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友だちだったから
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しおりを挟む風呂から上がるとリビングで嶋はリビングでテレビを見ていた。
「お風呂いただきましたよー」
「....あったまった?」
「うん、めっちゃ湯船入ったわ」
秋人がそういうと嶋はソファーから立ち上がりお風呂場へと向かった。
※
嶋がお風呂に入っている間、テレビでも見ようかとチャンネルを変えていると不意にスマホの着信がなった。
"裕"
名前が表示されて、秋人はスマホの電源ボタンを押した。しかし着信音はしつこく鳴り続けた。
「......はい」
「今どこにいんの」
第一声がそれか。
「なんで」
「今日お前んち行ってもいなかったんだけど」
「また家に来たの?やめろよ」
「どこにいるのかって言ったんだよ」
「なんでそんなのお前に言わないといけないの」
「.....あぁ、新しい男できたんだお前」
裕の声が一段低くなる。
「何言ってんの関係ないだろ」
「惚けんなよ。俺と別れてすぐ男作るとかどんだけビッチなんだよ」
言いたい放題言われて秋人は、イライラが募っていた。
自分のことは棚に置いて、ベラベラと。
「は?ビッチだろうがなんだろうがお前に関係ないだろ、電話してくんなクソ野郎」
終了ボタンを押す。
「....あ」
後ろに気配を感じて振り向くと、嶋が戻ってきていた。
「あーごめんうるさかったよな」
「.......ううん」
「そっ、か」
いたたまれない気持ちになって秋人は嶋から顔を背けた。
「あき、ちょっと」
突然腕を掴まれて、ソファーの下に座らせられる。その後ろに嶋が座り、カチッという音が耳に入った。
「ドライヤー使ってない。ダメだよ、痛むから」
「え、いやいつも乾かしてな...って」
ドライヤーの熱が髪に当たる。
それと同時に嶋が自分の髪の毛を掬った。
「熱くない?」
「へ?あーうん」
風の音で声があまり聞こえない。秋人は何も言わず嶋にしてもらうことにした。
ふわりと優しい手つきで髪を触れられてくすぐったい。時折、頬にあたる指先にびくりと反応しながら秋人は瞼が少しずつ落ちていくのを感じた。
「.....あんな悲しい顔しないで」
小さく呟いた嶋の声は音にかき消されて聞こえなかった。
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