138 / 177
第九章 在るべき姿の世界
第百二十八話 未来、或いは過去の力 その一
しおりを挟む
石碑が変形して現れた戦闘用ロボット、俺達が石碑ビットと呼ぶことにしたそれは、合体や分裂を繰り返し、時には巨大な人型ロボットになり、時には小型の魔力砲台となり、俺達に攻撃を仕掛けてきた。
秘密に迫った人間を排除するためか、それとも趣味が良いデザインの兵器からお出しされる趣味の良くない悪戯か、しかしとにかく、それが今のこの世界においては正規のものとして使われていない技術を使って生み出されたものであるということは確かであった。
「せいっ。やっ。……多いね、石の数。どんどん出てくる」
「キリが無いわね……!ふぅぅぅ……ハァッ!【殺抜】!」
「どんだけ壊しゃあ終わりやがる……!」
単純な軌道から飛んでくる魔力弾は、炎やら水やらではない、何にも変換されていない純粋な魔力ではあるが、次から次へと十数単位で増えていくそれらを前に、俺達は防御と回避を主体とした戦闘をこなしつつ、カウンターで一機ずつ石碑ビットを壊していくしかできない。
「くっ!避けるだけで精一杯だ……!」
「ジィン、どう?攻撃は当てられそう?」
そして俺はというと、どうやらそれが服や刀まで、全て石碑ビットをすり抜けてしまっていた。
「……無理そうです!すいません、肝心な時に」
「そ、そう……仕方ないわ。私達だけでやりましょう!」
「ああ。気にする必要は無いぞ、ジィン!はっ!仲間とは!こういう時の、ために!はぁ!いるのだからな!受けてみろ、【オーガー・エッジ】!」
「ん。ジィンお兄ちゃんの分まで、がんばる」
「チッ!肝心な時に使えねェなァ、騎士サンはよォ!」
「ガラテヤ様も、マーズさんも、ファーリちゃんもありがとう。……あとバグラディ!お前オバケから戻ったら覚えとけよマジで」
「おお上等だやってやろうじゃあねェかァ!」
「ケンカしてる場合じゃない。あれ、見て」
「何だチビ……ハァ?」
「石碑が…‥組み合わさっていくぞ……」
今までの石碑同士が一時的に寄り添って、魔力のビームを放つことはあった。
しかし、そうこうしている内にみるみる組み上げられていくのは、まさに巨人と言うに相応しい、高さ七メートルは超えるであろう人型のロボット……石碑ゴーレムとでも呼んでおこうか。
「私が何とかするわ、皆はビットを!」
「ん、お願い」
ガラテヤ様は拳に風を纏わせ、石碑ゴーレムへと突撃、高く飛び上がって胸部へ右の拳を捩じ込もうとする。
しかし。
「か、硬い……!きゃっ!」
「ガラテヤ様!」
その攻撃は全く効いていないようであり、ガラテヤ様はそのまま吹き飛ばされてしまった。
しかし何とか、俺がガラテヤ様の落下点を予測し、その身体を受け止めたことで、事なきを得た。
「あ、ありがとう、ジィン」
「いえいえ。そういえば、ガラテヤ様は透けないんですね」
魂の関係としても、ガラテヤ様は俺のご主人様だからだろうか。
本来は透明化している使い魔であっても、使用者には触ることができるというような……そういうものなのかもしれない。
それを理解できたことは今、ガラテヤ様が無事に着地したと近しいほどの幸運であった。
そしてもう一つ、ガラテヤ様を受け止めるために雪へ倒れ込むような姿勢をとった時に、気づいたことがある。
ナナシちゃんの剣だけは、俺が持ち、そして透けずに使うことができる。
「ジィン、何を……?」
「ハァァァァァッ!」
これは好機かもしれないと、俺はナナシちゃんの刀を構え、ビットへ斬りかかるのであった。
秘密に迫った人間を排除するためか、それとも趣味が良いデザインの兵器からお出しされる趣味の良くない悪戯か、しかしとにかく、それが今のこの世界においては正規のものとして使われていない技術を使って生み出されたものであるということは確かであった。
「せいっ。やっ。……多いね、石の数。どんどん出てくる」
「キリが無いわね……!ふぅぅぅ……ハァッ!【殺抜】!」
「どんだけ壊しゃあ終わりやがる……!」
単純な軌道から飛んでくる魔力弾は、炎やら水やらではない、何にも変換されていない純粋な魔力ではあるが、次から次へと十数単位で増えていくそれらを前に、俺達は防御と回避を主体とした戦闘をこなしつつ、カウンターで一機ずつ石碑ビットを壊していくしかできない。
「くっ!避けるだけで精一杯だ……!」
「ジィン、どう?攻撃は当てられそう?」
そして俺はというと、どうやらそれが服や刀まで、全て石碑ビットをすり抜けてしまっていた。
「……無理そうです!すいません、肝心な時に」
「そ、そう……仕方ないわ。私達だけでやりましょう!」
「ああ。気にする必要は無いぞ、ジィン!はっ!仲間とは!こういう時の、ために!はぁ!いるのだからな!受けてみろ、【オーガー・エッジ】!」
「ん。ジィンお兄ちゃんの分まで、がんばる」
「チッ!肝心な時に使えねェなァ、騎士サンはよォ!」
「ガラテヤ様も、マーズさんも、ファーリちゃんもありがとう。……あとバグラディ!お前オバケから戻ったら覚えとけよマジで」
「おお上等だやってやろうじゃあねェかァ!」
「ケンカしてる場合じゃない。あれ、見て」
「何だチビ……ハァ?」
「石碑が…‥組み合わさっていくぞ……」
今までの石碑同士が一時的に寄り添って、魔力のビームを放つことはあった。
しかし、そうこうしている内にみるみる組み上げられていくのは、まさに巨人と言うに相応しい、高さ七メートルは超えるであろう人型のロボット……石碑ゴーレムとでも呼んでおこうか。
「私が何とかするわ、皆はビットを!」
「ん、お願い」
ガラテヤ様は拳に風を纏わせ、石碑ゴーレムへと突撃、高く飛び上がって胸部へ右の拳を捩じ込もうとする。
しかし。
「か、硬い……!きゃっ!」
「ガラテヤ様!」
その攻撃は全く効いていないようであり、ガラテヤ様はそのまま吹き飛ばされてしまった。
しかし何とか、俺がガラテヤ様の落下点を予測し、その身体を受け止めたことで、事なきを得た。
「あ、ありがとう、ジィン」
「いえいえ。そういえば、ガラテヤ様は透けないんですね」
魂の関係としても、ガラテヤ様は俺のご主人様だからだろうか。
本来は透明化している使い魔であっても、使用者には触ることができるというような……そういうものなのかもしれない。
それを理解できたことは今、ガラテヤ様が無事に着地したと近しいほどの幸運であった。
そしてもう一つ、ガラテヤ様を受け止めるために雪へ倒れ込むような姿勢をとった時に、気づいたことがある。
ナナシちゃんの剣だけは、俺が持ち、そして透けずに使うことができる。
「ジィン、何を……?」
「ハァァァァァッ!」
これは好機かもしれないと、俺はナナシちゃんの刀を構え、ビットへ斬りかかるのであった。
0
あなたにおすすめの小説
レベルアップは異世界がおすすめ!
まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。
そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜
霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……?
生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。
これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。
(小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)
転生したらただの女の子、かと思ったら最強の魔物使いだったらしいです〜しゃべるうさぎと始める異世界魔物使いファンタジー〜
上村 俊貴
ファンタジー
【あらすじ】
普通に事務職で働いていた成人男性の如月真也(きさらぎしんや)は、ある朝目覚めたら異世界だった上に女になっていた。一緒に牢屋に閉じ込められていた謎のしゃべるうさぎと協力して脱出した真也改めマヤは、冒険者となって異世界を暮らしていくこととなる。帰る方法もわからないし特別帰りたいわけでもないマヤは、しゃべるうさぎ改めマッシュのさらわれた家族を救出すること当面の目標に、冒険を始めるのだった。
(しばらく本人も周りも気が付きませんが、実は最強の魔物使い(本人の戦闘力自体はほぼゼロ)だったことに気がついて、魔物たちと一緒に色々無双していきます)
【キャラクター】
マヤ
・主人公(元は如月真也という名前の男)
・銀髪翠眼の少女
・魔物使い
マッシュ
・しゃべるうさぎ
・もふもふ
・高位の魔物らしい
オリガ
・ダークエルフ
・黒髪金眼で褐色肌
・魔力と魔法がすごい
【作者から】
毎日投稿を目指してがんばります。
わかりやすく面白くを心がけるのでぼーっと読みたい人にはおすすめかも?
それでは気が向いた時にでもお付き合いください〜。
最凶と呼ばれる音声使いに転生したけど、戦いとか面倒だから厨房馬車(キッチンカー)で生計をたてます
わたなべ ゆたか
ファンタジー
高校一年の音無厚使は、夏休みに叔父の手伝いでキッチンカーのバイトをしていた。バイトで隠岐へと渡る途中、同級生の板林精香と出会う。隠岐まで同じ船に乗り合わせた二人だったが、突然に船が沈没し、暗い海の底へと沈んでしまう。
一七年後。異世界への転生を果たした厚使は、クラネス・カーターという名の青年として生きていた。《音声使い》の《力》を得ていたが、危険な仕事から遠ざかるように、ラオンという国で隊商を率いていた。自身も厨房馬車(キッチンカー)で屋台染みた商売をしていたが、とある村でアリオナという少女と出会う。クラネスは家族から蔑まれていたアリオナが、妙に気になってしまい――。異世界転生チート物、ボーイミーツガール風味でお届けします。よろしくお願い致します!
大賞が終わるまでは、後書きなしでアップします。
『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』
チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。
気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。
「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」
「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」
最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク!
本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった!
「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」
そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく!
神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ!
◆ガチャ転生×最強×スローライフ!
無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!
チート魅了スキルで始まる、美少女たちとの異世界ハーレム生活
仙道
ファンタジー
ごく普通の会社員だった佐々木健太は、異世界へ転移してして、あらゆる女性を無条件に魅了するチート能力を手にする。
彼はこの能力で、女騎士セシリア、ギルド受付嬢リリア、幼女ルナ、踊り子エリスといった魅力的な女性たちと出会い、絆を深めていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる