15 / 108
第二章 回り出す歯車
1-14 「うん、一応仕事なんだし受付に来た人の顔は覚えてるって」
しおりを挟む
自分の言葉を金髪の牧師が繰り返しかけ、嫌そうに顔をしかめた。以降黙ってしまったので、こちらも話しかけることはせずにカレーを食べ進める。
イヴェットはどこか嬉しげな表情で呆れていた。そういう表情をするからこの姪馬鹿が成長しないんだと言いたかったが、そこは言わないでおく。
一転して静かになった部屋にラジオの音がよく響いている。いつの間にか歌は終わり、夜のニュースをキャスターが読み上げていた。
『現在エルキルスを騒がせている連続連れ去り事件ですが、新しく被害者が出たという目撃者が現れた為、警察は慎重に調査を進めています』
滑舌よく喋る女性の声に、夕方に警察からこの事を聞かれたばかりだったことを思い出す。
「この事件、まだ続くんだね……早く終わらないかなぁ」
「警察も頑張ってるみたいだし、そうは続かないでしょ。今日炊き出し中にこの事件について聞かれたよ。このポスターの中で見覚えのある人居ませんかって。分からなかったけど」
「へぇ~! 警察の人も結構地道なことやってるんだね」
そうみたい、と頷き、そう言えば、とイヴェットに話を振る。この為に牧師館に寄ったので忘れてはいけない。
「夕方、懐中時計修理してほしいって言ってたよね? 直しておくから出しておいて貰っていい?」
「あ、うん! 部屋まで取りに行ってくるから、ちょっと待ってて!」
イヴェットはそう言って慌ただしく立ち上がって廊下に飛び出していく。その後ろ姿を見送り、大分減ったカレーの残りを掻き込んだ。
「アンリ。その聞かれた人の中に、礼拝に来ている方は居なかったんですか?」
「うん、一応仕事なんだし受付に来た人の顔は覚えてるって」
「だったら良いのですが。礼拝に来てる方で、もし被害に遇われた方が居ましたらとても悲しいことですからね」
そうだね、と頷き、空になった容器をゴミ箱に投げ入れる。今回は無事にゴミ箱の中に入ってくれたので誇らしかった。
「さっきのイヴェットさんの話なんですけど、そこの喫茶店は開店が早いみたいで、行くなら学校に行く前って言っているんです。その人住み込みバイトみたいなので私は行きたくありませんから、朝のイヴェットさんの送りはアンリにお願いしても良いですか?」
イヴェットの通学路近くで開店の早い喫茶店。
先程女性とぶつかりかけたあの喫茶店だろう。公園の蒸気時計やロボットが見たくなって一回行ったことがある。あそこの珈琲は美味しかったし、アイロンのかけられた制服を着た店員も感じが良かった。
もしかしたらイヴェットはその少年に会いに行くのだろうか。
「別にいいけど、代わりに朝の礼拝の準備しておいてよ」
「分かっていますって」
約束を交わしていると、廊下からばたばたと慌ただしい音が聞こえてきた。イヴェットが戻って来たのだろう。音が一旦止まった後、すぐに居間の扉が開かれる。
「アンリさんお待たせっ。これこれ、多分懐中時計の電池切れなんだろうな~って思うんだけど」
栗色の髪をふわりと揺らしながらイヴェットはテーブルに戻り、針が動いていない懐中時計を差し出してくる。ストップウォッチ機能の付いている懐中時計だし、イヴェットが言う通り電池切れだろう。
「だろうね。じゃぁ朝までには直しておくよ」
「うん! 有り難う」
着席し再び勉強に戻ったイヴェットを見て、もう教会に戻ろうと思った。用は済ませたし二人の顔も見られた。戻ってゆっくりしよう。
「俺あっち戻るね。お休み、また明日」
「お休みなさいー」
「お疲れ様でした、お休みなさい」
ん、と返事をし、預かった懐中時計を手に牧師館を後にする。眠かったり寒い日は一旦外に出るのが苦痛だが、問題がない日は外気に触れるこの一瞬が気持良い。
教会の鍵を開け扉の中に体を滑らせた。民家の玄関より数倍広いホールだが、ここに立つとホッとする。廊下の電気を点け階段を上がり、子供部屋の一つである自室に向かった。
一人立ちしようと部屋を探していたところ、ユスティンの父親から「教会で働いてくれるならここ使っていいよ」と言われて以来、幼児を礼拝中に預かっておく部屋の一つをずっと使っている。ごく稀に幼児に貸す時もあるが、特に片付けはしていない。
簡易ベッドの上にも下にも家電品やタイプライターが散乱している中、先程イヴェットから受け取った懐中時計と、ヘッドボードに置いておいた黒い物体とを手元に並べ薄く笑みを浮かべた。
***
駅員に約束を取り付けたリチェ・ヴィーティは、刑事課の部屋を出て薄暗い廊下を歩いた。原則的に二人一組で動くことが決まっているので、ペアを組んでいる無表情の少年の姿がないか視線を巡らせる。
廊下を警務課の女性が歩いてくる。住民相談係も担っている彼女の表情はどこか疲れているように見えた。
「よ、お疲れ様! その可愛い顔が笑ってる所が見たいからちゃんと休めよー。なぁ俺の後輩知らない?」
「はいはい。愛想の悪い後輩君ならさっき一階に居たの見たよ。ぼんやりしてたけど、サボりかな?」
「泊りが続いてるからあいつも疲れてるんだろ。教えてくれて有り難う、またな~」
女性に別れを告げ、ポスターが貼られた階段を降りる。一階はノアを連れて署に戻ってきた時よりも大分人が減っていた。市民からの相談も一段落ついたようだ。
人の減った大広間では、刑事課で一番若い少年の姿は容易に発見出来た。出入口の近くで床に視線を落とし、雨に降られたかのように佇んでいる。たしかにこれはサボりと思われても仕方ない。
「クルト、これから駅に被害者の足取り調査をしに行きたいんだけど、手伝ってくれないか?」
笑みを浮かべて後輩に話しかけ、指を立てて扉を示した。後輩は現実に引き戻されたかのように顔を上げた後、小さく首を縦に振る。
よし、とリチェはクルトを連れ早速外に出た。警察署の外は先程よりも風が強く、思わず身震いしてしまった。あっという間に秋が過ぎ冬が来るのだろう。
去年買ったコートをどこにしまったか思い出しながら、警察署の裏に併設されている専用の厩舎に向かう。前近代にはパトカーという便利な乗り物があったようだが、今は馬車に乗って現場に向かうのが普通だ。
「……ねぇ」
蒸気を排出している煙突の脇を通った時、ふと後輩に声をかけられた。ん? と首を回して振り返り足を止める。
「リチェはさ。……どうして俺の悪口、言わないの?」
聞き洩らしそうになる位小さな声だった。蒸気が邪魔をして、後方にいるクルトがいまいち見えない。
「そんなの、人の悪口を言う奴はモテないって昔から決まってるからだって」
いきなりなんだ、とは言わずなるべくサラッと答える。
「それに数百年前大女優がこんな名言残してるんだよ。綺麗な目をしたいなら人の美点を探せ、綺麗な唇になりたいなら綺麗なことを言え……だっけ? まーそんなの」
口にしてみたものの正しく思い出せなくて曖昧に返し、誤魔化すようににっと笑う。
「そっか。…………有り難う」
煙突の音が大きかったが、礼を言われ頬が緩む。
「どういたしまして」
短く答え、再び前を向き厩舎に向かう。警察お抱えの御者に行先を告げた後も、やはりコートの場所を思い出せず、リチェは誰にも見られない位置で苦笑いを漏らした。
イヴェットはどこか嬉しげな表情で呆れていた。そういう表情をするからこの姪馬鹿が成長しないんだと言いたかったが、そこは言わないでおく。
一転して静かになった部屋にラジオの音がよく響いている。いつの間にか歌は終わり、夜のニュースをキャスターが読み上げていた。
『現在エルキルスを騒がせている連続連れ去り事件ですが、新しく被害者が出たという目撃者が現れた為、警察は慎重に調査を進めています』
滑舌よく喋る女性の声に、夕方に警察からこの事を聞かれたばかりだったことを思い出す。
「この事件、まだ続くんだね……早く終わらないかなぁ」
「警察も頑張ってるみたいだし、そうは続かないでしょ。今日炊き出し中にこの事件について聞かれたよ。このポスターの中で見覚えのある人居ませんかって。分からなかったけど」
「へぇ~! 警察の人も結構地道なことやってるんだね」
そうみたい、と頷き、そう言えば、とイヴェットに話を振る。この為に牧師館に寄ったので忘れてはいけない。
「夕方、懐中時計修理してほしいって言ってたよね? 直しておくから出しておいて貰っていい?」
「あ、うん! 部屋まで取りに行ってくるから、ちょっと待ってて!」
イヴェットはそう言って慌ただしく立ち上がって廊下に飛び出していく。その後ろ姿を見送り、大分減ったカレーの残りを掻き込んだ。
「アンリ。その聞かれた人の中に、礼拝に来ている方は居なかったんですか?」
「うん、一応仕事なんだし受付に来た人の顔は覚えてるって」
「だったら良いのですが。礼拝に来てる方で、もし被害に遇われた方が居ましたらとても悲しいことですからね」
そうだね、と頷き、空になった容器をゴミ箱に投げ入れる。今回は無事にゴミ箱の中に入ってくれたので誇らしかった。
「さっきのイヴェットさんの話なんですけど、そこの喫茶店は開店が早いみたいで、行くなら学校に行く前って言っているんです。その人住み込みバイトみたいなので私は行きたくありませんから、朝のイヴェットさんの送りはアンリにお願いしても良いですか?」
イヴェットの通学路近くで開店の早い喫茶店。
先程女性とぶつかりかけたあの喫茶店だろう。公園の蒸気時計やロボットが見たくなって一回行ったことがある。あそこの珈琲は美味しかったし、アイロンのかけられた制服を着た店員も感じが良かった。
もしかしたらイヴェットはその少年に会いに行くのだろうか。
「別にいいけど、代わりに朝の礼拝の準備しておいてよ」
「分かっていますって」
約束を交わしていると、廊下からばたばたと慌ただしい音が聞こえてきた。イヴェットが戻って来たのだろう。音が一旦止まった後、すぐに居間の扉が開かれる。
「アンリさんお待たせっ。これこれ、多分懐中時計の電池切れなんだろうな~って思うんだけど」
栗色の髪をふわりと揺らしながらイヴェットはテーブルに戻り、針が動いていない懐中時計を差し出してくる。ストップウォッチ機能の付いている懐中時計だし、イヴェットが言う通り電池切れだろう。
「だろうね。じゃぁ朝までには直しておくよ」
「うん! 有り難う」
着席し再び勉強に戻ったイヴェットを見て、もう教会に戻ろうと思った。用は済ませたし二人の顔も見られた。戻ってゆっくりしよう。
「俺あっち戻るね。お休み、また明日」
「お休みなさいー」
「お疲れ様でした、お休みなさい」
ん、と返事をし、預かった懐中時計を手に牧師館を後にする。眠かったり寒い日は一旦外に出るのが苦痛だが、問題がない日は外気に触れるこの一瞬が気持良い。
教会の鍵を開け扉の中に体を滑らせた。民家の玄関より数倍広いホールだが、ここに立つとホッとする。廊下の電気を点け階段を上がり、子供部屋の一つである自室に向かった。
一人立ちしようと部屋を探していたところ、ユスティンの父親から「教会で働いてくれるならここ使っていいよ」と言われて以来、幼児を礼拝中に預かっておく部屋の一つをずっと使っている。ごく稀に幼児に貸す時もあるが、特に片付けはしていない。
簡易ベッドの上にも下にも家電品やタイプライターが散乱している中、先程イヴェットから受け取った懐中時計と、ヘッドボードに置いておいた黒い物体とを手元に並べ薄く笑みを浮かべた。
***
駅員に約束を取り付けたリチェ・ヴィーティは、刑事課の部屋を出て薄暗い廊下を歩いた。原則的に二人一組で動くことが決まっているので、ペアを組んでいる無表情の少年の姿がないか視線を巡らせる。
廊下を警務課の女性が歩いてくる。住民相談係も担っている彼女の表情はどこか疲れているように見えた。
「よ、お疲れ様! その可愛い顔が笑ってる所が見たいからちゃんと休めよー。なぁ俺の後輩知らない?」
「はいはい。愛想の悪い後輩君ならさっき一階に居たの見たよ。ぼんやりしてたけど、サボりかな?」
「泊りが続いてるからあいつも疲れてるんだろ。教えてくれて有り難う、またな~」
女性に別れを告げ、ポスターが貼られた階段を降りる。一階はノアを連れて署に戻ってきた時よりも大分人が減っていた。市民からの相談も一段落ついたようだ。
人の減った大広間では、刑事課で一番若い少年の姿は容易に発見出来た。出入口の近くで床に視線を落とし、雨に降られたかのように佇んでいる。たしかにこれはサボりと思われても仕方ない。
「クルト、これから駅に被害者の足取り調査をしに行きたいんだけど、手伝ってくれないか?」
笑みを浮かべて後輩に話しかけ、指を立てて扉を示した。後輩は現実に引き戻されたかのように顔を上げた後、小さく首を縦に振る。
よし、とリチェはクルトを連れ早速外に出た。警察署の外は先程よりも風が強く、思わず身震いしてしまった。あっという間に秋が過ぎ冬が来るのだろう。
去年買ったコートをどこにしまったか思い出しながら、警察署の裏に併設されている専用の厩舎に向かう。前近代にはパトカーという便利な乗り物があったようだが、今は馬車に乗って現場に向かうのが普通だ。
「……ねぇ」
蒸気を排出している煙突の脇を通った時、ふと後輩に声をかけられた。ん? と首を回して振り返り足を止める。
「リチェはさ。……どうして俺の悪口、言わないの?」
聞き洩らしそうになる位小さな声だった。蒸気が邪魔をして、後方にいるクルトがいまいち見えない。
「そんなの、人の悪口を言う奴はモテないって昔から決まってるからだって」
いきなりなんだ、とは言わずなるべくサラッと答える。
「それに数百年前大女優がこんな名言残してるんだよ。綺麗な目をしたいなら人の美点を探せ、綺麗な唇になりたいなら綺麗なことを言え……だっけ? まーそんなの」
口にしてみたものの正しく思い出せなくて曖昧に返し、誤魔化すようににっと笑う。
「そっか。…………有り難う」
煙突の音が大きかったが、礼を言われ頬が緩む。
「どういたしまして」
短く答え、再び前を向き厩舎に向かう。警察お抱えの御者に行先を告げた後も、やはりコートの場所を思い出せず、リチェは誰にも見られない位置で苦笑いを漏らした。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
サイレント・サブマリン ―虚構の海―
来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。
科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。
電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。
小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。
「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」
しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。
謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か——
そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。
記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える——
これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。
【全17話完結】
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件
こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる