない……ね……」
すると、何も無かったハズの空間から現れた、ロディアの分身と思しき闇の塊が一瞬で灰と化す。
それと共に、牢も、鉄格子も、地下への穴らしきものも消滅し、牢の奥へ道が現れた。
あれがおそらく、本来続いている洞窟の先だろう。
「ふぅ。危ないところだった」
「よく気づいたわね。私の目の前にいたハズなのに……見えなかったわ……」
「やっぱり、ロディアはまだ幻術を使っていると考えて間違い無いと思います。アイツがそこまで高度なことを出来るなら、ですけど……。俺達が見ている世界は、少しずつそれぞれ違っている可能性だってあるかもしれません」
「そんなことされたら、流石においら達の負けみたいなものかも」
「ああ。でも、俺もガラテヤ様もファーリちゃんも、『地下への穴らしきもの』は見えていた。だから、少なくとも『三人に全く違う景色を見せ続ける』ことは出来ないんだと思う」
「そうね。私達の中で特に反応が噛み合わなかったのは、貴方の背後にいるロディアに対してだけだものね」
俺の前で牢の中を覗いていたファーリちゃんは、俺の背後のことなど、分からなくて当然だ。
それに対して、ガラテヤ様は俺の後ろを歩いているのに、俺に背後から忍び寄っていたロディアの分身に気づけていない。
特に、俺とガラテヤ様は身体的な繋がりを持ち続けているにもかかわらず、見ている景色が違った。
違う景色が見えてしまう理由が、魂では無いのだろうということは判明したが……謎はますます深まるばかりである。
しかし、牢の設備一式が消えて洞窟の奥が見えるようになったのは三人とも認識できていた。
これは、術が解かれたと考えて間違い無いだろう。
洞窟の奥が見えたは良いが、これで視界が必ずしも信じられるとは限らなくなってしまった。
ロディアが、ここまで回りくどいことをしてまで一体俺達に近づいているのは、何故なのか。
俺達は少しずつ、その真相へ迫ろうとしているのであった。
そこには、かつてバグラディが繋がれていたであろう拘束具に加え、数人の囚われていた、おそらくは囚人と思しき人達の遺体が残されていた。
「見つけたわ!おそらく、あの牢の中に、貴方の父親が!」
「父さん!……父さん?」
拘束具の数が死体よりも二つ多いところを見るに、片方はバグラディのものだろうが、もう片方は、かつて父さんが繋がれていたものであろうということが容易に想像できた。
しかし、そこに父さんの姿は見当たらない。
既に、どこかへ連れ去られた後だと言うのだろうか。
或いは、俺達の侵入に気付いた残党が、裏口がどこかから連れ出したとも考えられる。
ここで死んでいる他の囚人達は、抵抗したか不必要と見做されたかで殺されたのだろうか。
「いないね」
「いないわね。天井に穴みたいなものも無いし」
ロディアが幻覚を見せている、或いは幻覚を用いたトラップもしくはカモフラージュを残していた可能性はあるが……。
一体、どこへ行ったのやら。
さっぱり見当がつかない。
「床……変なところある」
しかし、牢獄の床にファーリちゃんが異変を見つけた。
脱出口だろうか、これがどこに繋がっているかは分からないが、明らかに父さんを連れ出した際に用いたことは明白だろう。
「ここは使われたと思って間違いなさそうだけど……どこに繋がってるのかしらね?」
「こんな洞窟に地下……?」
「……っ!?」
ファーリちゃんが鉄格子へ顔を近づけた瞬間に、悪寒が走った。
「ん?どう……」
「そこだッ!」
そしてファーリちゃんが振り返る前に、背後へ向いて一突き。
「おおっと。伊達に一度殺されてない……ね……」
すると、何も無かったハズの空間から現れた、ロディアの分身と思しき闇の塊が一瞬で灰と化す。
それと共に、牢も、鉄格子も、地下への穴らしきものも消滅し、牢の奥へ道が現れた。
あれがおそらく、本来続いている洞窟の先だろう。
「ふぅ。危ないところだった」
「よく気づいたわね。私の目の前にいたハズなのに……見えなかったわ……」
「やっぱり、ロディアはまだ幻術を使っていると考えて間違い無いと思います。アイツがそこまで高度なことを出来るなら、ですけど……。俺達が見ている世界は、少しずつそれぞれ違っている可能性だってあるかもしれません」
「そんなことされたら、流石においら達の負けみたいなものかも」
「ああ。でも、俺もガラテヤ様もファーリちゃんも、『地下への穴らしきもの』は見えていた。だから、少なくとも『三人に全く違う景色を見せ続ける』ことは出来ないんだと思う」
「そうね。私達の中で特に反応が噛み合わなかったのは、貴方の背後にいるロディアに対してだけだものね」
俺の前で牢の中を覗いていたファーリちゃんは、俺の背後のことなど、分からなくて当然だ。
それに対して、ガラテヤ様は俺の後ろを歩いているのに、俺に背後から忍び寄っていたロディアの分身に気づけていない。
特に、俺とガラテヤ様は身体的な繋がりを持ち続けているにもかかわらず、見ている景色が違った。
違う景色が見えてしまう理由が、魂では無いのだろうということは判明したが……謎はますます深まるばかりである。
しかし、牢の設備一式が消えて洞窟の奥が見えるようになったのは三人とも認識できていた。
これは、術が解かれたと考えて間違い無いだろう。
洞窟の奥が見えたは良いが、これで視界が必ずしも信じられるとは限らなくなってしまった。
ロディアが、ここまで回りくどいことをしてまで一体俺達に近づいているのは、何故なのか。
俺達は少しずつ、その真相へ迫ろうとしているのであった。
0
あなたにおすすめの小説
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
【改訂版】槍使いのドラゴンテイマー ~邪竜をテイムしたのでついでに魔王も倒しておこうと思う~
こげ丸
ファンタジー
『偶然テイムしたドラゴンは神をも凌駕する邪竜だった』
公開サイト累計1000万pv突破の人気作が改訂版として全編リニューアル!
