18 / 65
Ⅱ havn―海―
17 「……まあ駆け落ち中だしね!」
しおりを挟む
「何でそんな二度手間するんですか?」
効率が悪いように思えて尋ねる。
と、ルーベンの表情が先程ウィルに向けていたような怪訝そうな物に変わった。
どうしてそんな当たり前の事を聞くんだ、とばかりに。
「おいメイドならそれくらい分かれよ、灯りの節約だっての。外はランタンの恩恵に預かれるが、倉庫内はそうもいかん」
だんだんルーベンの口調が雑になってきた。失言だった事に気が付き、慌ててこくこくと頷く。これでは折角貴族役になってくれたウィルに申し訳無い。
怪しまれていないか視線を持ち上げてルーベンを盗み見る。と、全く怪しんでいなかった船長は今度こそ倉庫内に入り、何処かにたつきながらこう言ってきた。
「良いか? キスする時みてーに慎重にやれよ!」
「な……っ! もう、ルーベンさんはデリカシーが無いわね……!」
眉を吊り上げながら自分も倉庫に入っていく。風が無い屋内はそれだけで暖かくてホッとする。
振り返ってウィルを見ると、口元を手で覆いながら続いてくるところだった。そんな姿に嫌な思いをしない自分もどうかしている。
「……まあ駆け落ち中だしね!」
ふんっと鼻を鳴らしつんけんしながら一言言った後、1人でも運べるアサリの元へカツカツと歩いていった。
***
リーナ・シュルルフは幼い頃、トナカイの遊牧生活を部落で営みながら山で暮らしていた。
世界の見え方が変わって来た頃、山を降り海辺の寄宿学校に通い出した。サーミの子供達はみな、行きたくないと泣きながらもそうしている。
そのせいか潮の匂いを嗅ぐとあの頃の事を思い出す。
「ラップ人」と蔑まれた事。しかし町での暮らしはとても刺激的だった事。一緒に寄宿学校に通った幼馴染のレオンとヨイクを良く歌った事。冬の祭りを楽しんだ事。白夜の中抱き締められた事。
次第にレオンが居ればそれで良いと思うようになって。
レオンも「サーミ人にも町で暮らす権利を」という気持ちを抱いていた事を知り、何かから逃れるように部落と合流するのを止めたのだった。ラップ人と害虫のように扱われ続けたけれど、我慢出来たのは夫が隣に居てくれたから。
今両親はどこの国に居るのだろう。もう部落とは合流出来ないと言うのに、それでも良いと思ったのに、偶に酷くトナカイの温もりが恋しい。
「すみません、少しお話を伺いたいのですがっ!」
高熱を出している息子には、入院が一番だという事を知っている。その為のお金をロヴィーサから貰いたい一心で、港を行き交う人物に声を掛ける。
最初は何事かと振り返ってくれた人達も明かりに照らされた自分の顔を見るなり、嫌そうに眉を潜めそそくさと正面に向き直る。港に来てかれこれ1時間、もうずっとこんな調子だ。
その時。
港に一隻の漁船が停泊した。船から降りるなり騒ぎ出した彼らはこの辺り一帯の海から来ているので、アストリッドの事を聞いてもな、と思い連絡船の乗客や船員に声を掛け続ける。
「いや絶対あれは誰か居た! 海魔ドラウグみてぇなわかめ頭の気味の悪い物なんかじゃねえ! もっとこう綺麗な……とにかく誰か居た!」
「海上に誰か居る筈無いだろ。トロールは森に、ドラウグは海中に居るって相場が決まっている。お前の見間違いだったんだよ。お前があんまり慌てるから船をそこまで行かせたが何にも無かったじゃないか」
「それは船に驚いたからだろうよ!!」
「はいはい、おかげで燃料を無駄にしたぜ」
漁船から下りてきた男達の声は大きく、話している内容が自分の耳にもハッキリと聞こえてきた。
――海上に誰か居た。
そんな奇妙な話がやけに印象に残ったのは、丁度故郷を思い出していたからだろうか。サーミの民はみな、姿の見えない存在を深く信じているから。
「それは悪かった、けど……俺は確かに女の声を聞いたんだよ! くそっ、お前俺がこの前イカサマしたからって嘘つきだと思ってんなっ!?」
「ははっ、それはあるかもなあ」
この漁師の話がどこまで信用出来るかはともかく、その話に引っかかりを覚えた。
もしかしたらアストリッドはいかだや小船に乗って、トロムソを出たのではないか、と。
(……な訳ないか)
が、そんなの非現実すぎる。もしあの令嬢に協力者が居たとしてもそんな方法は取るまい。それに直ぐ確認しに行ったなら小船は見付けられる筈。
不思議な話だとは思うが漁師の勘違い。精霊とは関係があるかもしれないが、アストリッドとは何の関係も無いだろう。
「すみません、少しお話を伺いたいのですが……!」
また人に話し掛けた。
極夜の季節は時間の感覚が狂いそうになるが、まだ夜は始まったばかり。港に人は多い。
愛しい息子の為に、何としてでも情報を得なければ。生臭い市場の中改めて強く誓う。
粘り続けたおかげで、1時間後観念したような市場の人間から話を聞けたが、定期船にアストリッドらしき人物が乗った証言は得られなかった。
屋敷に帰ると、ちょうどロヴィーサと女中達が話していた。
なんでも、アストリッドがピアノを弾いていた崖上の民家の老夫婦に「悪いと思っているならこの家を買ってくれ」と言われたらしい。
どうも彼らは近々クリスチャニアに引っ越すらしく、あの家を売りたかったらしい。そんな時にロヴィーサが来た物だから、「迷惑料だ」とここぞとばかりに高値で売りつけてきたそうだ。
それもあってか、ロヴィーサの横顔はいつも以上に不機嫌そうだった。
***
もうすっかり口が悪くなったルーベンの指揮の下、アストリッド・グローヴェンはウィルと協力しながら荷物を運んでいく。
数時間もすると、「女と会って来た」と満足そうに話す船員がチラホラ戻ってきた。自分達が駆け落ち中だと知った彼らは下品な質問を飛ばしてはきたものの、船に怪しい男女が乗る事を歓迎してくれた。
さすが本職、船乗り達が参加したら荷積みはすぐに終わった。その時のウィルの横顔が、疲れきっているのに達成感に満ちていたのが印象的だった。
日付が変わる頃になると市場の客引きの声も減り、代わりに出店者同士が情報交換を行い出す。
甲板でウィルと共に休憩していたところを、甘い匂いのするパイプタバコをふかしているルーベンに声を掛けられた。
効率が悪いように思えて尋ねる。
と、ルーベンの表情が先程ウィルに向けていたような怪訝そうな物に変わった。
どうしてそんな当たり前の事を聞くんだ、とばかりに。
「おいメイドならそれくらい分かれよ、灯りの節約だっての。外はランタンの恩恵に預かれるが、倉庫内はそうもいかん」
だんだんルーベンの口調が雑になってきた。失言だった事に気が付き、慌ててこくこくと頷く。これでは折角貴族役になってくれたウィルに申し訳無い。
怪しまれていないか視線を持ち上げてルーベンを盗み見る。と、全く怪しんでいなかった船長は今度こそ倉庫内に入り、何処かにたつきながらこう言ってきた。
「良いか? キスする時みてーに慎重にやれよ!」
「な……っ! もう、ルーベンさんはデリカシーが無いわね……!」
眉を吊り上げながら自分も倉庫に入っていく。風が無い屋内はそれだけで暖かくてホッとする。
振り返ってウィルを見ると、口元を手で覆いながら続いてくるところだった。そんな姿に嫌な思いをしない自分もどうかしている。
「……まあ駆け落ち中だしね!」
ふんっと鼻を鳴らしつんけんしながら一言言った後、1人でも運べるアサリの元へカツカツと歩いていった。
***
リーナ・シュルルフは幼い頃、トナカイの遊牧生活を部落で営みながら山で暮らしていた。
世界の見え方が変わって来た頃、山を降り海辺の寄宿学校に通い出した。サーミの子供達はみな、行きたくないと泣きながらもそうしている。
そのせいか潮の匂いを嗅ぐとあの頃の事を思い出す。
「ラップ人」と蔑まれた事。しかし町での暮らしはとても刺激的だった事。一緒に寄宿学校に通った幼馴染のレオンとヨイクを良く歌った事。冬の祭りを楽しんだ事。白夜の中抱き締められた事。
次第にレオンが居ればそれで良いと思うようになって。
レオンも「サーミ人にも町で暮らす権利を」という気持ちを抱いていた事を知り、何かから逃れるように部落と合流するのを止めたのだった。ラップ人と害虫のように扱われ続けたけれど、我慢出来たのは夫が隣に居てくれたから。
今両親はどこの国に居るのだろう。もう部落とは合流出来ないと言うのに、それでも良いと思ったのに、偶に酷くトナカイの温もりが恋しい。
「すみません、少しお話を伺いたいのですがっ!」
高熱を出している息子には、入院が一番だという事を知っている。その為のお金をロヴィーサから貰いたい一心で、港を行き交う人物に声を掛ける。
最初は何事かと振り返ってくれた人達も明かりに照らされた自分の顔を見るなり、嫌そうに眉を潜めそそくさと正面に向き直る。港に来てかれこれ1時間、もうずっとこんな調子だ。
その時。
港に一隻の漁船が停泊した。船から降りるなり騒ぎ出した彼らはこの辺り一帯の海から来ているので、アストリッドの事を聞いてもな、と思い連絡船の乗客や船員に声を掛け続ける。
「いや絶対あれは誰か居た! 海魔ドラウグみてぇなわかめ頭の気味の悪い物なんかじゃねえ! もっとこう綺麗な……とにかく誰か居た!」
「海上に誰か居る筈無いだろ。トロールは森に、ドラウグは海中に居るって相場が決まっている。お前の見間違いだったんだよ。お前があんまり慌てるから船をそこまで行かせたが何にも無かったじゃないか」
「それは船に驚いたからだろうよ!!」
「はいはい、おかげで燃料を無駄にしたぜ」
漁船から下りてきた男達の声は大きく、話している内容が自分の耳にもハッキリと聞こえてきた。
――海上に誰か居た。
そんな奇妙な話がやけに印象に残ったのは、丁度故郷を思い出していたからだろうか。サーミの民はみな、姿の見えない存在を深く信じているから。
「それは悪かった、けど……俺は確かに女の声を聞いたんだよ! くそっ、お前俺がこの前イカサマしたからって嘘つきだと思ってんなっ!?」
「ははっ、それはあるかもなあ」
