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ネコ竜
しおりを挟むネコから生まれるネコ竜は、飛ぶし、遠目に形こそ竜と似ているが、別の生き物だ。まず、鱗に覆われた竜と違って、短い毛が生えている。竜より首が短く、頭が丸っこい。翼は鳥に似ている。竜は竜同士で繁殖して、エッグハンターが持ち帰る卵が孵ったあと調教するが、ネコ竜は雄のネコから生まれるだけで、繁殖能力がない。そして、孵ったときに刷り込みされた相手に生涯懐く。
十日で孵った子ネコ竜は卵と同じ黒色で、濡れた毛が渇いてくるとそれはそれは可愛い。頭が大きくて、うにうに動き回って転んでばかりいた。背中の羽はまだくしゃっとして、ただのでっぱりにしか見えない。ぴゃーぴゃー鳴いて餌をねだり、抱っこしてもらえないと大声で泣いた。孵ってすぐ開いたまんまるの目はいつも二人を追っていた。
「名前をつけなきゃな」
サクヤはミドリノユビを見ている。名前をつけてもらうのを待っているのだ。サクヤがつけるなど考えもしていない。
それでミドリノユビは、サクヤにちなんだ名前をネコ竜につけようと思った。
「今はブルーグレーの目だが、そのうちサクヤと同じ黄色になるんだろうな。まんまるだし、満月みたいになるんだろう。望月、モチヅキって名前はどうだろう」
サクヤはうなずいた。
「はい。すてきななまえです」
ネコ竜は肉食だ。穀物も食べないことはないが肉を好む。
これまでミドリノユビは罠で兎を捕ったり、村の畑を荒らす猪用の魔法トラップを仕掛けてあげて肉を分けてもらったりしていた。サクヤの食事量は少ないので、二人暮らしになったときに特に肉を増やして入手する必要はなかった。
が。ネコ竜は肉を食べる。最初のうちは兎肉を細かく切って与えていて、そのうちサクヤが捕ってくる蜥蜴や蛇を丸飲みさせていたが、育つにつれ、どんどん食べる量が増えてきた。ミドリノユビは近くの森に罠をかけっぱなしにして、毎日場所を調整した。鼠や兎だけでなく、もっと大型の動物用罠も仕掛けた。日々が肉の手配で明け暮れた。成長していく雛は可愛い。だが、明日の肉、足りるかな? と考えてばかりいた。
「成長したら自分で餌をとるらしいから」
ミドリノユビは自分に言い聞かせ、唱えながら毎日罠を見回りした。
そのあいだ、サクヤはしつけを担当している。
ネコ竜が言うことをきかないと、サクヤが、なーお! と叱る。叱っているとしか感じられない声なのだ。いたずらには、な! と一言かける。なぜネコ竜にはネコの鳴き声で話すんだろうとミドリノユビには不思議だが、それで通じ合っているようだ。
サクヤのしつけは厳しいが、可愛がってもいる。モチヅキを抱っこして、ゆっくりと体を揺らしながら寝かしつけるときは、すごく優しい顔をしている。初めて会ったころ無表情だったネコが、こんな表情をするようになったのだ、とミドリノユビは感慨深かった。ぎゃーぎゃー泣いたり、ぴゃーぴゃー喜んだり、感情表現が豊かなモチヅキと一緒にいると、サクヤもつられてしまうのだろう。
ああ、一緒にモチヅキの刷り込みをしてよかった。
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