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買い物 2
しおりを挟むサクヤのおかげでいつもより高額な薬がたくさん作れたのだ。売ったお金でサクヤの喜ぶものを買おう。甘いものを食べたときの嬉しそうな尻尾を見たい。
どれが気に入るかわからないから、日持ちを気にしながら何種類か選ぶ。ナッツより、甘いドライフルーツが入ったものがいいだろう。クッキーと焼き菓子を店員に出してもらった。それにきれいなキャンディを好きに選んで瓶に詰めてくれるサービスがあったのでそれも。さっきの子ネコが持っていたのはこれだったのか、とミドリノユビは思った。これなら何日かかけて目でも舌でも楽しめる。
日持ちのしないケーキは買うつもりがなかったのだが、ブルーベリーのタルトがあった。カスタードクリームにドライブルーベリーがたくさん混ぜてあって、カスタードの水分を吸ったドライブルーベリーがふっくらしている。サクヤはブルーベリーが好きだ。家で育てているブルーベリーは少しずつ実をつけるようになったので、トッピングにしたらさらに美味しいに違いない。帰ってすぐ食べるなら大丈夫だろうとこれも選んだ。視界の端で黒い尻尾がぴんと立つのが見えた。
瓶に強化魔法をかけたキャンディをサクヤに渡す。さっきの子ネコみたいな子供時代を過ごせなかったが、今からでもやり直せることはいくらでもあるとミドリノユビは思ったのだ。
サクヤは上目遣いでちらっと見た。多分、瓶に強化魔法をかけられたのが子ども扱いだと感じたのだろう。それでも「はい」と瓶を持った。
あとのスイーツは大きな袋に入れてくれたのでミドリノユビが持った。
「マスター、マジックバッグに食べものをいれては、いけないのですか?」
サクヤが訊いた。
「………あ」
甘い香りで尻尾が揺れているのを見るのが楽しく、手で運ぼうとしたが、確かに、マジックバッグに入れてしまった方が楽に運べるのだ。
「そうだね。マジックバッグに入れよう」
それにこんな甘い香りを漂わせていては、ひったくりだって寄ってくるかもしれない。都の外壁までの道にはガラの悪い人間がいることもあるのだ。ミドリノユビは地味な服装でお金があるようには見えないので今まで何もなかったが、甘い香りのする食べ物を持っていたら奪おうと考える人間もいるかもしれない。さっきの魔法使いみたいにローブを着て、魔石の指輪をたくさんはめていれば、魔法で返り討ちに遭うと思ってひったくる者はいないが、ミドリノユビはおのぼりさんに見られる。余計なトラブルは呼び寄せないに限る。
ミドリノユビはスイーツをマジックバッグにしまった。
「その瓶も入れよう」
「……はい」
サクヤは少し名残惜しそうだった。
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