この漁師の話がどこまで信用出来るかはともかく、その話に引っかかりを覚えた。
もしかしたらアストリッドはいかだや小船に乗って、トロムソを出たのではないか、と。
(……な訳ないか)
が、そんなの非現実すぎる。もしあの令嬢に協力者が居たとしてもそんな方法は取るまい。それに直ぐ確認しに行ったなら小船は見付けられる筈。
不思議な話だとは思うが漁師の勘違い。精霊とは関係があるかもしれないが、アストリッドとは何の関係も無いだろう。
「すみません、少しお話を伺いたいのですが……!」
また人に話し掛けた。
極夜の季節は時間の感覚が狂いそうになるが、まだ夜は始まったばかり。港に人は多い。
愛しい息子の為に、何としてでも情報を得なければ。生臭い市場の中改めて強く誓う。
粘り続けたおかげで、1時間後観念したような市場の人間から話を聞けたが、定期船にアストリッドらしき人物が乗った証言は得られなかった。
屋敷に帰ると、ちょうどロヴィーサと女中達が話していた。
なんでも、アストリッドがピアノを弾いていた崖上の民家の老夫婦に「悪いと思っているならこの家を買ってくれ」と言われたらしい。
どうも彼らは近々クリスチャニアに引っ越すらしく、あの家を売りたかったらしい。そんな時にロヴィーサが来た物だから、「迷惑料だ」とここぞとばかりに高値で売りつけてきたそうだ。
それもあってか、ロヴィーサの横顔はいつも以上に不機嫌そうだった。
***
もうすっかり口が悪くなったルーベンの指揮の下、アストリッド・グローヴェンはウィルと協力しながら荷物を運んでいく。
数時間もすると、「女と会って来た」と満足そうに話す船員がチラホラ戻ってきた。自分達が駆け落ち中だと知った彼らは下品な質問を飛ばしてはきたものの、船に怪しい男女が乗る事を歓迎してくれた。
さすが本職、船乗り達が参加したら荷積みはすぐに終わった。その時のウィルの横顔が、疲れきっているのに達成感に満ちていたのが印象的だった。
日付が変わる頃になると市場の客引きの声も減り、代わりに出店者同士が情報交換を行い出す。
甲板でウィルと共に休憩していたところを、甘い匂いのするパイプタバコをふかしているルーベンに声を掛けられた。
0
あなたにおすすめの小説
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結保証】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。
小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。
「マリアが熱を出したらしい」
駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。
「また裏切られた……」
いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。
「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」
離婚する気持ちが固まっていく。
さようならの定型文~身勝手なあなたへ
宵森みなと
恋愛
「好きな女がいる。君とは“白い結婚”を——」
――それは、夢にまで見た結婚式の初夜。
額に誓いのキスを受けた“その夜”、彼はそう言った。
涙すら出なかった。
なぜなら私は、その直前に“前世の記憶”を思い出したから。
……よりによって、元・男の人生を。
夫には白い結婚宣言、恋も砕け、初夜で絶望と救済で、目覚めたのは皮肉にも、“現実”と“前世”の自分だった。
「さようなら」
だって、もう誰かに振り回されるなんて嫌。
慰謝料もらって悠々自適なシングルライフ。
別居、自立して、左団扇の人生送ってみせますわ。
だけど元・夫も、従兄も、世間も――私を放ってはくれないみたい?
「……何それ、私の人生、まだ波乱あるの?」
はい、あります。盛りだくさんで。
元・男、今・女。
“白い結婚からの離縁”から始まる、人生劇場ここに開幕。
-----『白い結婚の行方』シリーズ -----
『白い結婚の行方』の物語が始まる、前のお話です。
【完結】新皇帝の後宮に献上された姫は、皇帝の寵愛を望まない
ユユ
恋愛
周辺諸国19国を統べるエテルネル帝国の皇帝が崩御し、若い皇子が即位した2年前から従属国が次々と姫や公女、もしくは美女を献上している。
既に帝国の令嬢数人と従属国から18人が後宮で住んでいる。
未だ献上していなかったプロプル王国では、王女である私が仕方なく献上されることになった。
後宮の余った人気のない部屋に押し込まれ、選択を迫られた。
欲の無い王女と、女達の醜い争いに辟易した新皇帝の噛み合わない新生活が始まった。
* 作り話です
* そんなに長くしない予定です
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる