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新潟県村上市DF編
相生〜岡山区間第1船穂トンネルダンジョン
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新幹線の指定席を4席回転させて、通路を挟んで計8席を向かい合わせにした。
僕と同じ組に見城さんと、休暇をとっていたのに呼び出された比江乃ノ実さんが座った。
別の組に綾杉さん、六カ村さん、宝月さん、力間さんが座っている。
博多で乗り換える前も同じ席順で座っていたのだが、別の組からはチラチラと視線が向けられるので落ち着かない。
「申し訳ありません。あの子たちも貴方に出会えて緊張しているんですよ」
「約1名、僕のことを知らない人もいましたけどね」
「ふふふ。雲の上の人ですからね。会う機会すらないと考えるのは普通の人なら当然ですよ」
目の前の比江さんが落ち着いた様子で僕に微笑みかける。
立場的にはチームリーダーは見城さんで比江さんはサブリーダーらしいのだが、温泉の一件で見城さんが話せる状態ではなく、彼女が代わりに僕と話をしていた。
「そういえば、私たちのパーティのことを知っていらしたそうで」
「ええ。あれは阿蘇の噴火のときでした。皆さんが月夜ってパーティの方と合同で最初の依頼人を温泉に連れて行く準備をしていたのを見かけたんです。その時たまたま僕が助けた人も一緒にいたので、遠目でしたが綾杉さんのことを見てましたから」
向こうの組から「私!?」「え、あの時見られてたの!?」という小さな声が聞こえる。
「まあ、彼女褐色の肌は目立ちますからね」
「・・・肌? ああ、僕は彼女の身長が高い方だったので印象に残っていたんですが」
「あら? 肌の色は気にされない?」
「何を気にしているのか分かりませんが、気にしても意味ないと思いますよ? 何世代前に入ったのか分かりませんが、たまたま彼女が覚醒遺伝しただけですよね? そんなことより、僕としては身体能力に興味がありますけどね」
ダンジョン時代になって、自分の母国に帰ることができなくなった人たちが大勢いて、その人たちが帰化して日本に血を残し、何世代も後の子孫にその遺伝子が覚醒するケースがあることはよくある話だ。
彼女の受け継いだ血がどこの国のものかは分からないが、黒人の血が覚醒した人たちは総じて身体能力が高い。
人にもよるのだろうが、彼女の体格と肉付きから見ても、相当なポテンシャルを秘めていそうだ。
僕の回答を聞いて、比江さんは笑みを浮かべて綾杉さんを見た。
「だそうよ、真耶。良かったわね」
「いや、私はそんな・・・」
綾杉さんが照れたように頬を押さえている。
特に変なことを言ったつもりはないのだが、おそらく学生時代にいじめを受けたか、からかわれたかしたのだろう。
子供は無邪気だからこそ、時に残酷なことを言うからな・・・。
高校以上の年齢になると、その身体能力やプロポーションの方に目が行くから羨ましい対象に変わるのだが、だからと言って子供の頃の経験は払拭できない。
今後の彼女に向けられる視線や態度次第だろう。
「しかし、6人パーティは珍しいですね」
「元々、私と美紀のタッグだったんです。それから阿蘇に拠点を移動した際に真耶たちと出会って5人パーティになりまして今に至ります」
「小夜は研修という形だけど、阿蘇で経験を積ませたら兵庫県に行って受肉したモンスターを狩ってアイテムを手に入れる予定でした。まあ、今回の護衛が丁度いいので、瀬尾さんを送ったらその足で兵庫に行くつもりです」
予定ではもう少し実戦経験を積ませる予定だったのか。
「受肉したモンスターを倒せるんですか? 彼女」
「探索者なら倒せないとこの先が思いやられます」
見城さんのキッパリとした言葉に僕は頷いた。
それからは僕の教育の動画とかダンジョンでの経験とかの話をして盛り上がった。
だから、突然の急ブレーキきすぐに対応できず、僕の身体は前に倒れ、両手を出して向かいの席の背もたれを掴んで正面の比江さんにぶつからないよう身体を支える。
比江さんにとっては僕の顔が急接近した状況になったので、払飛ばされるかと思ったが、彼女は身を固くして顔を赤くするだけで僕を叩かないでくれた。
本当に良かった。
それから自分の席で少し待つと、アナウンスが流れ始めた。
『ただいま緊急停止信号を感知したため、当新幹線はしばらく停止します。状況が分かり次第お伝えしますので、お忙しい中大変申し訳ありませんが、自席にて待機のうえ、落ち着いた行動をお願いいたします』
アナウンスの内容からどういう状況か分からないが、何かしら停止させなければならない状況になっているらしい。
僕たちもちょっと緊張して待機していると、真剣な表情の車掌が入ってきて座席を見渡し、僕を見つけて近づいてきた。
そのまま僕のとこまで来るかと思ったが、その前に通路側にいた見城さんと綾杉さん、宝月さんが立ち上がり、更にその前にスーツの乗客が立ち塞がった。
「警察の者です。彼に何か?」
「え? あ、そうですか。申し訳ありません。本社より彼に緊急依頼をしたいと連絡がありました。ぜひお話をさせてください。今のこの状況と関連しています」
「それは我々も同席しても?」
「はい、大丈夫です」
緊張した表情の車掌が通されて、僕の前に立った。
念の為彼の手は後ろに回されてそのすぐ後ろに警察の人が立っている。
「失礼します。西日本国内鉄道本社より探索者組合に正式依頼をしたうえで、私からお伝えするよう連絡がありました」
「お聞きします」
「本日14時24分、相生~岡山区間で未確認生物との衝突事故がありました。運転手の私が直前に見た限りでは人ではないものが線路にいてそれを轢いたように見えました。また、フロントに飛び散った血は緑色でした」
その時点で、彼は轢いたものが普通の生き物ではないと考えたのだろう。
僕も眉間に皺を寄せて状況を正しく理解しようと口を開く。
「申し訳ありませんが、この区間を自衛隊や警察がダンジョンの発生確認をしたのは直近でいつか分かる方いますか?」
僕の質問に運転手が手を挙げた。
「国内鉄道は全線に四半期ごとの定期点検が義務付けられています。2ヶ月前には目視点検が行われているはずです」
その回答に僕は考え込んだ。
何故なら、通常ダンジョンが発生して受肉モンスターが現れるまで数年はかかると言われているからだ。
つまり、ここ2ヶ月以内で発生したダンジョンに何かがあって急速に受肉が始まったと考えるしかない。
・・・そういえば、飛騨のダンジョン群も突然ダンジョンブレイクしたと聞いた。
関連はなくても要因は同じかもしれない。
「分かりました。これから外に出て目視による確認をしましょう。もしダンジョンを発見した場合は即時攻略を行います」
僕は立ち上がって上の棚からスーツケースを取り出し、ベルゼブブの籠手を取り出して装備した。
専用装備はメンテで預けていたが、これだけでも持っててよかった。
「火焔蝶はどうしますか?」
「そうですね・・・」
比江さんが顎に手を当てて考えた。
リーダーである見城さんは彼女の反応待ちなので、こういう時は比江さんの意見がパーティの行動を決めるのだろう。
そして彼女は僕を見て頷いた。
「ご一緒します。ただ、途中でランクの高いモンスターが出たら瀬尾さんに全てお任せします。取り分は考えず、攻略後の話し合いで決めるというのでいかがでしょうか?」
「僕は問題ありません」
僕の回答を聞いて、火焔蝶の全員が即座に動き出し、各々のスーツケースから装備を出して身につける。
「こちら阿蘇探索者組合所属の火焔蝶です。武器の使用許可を申請します。使用目的は瀬尾1級探索者と合同でのダンジョン探索及び攻略。場所は相生~岡山区間のトンネル内部です」
『西日本国内鉄道からの依頼を確認しました。火焔蝶パーティの武器の使用を許可します』
綾杉さんが短剣を2振り腰に付け、見城さんは両手に刃が付いたカタールを装備した。
比江さんと六カ村さんは杖を持ったことから支援か遠距離タイプで弓を持った宝月さんが後衛かしんがり役か。
そして体験中の力間さんは荷物持ちとして、替えの装備や水を入れたペットボトルをリュックに入れている。
「明里さん、食料はどうしますか?」
「うーん。長期間潜ることはないと思うから、軽食だけ入れておいて。7人分を一回で」
「はい」
力間さんがバータイプの軽食とどこかで購入した草餅を人数分入れて蓋を閉め背負った。
こう考えると僕が1番軽装になるのだが、何か持とうかと提案したところ「身軽でいてください。緊急時に動いてもらいます」と比江さんに言われた。
そんな危険なダンジョンではないことを祈りながら僕らは新幹線から出て、暗いトンネルに降り立った。
僕と同じ組に見城さんと、休暇をとっていたのに呼び出された比江乃ノ実さんが座った。
別の組に綾杉さん、六カ村さん、宝月さん、力間さんが座っている。
博多で乗り換える前も同じ席順で座っていたのだが、別の組からはチラチラと視線が向けられるので落ち着かない。
「申し訳ありません。あの子たちも貴方に出会えて緊張しているんですよ」
「約1名、僕のことを知らない人もいましたけどね」
「ふふふ。雲の上の人ですからね。会う機会すらないと考えるのは普通の人なら当然ですよ」
目の前の比江さんが落ち着いた様子で僕に微笑みかける。
立場的にはチームリーダーは見城さんで比江さんはサブリーダーらしいのだが、温泉の一件で見城さんが話せる状態ではなく、彼女が代わりに僕と話をしていた。
「そういえば、私たちのパーティのことを知っていらしたそうで」
「ええ。あれは阿蘇の噴火のときでした。皆さんが月夜ってパーティの方と合同で最初の依頼人を温泉に連れて行く準備をしていたのを見かけたんです。その時たまたま僕が助けた人も一緒にいたので、遠目でしたが綾杉さんのことを見てましたから」
向こうの組から「私!?」「え、あの時見られてたの!?」という小さな声が聞こえる。
「まあ、彼女褐色の肌は目立ちますからね」
「・・・肌? ああ、僕は彼女の身長が高い方だったので印象に残っていたんですが」
「あら? 肌の色は気にされない?」
「何を気にしているのか分かりませんが、気にしても意味ないと思いますよ? 何世代前に入ったのか分かりませんが、たまたま彼女が覚醒遺伝しただけですよね? そんなことより、僕としては身体能力に興味がありますけどね」
ダンジョン時代になって、自分の母国に帰ることができなくなった人たちが大勢いて、その人たちが帰化して日本に血を残し、何世代も後の子孫にその遺伝子が覚醒するケースがあることはよくある話だ。
彼女の受け継いだ血がどこの国のものかは分からないが、黒人の血が覚醒した人たちは総じて身体能力が高い。
人にもよるのだろうが、彼女の体格と肉付きから見ても、相当なポテンシャルを秘めていそうだ。
僕の回答を聞いて、比江さんは笑みを浮かべて綾杉さんを見た。
「だそうよ、真耶。良かったわね」
「いや、私はそんな・・・」
綾杉さんが照れたように頬を押さえている。
特に変なことを言ったつもりはないのだが、おそらく学生時代にいじめを受けたか、からかわれたかしたのだろう。
子供は無邪気だからこそ、時に残酷なことを言うからな・・・。
高校以上の年齢になると、その身体能力やプロポーションの方に目が行くから羨ましい対象に変わるのだが、だからと言って子供の頃の経験は払拭できない。
今後の彼女に向けられる視線や態度次第だろう。
「しかし、6人パーティは珍しいですね」
「元々、私と美紀のタッグだったんです。それから阿蘇に拠点を移動した際に真耶たちと出会って5人パーティになりまして今に至ります」
「小夜は研修という形だけど、阿蘇で経験を積ませたら兵庫県に行って受肉したモンスターを狩ってアイテムを手に入れる予定でした。まあ、今回の護衛が丁度いいので、瀬尾さんを送ったらその足で兵庫に行くつもりです」
予定ではもう少し実戦経験を積ませる予定だったのか。
「受肉したモンスターを倒せるんですか? 彼女」
「探索者なら倒せないとこの先が思いやられます」
見城さんのキッパリとした言葉に僕は頷いた。
それからは僕の教育の動画とかダンジョンでの経験とかの話をして盛り上がった。
だから、突然の急ブレーキきすぐに対応できず、僕の身体は前に倒れ、両手を出して向かいの席の背もたれを掴んで正面の比江さんにぶつからないよう身体を支える。
比江さんにとっては僕の顔が急接近した状況になったので、払飛ばされるかと思ったが、彼女は身を固くして顔を赤くするだけで僕を叩かないでくれた。
本当に良かった。
それから自分の席で少し待つと、アナウンスが流れ始めた。
『ただいま緊急停止信号を感知したため、当新幹線はしばらく停止します。状況が分かり次第お伝えしますので、お忙しい中大変申し訳ありませんが、自席にて待機のうえ、落ち着いた行動をお願いいたします』
アナウンスの内容からどういう状況か分からないが、何かしら停止させなければならない状況になっているらしい。
僕たちもちょっと緊張して待機していると、真剣な表情の車掌が入ってきて座席を見渡し、僕を見つけて近づいてきた。
そのまま僕のとこまで来るかと思ったが、その前に通路側にいた見城さんと綾杉さん、宝月さんが立ち上がり、更にその前にスーツの乗客が立ち塞がった。
「警察の者です。彼に何か?」
「え? あ、そうですか。申し訳ありません。本社より彼に緊急依頼をしたいと連絡がありました。ぜひお話をさせてください。今のこの状況と関連しています」
「それは我々も同席しても?」
「はい、大丈夫です」
緊張した表情の車掌が通されて、僕の前に立った。
念の為彼の手は後ろに回されてそのすぐ後ろに警察の人が立っている。
「失礼します。西日本国内鉄道本社より探索者組合に正式依頼をしたうえで、私からお伝えするよう連絡がありました」
「お聞きします」
「本日14時24分、相生~岡山区間で未確認生物との衝突事故がありました。運転手の私が直前に見た限りでは人ではないものが線路にいてそれを轢いたように見えました。また、フロントに飛び散った血は緑色でした」
その時点で、彼は轢いたものが普通の生き物ではないと考えたのだろう。
僕も眉間に皺を寄せて状況を正しく理解しようと口を開く。
「申し訳ありませんが、この区間を自衛隊や警察がダンジョンの発生確認をしたのは直近でいつか分かる方いますか?」
僕の質問に運転手が手を挙げた。
「国内鉄道は全線に四半期ごとの定期点検が義務付けられています。2ヶ月前には目視点検が行われているはずです」
その回答に僕は考え込んだ。
何故なら、通常ダンジョンが発生して受肉モンスターが現れるまで数年はかかると言われているからだ。
つまり、ここ2ヶ月以内で発生したダンジョンに何かがあって急速に受肉が始まったと考えるしかない。
・・・そういえば、飛騨のダンジョン群も突然ダンジョンブレイクしたと聞いた。
関連はなくても要因は同じかもしれない。
「分かりました。これから外に出て目視による確認をしましょう。もしダンジョンを発見した場合は即時攻略を行います」
僕は立ち上がって上の棚からスーツケースを取り出し、ベルゼブブの籠手を取り出して装備した。
専用装備はメンテで預けていたが、これだけでも持っててよかった。
「火焔蝶はどうしますか?」
「そうですね・・・」
比江さんが顎に手を当てて考えた。
リーダーである見城さんは彼女の反応待ちなので、こういう時は比江さんの意見がパーティの行動を決めるのだろう。
そして彼女は僕を見て頷いた。
「ご一緒します。ただ、途中でランクの高いモンスターが出たら瀬尾さんに全てお任せします。取り分は考えず、攻略後の話し合いで決めるというのでいかがでしょうか?」
「僕は問題ありません」
僕の回答を聞いて、火焔蝶の全員が即座に動き出し、各々のスーツケースから装備を出して身につける。
「こちら阿蘇探索者組合所属の火焔蝶です。武器の使用許可を申請します。使用目的は瀬尾1級探索者と合同でのダンジョン探索及び攻略。場所は相生~岡山区間のトンネル内部です」
『西日本国内鉄道からの依頼を確認しました。火焔蝶パーティの武器の使用を許可します』
綾杉さんが短剣を2振り腰に付け、見城さんは両手に刃が付いたカタールを装備した。
比江さんと六カ村さんは杖を持ったことから支援か遠距離タイプで弓を持った宝月さんが後衛かしんがり役か。
そして体験中の力間さんは荷物持ちとして、替えの装備や水を入れたペットボトルをリュックに入れている。
「明里さん、食料はどうしますか?」
「うーん。長期間潜ることはないと思うから、軽食だけ入れておいて。7人分を一回で」
「はい」
力間さんがバータイプの軽食とどこかで購入した草餅を人数分入れて蓋を閉め背負った。
こう考えると僕が1番軽装になるのだが、何か持とうかと提案したところ「身軽でいてください。緊急時に動いてもらいます」と比江さんに言われた。
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