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35 凌辱目的の人身売買
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誘拐された。
プリシラは南方に住む高潔な伯爵令嬢だ。
「えっ……なに、これ」
しかしどうも、背後から薬を嗅がされたようである。そして気が付けば、夜の雪原を突っ切る寒い馬車の中に居た。
馬車の外、御者席から話している声が聞こえて来る。
「しっかし、この町もさもしいよねえ。富裕層は俺等みたいな人攫いから買ったご令嬢を犯す事が、至上で唯一の楽しみと来た」
「この辺りは娯楽が無ぇから仕方ないさ」
人攫い。犯す。
その単語とこの状況にゾッとした。
──自分を溺愛している父親から聞いた事がある。
最近貴族令嬢を狙った人身売買が横行しているから気を付けろ、と。
娯楽の乏しい極寒の地では、購入した自分達貴族令嬢を陵辱する事に高い需要があるのだ、と。
「いやっ……」
商家である愛する婚約者の元に帰りたい。向こうの父親が強引にまとめた縁談だったが、今では相思相愛だ。
純潔は望み通り彼に捧げたい。逃げなければ。
幸い人攫い達は御者席に居て、自分が寝転がっている箱の中には誰も居ない。
プリシラは決心した。
「っ!」
覚悟を決め、プリシラは馬車の外に飛び出した。砂漠の国出身の自分には痛い程外は寒かったが、陵辱される恐ろしさに比べればこのぐらい耐えられた。
「あっ逃げやがった!」
走行中の馬車は急に止まれない。
慌てる人攫いの声を背に、プリシラは裸足で雪の上を風のように走っていった。
「寒い……っ」
逃げ出した先でプリシラは震えていた。
布切れ一枚の薄着で居る自分は、先程からずっと歯を鳴らしている。
無事逃げ出せたのは良いが、今度は森の中。ずっと何かに見られている気がして怖かった。
これから如何すれば良いのか。不安はまだまだ尽きない。
「あっ」
そんな時だった。
視界の先に灯りが見えたのだ。どうも森の中にぽつんとある民家のようだっだ。スープを煮込んでいる良い匂いもする。
「あそこに助けを求めましょう……!」
プリシラは震えながら民家の扉をドンドンッ! と強く叩き、待つ事数秒。
「はいはいどちら様?」
扉を開けて出て来たのは、優しそうな少し年上の女性だったのだ。彼女は自分を見て驚きに目を見開いていた。
「助けてください! 逃げて来たんですっ!」
訛りが強くはあったが、なんとか言葉が通じそうで助かった。
「と、とりあえずお入りっ!」
自分の服装を見た女性は、この状況を直ぐに理解してくれたらしい。驚きつつも室内に招き入れてくれた。
暖炉の前に連れて行かれた自分に、女性は厚手の毛布をかけ豆のスープまで出してくれた。
「有り難うございます……助かりました」
「驚いたよ、こんな町にそんな格好で居るなんて。大丈夫かい? 誰かから逃げて来たのかい?」
どうやらこの町は色情魔が多く、こんな風に女を買っている事が伺えた。噂通りだ。
「人攫いに遭ったところを逃げて来たんです。首都に帰りたいのですが如何すれば良いでしょうか?」
「そうね、早く帰った方が良いわ。馬車乗り場に行って首都まで乗せて貰うと良いわよ」
「はい、有り難うございます!!」
良かった、と胸を撫で下ろす。これで婚約者に純潔を捧げられる。
「明日馬車乗り場まで案内してあげるから、今日はゆっくりお休み」
「本当……有り難う御座います……っ」
感極まってプリシラは泣きそうだった。
翌日。
毛皮のガウンを借りたプリシラは長距離馬車に入ろうとしていた。
「じゃあプリシラちゃん、気を付けてね」
「はいっ、何から何まで有り難うございました! 首都に戻ったら改めてお礼をさせて下さい」
「良いって良いって、そんな事より素敵なお嫁さんになるんだよ」
「はいっ! では、有り難うございました!」
一晩お世話になった事もあり、年が近い事もあってこの女性とはあっという間に仲良くなった。
こんな町に連れて来られたのは最悪だったが、こんな素敵な友人が出来た事には感謝したい。
「このお礼は必ずしますからーっ!」
最後ににっこり笑って感謝を伝えたプリシラは、綺麗な体で恋人と再会出来る事に感謝した。
***
「これでこの縁談は破談だ……!」
1週間後。
娘が首都に戻って来た事を知ったプリシラの父親はニンマリと笑った。
娘の縁談が嫌だった。
何が悲しくて可愛い可愛い1人娘を嫁がせなければいけないのだ。
しかし頑なに反発して、愛しい娘に駆け落ちでもされても困る。
そこで考えたのが、わざと娘を誘拐させる事だった。
悪い噂がついた事を理由に娘の縁談を断れば、娘がこの家から出て行く事もなくなる。
陵辱目的の人身売買がある、と娘に吹き込み、雇った人間に娘を誘拐させわざと逃げさせた。危害が加えられぬよう監視をさせながら、これまた雇った女に娘を保護させる。
そして娘が戻って来たら、最後の仕上げに伯爵令嬢が陵辱されたと言う噂を流す。こうすれば向こうから縁談を断って来るだろう。後は娘が自害しないよう寄り添い続ける。
「ふっふっふ……」
愛しい娘との時間を思うと笑いが込み上がって来た。男は噂を流しに行くべく部屋を後にする。
全ては可愛い娘を離さない為に。
プリシラは南方に住む高潔な伯爵令嬢だ。
「えっ……なに、これ」
しかしどうも、背後から薬を嗅がされたようである。そして気が付けば、夜の雪原を突っ切る寒い馬車の中に居た。
馬車の外、御者席から話している声が聞こえて来る。
「しっかし、この町もさもしいよねえ。富裕層は俺等みたいな人攫いから買ったご令嬢を犯す事が、至上で唯一の楽しみと来た」
「この辺りは娯楽が無ぇから仕方ないさ」
人攫い。犯す。
その単語とこの状況にゾッとした。
──自分を溺愛している父親から聞いた事がある。
最近貴族令嬢を狙った人身売買が横行しているから気を付けろ、と。
娯楽の乏しい極寒の地では、購入した自分達貴族令嬢を陵辱する事に高い需要があるのだ、と。
「いやっ……」
商家である愛する婚約者の元に帰りたい。向こうの父親が強引にまとめた縁談だったが、今では相思相愛だ。
純潔は望み通り彼に捧げたい。逃げなければ。
幸い人攫い達は御者席に居て、自分が寝転がっている箱の中には誰も居ない。
プリシラは決心した。
「っ!」
覚悟を決め、プリシラは馬車の外に飛び出した。砂漠の国出身の自分には痛い程外は寒かったが、陵辱される恐ろしさに比べればこのぐらい耐えられた。
「あっ逃げやがった!」
走行中の馬車は急に止まれない。
慌てる人攫いの声を背に、プリシラは裸足で雪の上を風のように走っていった。
「寒い……っ」
逃げ出した先でプリシラは震えていた。
布切れ一枚の薄着で居る自分は、先程からずっと歯を鳴らしている。
無事逃げ出せたのは良いが、今度は森の中。ずっと何かに見られている気がして怖かった。
これから如何すれば良いのか。不安はまだまだ尽きない。
「あっ」
そんな時だった。
視界の先に灯りが見えたのだ。どうも森の中にぽつんとある民家のようだっだ。スープを煮込んでいる良い匂いもする。
「あそこに助けを求めましょう……!」
プリシラは震えながら民家の扉をドンドンッ! と強く叩き、待つ事数秒。
「はいはいどちら様?」
扉を開けて出て来たのは、優しそうな少し年上の女性だったのだ。彼女は自分を見て驚きに目を見開いていた。
「助けてください! 逃げて来たんですっ!」
訛りが強くはあったが、なんとか言葉が通じそうで助かった。
「と、とりあえずお入りっ!」
自分の服装を見た女性は、この状況を直ぐに理解してくれたらしい。驚きつつも室内に招き入れてくれた。
暖炉の前に連れて行かれた自分に、女性は厚手の毛布をかけ豆のスープまで出してくれた。
「有り難うございます……助かりました」
「驚いたよ、こんな町にそんな格好で居るなんて。大丈夫かい? 誰かから逃げて来たのかい?」
どうやらこの町は色情魔が多く、こんな風に女を買っている事が伺えた。噂通りだ。
「人攫いに遭ったところを逃げて来たんです。首都に帰りたいのですが如何すれば良いでしょうか?」
「そうね、早く帰った方が良いわ。馬車乗り場に行って首都まで乗せて貰うと良いわよ」
「はい、有り難うございます!!」
良かった、と胸を撫で下ろす。これで婚約者に純潔を捧げられる。
「明日馬車乗り場まで案内してあげるから、今日はゆっくりお休み」
「本当……有り難う御座います……っ」
感極まってプリシラは泣きそうだった。
翌日。
毛皮のガウンを借りたプリシラは長距離馬車に入ろうとしていた。
「じゃあプリシラちゃん、気を付けてね」
「はいっ、何から何まで有り難うございました! 首都に戻ったら改めてお礼をさせて下さい」
「良いって良いって、そんな事より素敵なお嫁さんになるんだよ」
「はいっ! では、有り難うございました!」
一晩お世話になった事もあり、年が近い事もあってこの女性とはあっという間に仲良くなった。
こんな町に連れて来られたのは最悪だったが、こんな素敵な友人が出来た事には感謝したい。
「このお礼は必ずしますからーっ!」
最後ににっこり笑って感謝を伝えたプリシラは、綺麗な体で恋人と再会出来る事に感謝した。
***
「これでこの縁談は破談だ……!」
1週間後。
娘が首都に戻って来た事を知ったプリシラの父親はニンマリと笑った。
娘の縁談が嫌だった。
何が悲しくて可愛い可愛い1人娘を嫁がせなければいけないのだ。
しかし頑なに反発して、愛しい娘に駆け落ちでもされても困る。
そこで考えたのが、わざと娘を誘拐させる事だった。
悪い噂がついた事を理由に娘の縁談を断れば、娘がこの家から出て行く事もなくなる。
陵辱目的の人身売買がある、と娘に吹き込み、雇った人間に娘を誘拐させわざと逃げさせた。危害が加えられぬよう監視をさせながら、これまた雇った女に娘を保護させる。
そして娘が戻って来たら、最後の仕上げに伯爵令嬢が陵辱されたと言う噂を流す。こうすれば向こうから縁談を断って来るだろう。後は娘が自害しないよう寄り添い続ける。
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