書籍化作業なみにすべての文章を見直したうえで大幅加筆。
旧版をお読み頂いた方もぜひ改訂版をお楽しみください!
===あらすじ===
異世界にて前世の記憶を取り戻した主人公は、今まで誰も手にしたことのない【ギフト:竜を従えし者】を授かった。
しかしドラゴンをテイムし従えるのは簡単ではなく、たゆまぬ鍛錬を続けていたにもかかわらず、その命を失いかける。
だが……九死に一生を得たそのすぐあと、偶然が重なり、念願のドラゴンテイマーに!
神をも凌駕する力を持つ最強で最凶のドラゴンに、
双子の猫耳獣人や常識を知らないハイエルフの美幼女。
トラブルメーカーの美少女受付嬢までもが加わって、主人公の波乱万丈の物語が始まる!
※以前公開していた旧版とは一部設定や物語の展開などが異なっておりますので改訂版の続きは更新をお待ち下さい
※改訂版の公開方法、ファンタジーカップのエントリーについては運営様に確認し、問題ないであろう方法で公開しております
※小説家になろう様とカクヨム様でも公開しております
異世界転生特典『絶対安全領域(マイホーム)』~家の中にいれば神すら無効化、一歩も出ずに世界最強になりました~
夏見ナイ
ファンタジー
ブラック企業で過労死した俺が転生時に願ったのは、たった一つ。「誰にも邪魔されず、絶対に安全な家で引きこもりたい!」
その切実な願いを聞き入れた神は、ユニークスキル『絶対安全領域(マイホーム)』を授けてくれた。この家の中にいれば、神の干渉すら無効化する究極の無敵空間だ!
「これで理想の怠惰な生活が送れる!」と喜んだのも束の間、追われる王女様が俺の庭に逃げ込んできて……? 面倒だが仕方なく、庭いじりのついでに追手を撃退したら、なぜかここが「聖域」だと勘違いされ、獣人の娘やエルフの学者まで押しかけてきた!
俺は家から出ずに快適なスローライフを送りたいだけなのに! 知らぬ間に世界を救う、無自覚最強の引きこもりファンタジー、開幕!
異世界転生、防御特化能力で彼女たちを英雄にしようと思ったが、そんな彼女たちには俺が英雄のようだ。
Mです。
ファンタジー
異世界学園バトル。
現世で惨めなサラリーマンをしていた……
そんな会社からの帰り道、「転生屋」という見慣れない怪しげな店を見つける。
その転生屋で新たな世界で生きる為の能力を受け取る。
それを自由イメージして良いと言われた為、せめて、新しい世界では苦しまないようにと防御に突出した能力をイメージする。
目を覚ますと見知らぬ世界に居て……学生くらいの年齢に若返っていて……
現実か夢かわからなくて……そんな世界で出会うヒロイン達に……
特殊な能力が当然のように存在するその世界で……
自分の存在も、手に入れた能力も……異世界に来たって俺の人生はそんなもん。
俺は俺の出来ること……
彼女たちを守り……そして俺はその能力を駆使して彼女たちを英雄にする。
だけど、そんな彼女たちにとっては俺が英雄のようだ……。
※※多少意識はしていますが、主人公最強で無双はなく、普通に苦戦します……流行ではないのは承知ですが、登場人物の個性を持たせるためそのキャラの物語(エピソード)や回想のような場面が多いです……後一応理由はありますが、主人公の年上に対する態度がなってません……、後、私(さくしゃ)の変な癖で「……」が凄く多いです。その変ご了承の上で楽しんで頂けると……Mです。の本望です(どうでもいいですよね…)※※
※※楽しかった……続きが気になると思って頂けた場合、お気に入り登録……このエピソード好みだなとか思ったらコメントを貰えたりすると軽い絶頂を覚えるくらいには喜びます……メンタル弱めなので、誹謗中傷てきなものには怯えていますが、気軽に頂けると嬉しいです。※※
異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める
自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。
その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。
異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。
定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。
1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!
マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。
今後ともよろしくお願いいたします!
トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕!
タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。
男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】
そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】
アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です!
コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】
マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。
見てください。
「元」面倒くさがりの異世界無双
空里
ファンタジー
死んでもっと努力すればと後悔していた俺は妖精みたいなやつに転生させられた。話しているうちに名前を忘れてしまったことに気付き、その妖精みたいなやつに名付けられた。
「カイ=マールス」と。
よく分からないまま取りあえず強くなれとのことで訓練を始めるのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる