【本編完結済】卵生ネコとネコ竜と魔法使い

佃実花

文字の大きさ
41 / 43

安心できる場所

しおりを挟む

 ようやく都で解放され、家に帰ると、ミドリノユビはまず鶏に餌をやった。予定より帰りが遅くなったので、周囲の草はずいぶん食べられ、お腹がすいていたのだろう。餌箱に穀物を入れるや、鶏たちは夢中でつつきだした。
「ごめんよ。もうこんなことがないように、給餌装置を作るよ」
 そのあいだにサクヤがモチヅキにブラシをかけてやっていた。
モチヅキの世話を終えたサクヤが寝室に顔を出すと、ベッドに寝転がったミドリノユビは隣りをぽんぽんと叩きいた。
 横に来た細い体を抱きしめて、サラサラの髪やふさふさの耳に頬ずりすると、ミドリノユビはほーっと息をついた。
「家でサクヤとこうしていると一番回復するよ」
 長い尻尾がミドリノユビの足を巻くように、すりっと寄り添った。その感触にミドリノユビは微笑む。
「サクヤが無事でよかった。わたしも魔石の首輪をつけた方がいいかもしれない」
「人間は首輪じゃなくて、ペンダントです」
「うん。おそろいのにしよう。サクヤのを買ったときはたまたま同じ店に掘り出し物のシトリンがあったけど、同じくらいの品質の石が手に入るよう、店に頼んでおこう」
「そんないいものだったんですか! た、高いんですよね?」
 首元についているため、自分で見る機会がなく、知らずに高価な魔石を身に着けていたことにサクヤは仰天した。
「知りませんでした。前のマスターのところでは屋敷から出ることがなかったので、首輪に魔石をつける必要もありませんでしたし…」
「一度も外に出してもらえなかったの? その方が安全か。わたしはサクヤに農作業を手伝わせたり、お使いに出したりするひどい主人だからね」
 田舎町の子供に珍しさから叫ばれたし、サクヤは長く歩くのが苦手で、田舎ではお使いに出すことはなかったが、都ではちょっとした買い物を頼んだりする。
「お役に立てたらその方がいいです。でも、魔石の価値に見合うほどお役に立っているとは…。安い魔石でよかったのでは?」
「高い魔石にはその価値があるんだよ。実際役に立ったし。それに、いい魔石をつけているネコは主人もそれなりの人物だから、ネコをおろそかにすると主人の不興を買うかもしれないって、周りが思ってくれる。サクヤだけでお使いに行くときも困らない」
 その魔法使いは自分の格好には無頓着だが。
 都で治療師が治療を渋ったとき、首輪を見て態度を変えたのをサクヤは思い出した。
「…これは本当にお守りだったんですね。マスターは、本当に、僕を守ってくれていたんですね」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

病み墜ちした騎士を救う方法

無月陸兎
BL
目が覚めたら、友人が作ったゲームの“ハズレ神子”になっていた。 死亡フラグを回避しようと動くも、思うようにいかず、最終的には原作ルートから離脱。 死んだことにして田舎でのんびりスローライフを送っていた俺のもとに、ある噂が届く。 どうやら、かつてのバディだった騎士の様子が、どうもおかしいとか……? ※欠損表現有。本編が始まるのは実質中盤頃です

【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】

彩華
BL
 俺の名前は水野圭。年は25。 自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで) だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。 凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!  凄い! 店員もイケメン! と、実は穴場? な店を見つけたわけで。 (今度からこの店で弁当を買おう) 浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……? 「胃袋掴みたいなぁ」 その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。 ****** そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています お気軽にコメント頂けると嬉しいです ■表紙お借りしました

【完結】冷酷騎士団長を助けたら口移しでしか薬を飲まなくなりました

ざっしゅ
BL
異世界に転移してから一年、透(トオル)は、ゲームの知識を活かし、薬師としてのんびり暮らしていた。ある日、突然現れた洞窟を覗いてみると、そこにいたのは冷酷と噂される騎士団長・グレイド。毒に侵された彼を透は助けたが、その毒は、キスをしたり体を重ねないと完全に解毒できないらしい。 タイトルに※印がついている話はR描写が含まれています。

異世界のオークションで落札された俺は男娼となる

mamaマリナ
BL
 親の借金により俺は、ヤクザから異世界へ売られた。異世界ブルーム王国のオークションにかけられ、男娼婦館の獣人クレイに買われた。  異世界ブルーム王国では、人間は、人気で貴重らしい。そして、特に日本人は人気があり、俺は、日本円にして500億で買われたみたいだった。  俺の異世界での男娼としてのお話。    ※Rは18です

竜の生贄になった僕だけど、甘やかされて幸せすぎっ!【完結】

ぬこまる
BL
竜の獣人はスパダリの超絶イケメン!主人公は女の子と間違うほどの美少年。この物語は勘違いから始まるBLです。2人の視点が交互に読めてハラハラドキドキ!面白いと思います。ぜひご覧くださいませ。感想お待ちしております。

【8話完結】恋愛を諦めたおじさんは、異世界で運命と出会う。

キノア9g
BL
恋愛を諦め、ただ淡々と日々を過ごしていた笠原透(32)。 しかし、ある日突然異世界へ召喚され、「王の番」だと告げられる。 迎えたのは、美しく気高い王・エルヴェル。 手厚いもてなしと優しさに戸惑いながらも、次第に心を揺さぶられていく透。 これは、愛を遠ざけてきた男が、本当のぬくもりに触れる物語。 ──運命なんて、信じていなかった。 けれど、彼の言葉が、ぬくもりが、俺の世界を変えていく。 全8話。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

処理中です...