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第一章 旅立ちと道草
【第2話】道に迷って上等じゃ
王都の南門を出て一刻も経たぬうちに、わしは盛大に道に迷った。
「…………どっちじゃったかの、南街道は」
見渡す限り、麦畑。
空は晴れ渡り、風は爽やか、景色はのどかで大変によろしい。
ただ、道が見当たらん。
「キュルルル」
肩の上でシルヴァーが首を傾けた。銀白色の翼を持つこの鷹は、わしが百二十年前に魔力で召喚し、以来ずっと共にある相棒じゃ。人語は喋らんが、なんとなく言いたいことは分かる。今は確実に「迷子ですね」と言っておる。
「分かっておる。黙れ」
「キュルッ」
「笑うな、と言っておる」
ふわりと足元に影が落ちた。見れば黒猫のルーンがちょこんと座り、黄金色の目でじいっとわしを見上げておる。
ルーンは変身が得意な魔法猫じゃ。気まぐれに姿を変え、好き勝手にどこへでも現れる。昨日は少年の姿で学院の厨房から丸焼きの鶏を盗もうとして、調理師のマルタばあさんに「この泥棒猫いいいっ!」と延々と追い回されておった。それでも悪びれもせず、今朝は涼しい顔でわしの旅支度を見物しておった。図太いにもほどがある。
ちなみにルーンが変身を解いたときの本来の姿は、灰色の普通の中型猫じゃ。それでも魔力は相当なもので、わしの召喚獣の中でもトップクラスの実力を持つ。問題はその実力を「干し魚の確保」と「昼寝のための場所探し」にしか使わんことじゃが。
「お前は道を知っておるか」
「にゃあ」
「知らんか」
「にゃあ」
「……役に立たんのう」
わしは鞄を下ろし、その場にどっかりと腰を据えた。麦畑の畔に腰を下ろして、オズワルドから貰ったサンドイッチを取り出す。かじる。うまい。ハムとチーズと香草が絶妙じゃ。パンもふかふかで、焼き立てを朝早くに準備してくれたのじゃろう。さすがオズワルド、泣き虫でみっともないが、こういうところはできる奴じゃ。
「まあええか。迷ったら迷ったで、それもまた旅というものじゃろ」
シルヴァーが肩に戻ってきた。ルーンがわしの膝の上に乗ってきた。
一人と二匹で、のどかな麦畑の真ん中でサンドイッチを食べた。
空の色が綺麗じゃった。雲がゆっくりと流れておる。鳥の声がした。遠くで農夫が鍬を振るっておる。学院の院長室で書類を読んでおったころには、こんな空をゆっくり眺める時間などなかった。いつも窓の外の空を「今日も天気が良いのう」と思いながら、また書類に目を落としていた。三百年間、ずっとそうだった。
悪くないのう、道に迷うのも。
しばらくすると、街道のほうから馬車の音が聞こえてきた。幌馬車じゃ。荷台には行商人らしき荷物が積まれており、御者台には赤ら顔の中年の男が乗っておる。人の良さそうな、丸顔の男じゃ。目が合うと、にかっと笑った。
「おーい、婆さん! そんなとこで休んでるの? 乗っていくかい? 次のカルドス村まで連れてってやるよ!」
「おお、助かるのう。頼もうかの」
「いくらでもいいよ、たいした距離でもないし! 老人を見捨てるほど人情なしじゃないわ、俺は!」
気前のよい男じゃ。わしは立ち上がって、馬車へと近づいた。
ところが。
男の言葉が途切れた。
近づいてくるわしの顔をじっくりと見て、肩のシルヴァーを見て、足元のルーンを見て、わしの腰に下げた銀の杖を見て——みるみるうちに、血の気が引いていった。
「あ……あの……ちょっと待って……もしかして……もしかしてもしかして……」
「なんじゃ」
「王立アルカナ魔法学院の……竜殺しの……院長先生では……?」
「元、じゃがな。今日付けで退職した」
「ひいいいっ!!」
男は叫んで、馬車ごと猛スピードで逃げ去った。砂煙だけが残った。
「…………」
わしは砂煙が収まるのを眺めながら、ため息をひとつついた。
シルヴァーが「キュルル」と鳴いた。
「笑うな」
どうやら世間一般では、わしはかなり恐れられておるらしい。「竜殺しの魔女」の名は伊達ではないということじゃろうか。わし自身は竜と戦ったのは二百年以上前のことで、しかも別に好き好んで戦ったわけでもなかった。むこうが村を燃やしておったから止めに行っただけじゃ。そうしたら気づけば竜殺しなどと呼ばれるようになっておった。
まったく、損な名前がついたものじゃ。
「にゃあ」
ルーンが言った。慰めておるのか馬鹿にしておるのか、猫の顔では判断がつかん。たぶん後者じゃ。
かくして、わしは徒歩で街道を進むことになった。
しかし歩くこと自体は苦ではない。魔法使いというのは、魔力が肉体を維持し続けるせいで、老化がある時点で止まる。わしの外見は七十がらみの老婆のままで止まっておるが、内実は二十代の小娘よりずっと頑健じゃ。足も速いし、疲れも知らん。三百五十歳とは思えん体力じゃと、若い学生たちに毎度驚かれておった。
道の両脇には麦畑が広がり、遠くに丘が連なる。時おり農夫とすれ違うが、わしの顔を見るなり道を開けるか、小走りに離れていくかのどちらかじゃ。まったく、ただの老婆なんじゃがなあ。
しばらく歩いておると、道端の木陰で子どもたちが遊んでおった。五つか六つといった年頃の、男の子と女の子じゃ。
女の子がわしを見て、「おばあちゃん、どこ行くの?」と無邪気に聞いてきた。
男の子が「しっ! あれ魔法使いだよ、近づくな!」と女の子の腕を引いた。
女の子は引っ張られながらも「旅? 旅してるの? いいなあ!」と手を振った。
わしは思わず手を振り返した。
男の子が「うわ、手振った! 逃げろ!」と駆け出して、女の子も笑いながら走っていった。
……賑やかなもんじゃ。
南街道を見つけたのは、それからしばらく歩いたころのことじゃった。
実のところ、道はわしが最初に腰を下ろした場所の、背後三十歩のところにあったらしい。麦が生い茂りすぎていて見えなかっただけじゃと、後から気づいた。
「…………」
シルヴァーが「キュルル」と鳴いた。
「キュルキュル」とも鳴いた。
ルーンが「にゃははは」とでも言いたげな顔でわしを見た。
「……笑いたければ笑え。好きにせい」
旅というのは、そういうものじゃ。
完璧な旅人など、最初からおらんのじゃからな。
それに——こうして道に迷うのも、三百年ぶりの感覚じゃった。学院の院長というのは、何事も「正しいルート」を歩まねばならなかった。迷うことは許されなかった。
今は誰もわしに、正しいルートを求めておらん。
「まあ、よい」
わしは鼻歌を再開して、南街道を東へと踏み出した。
空は青く、麦は揺れ、シルヴァーは風に乗って輪を描き、ルーンはわしの足元を気ままに跳ねた。
旅というものは、なかなかどうして、悪いものではないのう。
カルドス村まで二里。
わしは口笛を吹きながら、のんびりと歩き続けた。
――第2話 了――
【次話予告】
南街道を進むわしの前に、三人組の盗賊が飛び出してきた。
「金目のものを出しな! 逆らったら痛い目みるぞ!」
……お前ら、わしが何者か、分かって言っておるか?
「…………どっちじゃったかの、南街道は」
見渡す限り、麦畑。
空は晴れ渡り、風は爽やか、景色はのどかで大変によろしい。
ただ、道が見当たらん。
「キュルルル」
肩の上でシルヴァーが首を傾けた。銀白色の翼を持つこの鷹は、わしが百二十年前に魔力で召喚し、以来ずっと共にある相棒じゃ。人語は喋らんが、なんとなく言いたいことは分かる。今は確実に「迷子ですね」と言っておる。
「分かっておる。黙れ」
「キュルッ」
「笑うな、と言っておる」
ふわりと足元に影が落ちた。見れば黒猫のルーンがちょこんと座り、黄金色の目でじいっとわしを見上げておる。
ルーンは変身が得意な魔法猫じゃ。気まぐれに姿を変え、好き勝手にどこへでも現れる。昨日は少年の姿で学院の厨房から丸焼きの鶏を盗もうとして、調理師のマルタばあさんに「この泥棒猫いいいっ!」と延々と追い回されておった。それでも悪びれもせず、今朝は涼しい顔でわしの旅支度を見物しておった。図太いにもほどがある。
ちなみにルーンが変身を解いたときの本来の姿は、灰色の普通の中型猫じゃ。それでも魔力は相当なもので、わしの召喚獣の中でもトップクラスの実力を持つ。問題はその実力を「干し魚の確保」と「昼寝のための場所探し」にしか使わんことじゃが。
「お前は道を知っておるか」
「にゃあ」
「知らんか」
「にゃあ」
「……役に立たんのう」
わしは鞄を下ろし、その場にどっかりと腰を据えた。麦畑の畔に腰を下ろして、オズワルドから貰ったサンドイッチを取り出す。かじる。うまい。ハムとチーズと香草が絶妙じゃ。パンもふかふかで、焼き立てを朝早くに準備してくれたのじゃろう。さすがオズワルド、泣き虫でみっともないが、こういうところはできる奴じゃ。
「まあええか。迷ったら迷ったで、それもまた旅というものじゃろ」
シルヴァーが肩に戻ってきた。ルーンがわしの膝の上に乗ってきた。
一人と二匹で、のどかな麦畑の真ん中でサンドイッチを食べた。
空の色が綺麗じゃった。雲がゆっくりと流れておる。鳥の声がした。遠くで農夫が鍬を振るっておる。学院の院長室で書類を読んでおったころには、こんな空をゆっくり眺める時間などなかった。いつも窓の外の空を「今日も天気が良いのう」と思いながら、また書類に目を落としていた。三百年間、ずっとそうだった。
悪くないのう、道に迷うのも。
しばらくすると、街道のほうから馬車の音が聞こえてきた。幌馬車じゃ。荷台には行商人らしき荷物が積まれており、御者台には赤ら顔の中年の男が乗っておる。人の良さそうな、丸顔の男じゃ。目が合うと、にかっと笑った。
「おーい、婆さん! そんなとこで休んでるの? 乗っていくかい? 次のカルドス村まで連れてってやるよ!」
「おお、助かるのう。頼もうかの」
「いくらでもいいよ、たいした距離でもないし! 老人を見捨てるほど人情なしじゃないわ、俺は!」
気前のよい男じゃ。わしは立ち上がって、馬車へと近づいた。
ところが。
男の言葉が途切れた。
近づいてくるわしの顔をじっくりと見て、肩のシルヴァーを見て、足元のルーンを見て、わしの腰に下げた銀の杖を見て——みるみるうちに、血の気が引いていった。
「あ……あの……ちょっと待って……もしかして……もしかしてもしかして……」
「なんじゃ」
「王立アルカナ魔法学院の……竜殺しの……院長先生では……?」
「元、じゃがな。今日付けで退職した」
「ひいいいっ!!」
男は叫んで、馬車ごと猛スピードで逃げ去った。砂煙だけが残った。
「…………」
わしは砂煙が収まるのを眺めながら、ため息をひとつついた。
シルヴァーが「キュルル」と鳴いた。
「笑うな」
どうやら世間一般では、わしはかなり恐れられておるらしい。「竜殺しの魔女」の名は伊達ではないということじゃろうか。わし自身は竜と戦ったのは二百年以上前のことで、しかも別に好き好んで戦ったわけでもなかった。むこうが村を燃やしておったから止めに行っただけじゃ。そうしたら気づけば竜殺しなどと呼ばれるようになっておった。
まったく、損な名前がついたものじゃ。
「にゃあ」
ルーンが言った。慰めておるのか馬鹿にしておるのか、猫の顔では判断がつかん。たぶん後者じゃ。
かくして、わしは徒歩で街道を進むことになった。
しかし歩くこと自体は苦ではない。魔法使いというのは、魔力が肉体を維持し続けるせいで、老化がある時点で止まる。わしの外見は七十がらみの老婆のままで止まっておるが、内実は二十代の小娘よりずっと頑健じゃ。足も速いし、疲れも知らん。三百五十歳とは思えん体力じゃと、若い学生たちに毎度驚かれておった。
道の両脇には麦畑が広がり、遠くに丘が連なる。時おり農夫とすれ違うが、わしの顔を見るなり道を開けるか、小走りに離れていくかのどちらかじゃ。まったく、ただの老婆なんじゃがなあ。
しばらく歩いておると、道端の木陰で子どもたちが遊んでおった。五つか六つといった年頃の、男の子と女の子じゃ。
女の子がわしを見て、「おばあちゃん、どこ行くの?」と無邪気に聞いてきた。
男の子が「しっ! あれ魔法使いだよ、近づくな!」と女の子の腕を引いた。
女の子は引っ張られながらも「旅? 旅してるの? いいなあ!」と手を振った。
わしは思わず手を振り返した。
男の子が「うわ、手振った! 逃げろ!」と駆け出して、女の子も笑いながら走っていった。
……賑やかなもんじゃ。
南街道を見つけたのは、それからしばらく歩いたころのことじゃった。
実のところ、道はわしが最初に腰を下ろした場所の、背後三十歩のところにあったらしい。麦が生い茂りすぎていて見えなかっただけじゃと、後から気づいた。
「…………」
シルヴァーが「キュルル」と鳴いた。
「キュルキュル」とも鳴いた。
ルーンが「にゃははは」とでも言いたげな顔でわしを見た。
「……笑いたければ笑え。好きにせい」
旅というのは、そういうものじゃ。
完璧な旅人など、最初からおらんのじゃからな。
それに——こうして道に迷うのも、三百年ぶりの感覚じゃった。学院の院長というのは、何事も「正しいルート」を歩まねばならなかった。迷うことは許されなかった。
今は誰もわしに、正しいルートを求めておらん。
「まあ、よい」
わしは鼻歌を再開して、南街道を東へと踏み出した。
空は青く、麦は揺れ、シルヴァーは風に乗って輪を描き、ルーンはわしの足元を気ままに跳ねた。
旅というものは、なかなかどうして、悪いものではないのう。
カルドス村まで二里。
わしは口笛を吹きながら、のんびりと歩き続けた。
――第2話 了――
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