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十五
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ドッドッドッドッドッ
自分の鼓動が高鳴る。とてもうるさい。
まさかヤツを恐れていると言うのか。
うるさく鳴り響く自らの鼓動に俺は苛ついた。
ギィ……
階段の最上段にヤツの足が現れた。
黒ずんだ汚い革のブーツが足首まで見える。
ギィ……
また一段降りた。
こうして見るヤツの足は意外にでかい。
ギィ……
膝まで現れる。
サロペットのような木こりの作業着。
あちこち破けて皮膚が露見している。
皮膚も服もどちらも薄汚れて汚ない事この上ない。
ただ、黒く汚れているのは大部分が血なのだろう。
ギィ……
遂に手に持った大きな斧まで露になる。
血のこびりついた錆びた斧。
手入れなどしたことが無いのが一目で判る。
切れ味など関係ないのだろう。
力任せに叩きつけるだけの使い道だ。
そして。
ギィ……
顔が現れた。
「へえ……」
オオムカデンダルが誰にともなく呟いた。
ヤツの顔は麻袋のような物を被っていた。
全く常軌を逸している。
ヤツの顔は肉がむき出しになっていた筈だ。
それを治療もせずに傷を隠すのに麻袋を直接被るという発想が異常以外の何だと言うのか。
当然ヤツの表情は読み取れない。
袋はヤツ自身の血が滲んで、すでにまだら模様に変色している。
無造作に開けられた三㎝程の穴がこちらに向けられている。
見ているのか。
あの穴から今、俺を見ているのか。
ドッドッドッドッドッ
鼓動がうるさい。
呼吸も荒い。
口の中はカサカサに乾いている。
ギィ……
そしてヤツは最後の階段を降りた。
俺たちと同じ床に立っている。
シャラッ
俺は無意識に剣を抜いた。
モンスターを相手に今まで幾度となく行ってきた行動だ。
体はそれを覚えている。
今度は不意打ちではない。
相対して構える。
大丈夫。いつも通りだ。
今度はやれる。
腰を低くし剣を両手で持つ。
一番攻撃力の高い握り方だ。
一撃で深手を負わせる。
そうなれば、例え殺せなくても動けなくなるのは確実だ。
それから止めを刺せばいいのだ。
俺はジリジリとにじり寄るように前に出た。
地下室を蝋燭の頼りない灯りが照らす。
ヤツの影が壁にクッキリと浮かび上がり、それが炎の揺れに合わせて時々揺らめいた。
「カッ!」
俺は短く声を発して一足で斬り込んだ。
ドカッ
鈍い音がして、俺のロングソードがヤツの胴体に脇腹から食い込んだ。
やったか?
俺はヤツの顔を見た。
だが、袋を被ったヤツの顔は表情など読み取れなかった。
しかしその穴から覗いた目は大きく見開かれている。
明らかな苦悶の表情が読み取れる。
やったぞ。
俺は決着を確信した。
手応えも十分にある。
「我慢強いな。一言も発しないとは、誰かさんとは大違いだ」
オオムカデンダルがそう言って笑った。
コイツ、やっぱり俺を馬鹿にしているのだ。
「馬鹿にするなあッ!」
俺はヤツの体を怒りに任せて蹴り飛ばし、食い込んだ剣を引き抜いた。
自分の鼓動が高鳴る。とてもうるさい。
まさかヤツを恐れていると言うのか。
うるさく鳴り響く自らの鼓動に俺は苛ついた。
ギィ……
階段の最上段にヤツの足が現れた。
黒ずんだ汚い革のブーツが足首まで見える。
ギィ……
また一段降りた。
こうして見るヤツの足は意外にでかい。
ギィ……
膝まで現れる。
サロペットのような木こりの作業着。
あちこち破けて皮膚が露見している。
皮膚も服もどちらも薄汚れて汚ない事この上ない。
ただ、黒く汚れているのは大部分が血なのだろう。
ギィ……
遂に手に持った大きな斧まで露になる。
血のこびりついた錆びた斧。
手入れなどしたことが無いのが一目で判る。
切れ味など関係ないのだろう。
力任せに叩きつけるだけの使い道だ。
そして。
ギィ……
顔が現れた。
「へえ……」
オオムカデンダルが誰にともなく呟いた。
ヤツの顔は麻袋のような物を被っていた。
全く常軌を逸している。
ヤツの顔は肉がむき出しになっていた筈だ。
それを治療もせずに傷を隠すのに麻袋を直接被るという発想が異常以外の何だと言うのか。
当然ヤツの表情は読み取れない。
袋はヤツ自身の血が滲んで、すでにまだら模様に変色している。
無造作に開けられた三㎝程の穴がこちらに向けられている。
見ているのか。
あの穴から今、俺を見ているのか。
ドッドッドッドッドッ
鼓動がうるさい。
呼吸も荒い。
口の中はカサカサに乾いている。
ギィ……
そしてヤツは最後の階段を降りた。
俺たちと同じ床に立っている。
シャラッ
俺は無意識に剣を抜いた。
モンスターを相手に今まで幾度となく行ってきた行動だ。
体はそれを覚えている。
今度は不意打ちではない。
相対して構える。
大丈夫。いつも通りだ。
今度はやれる。
腰を低くし剣を両手で持つ。
一番攻撃力の高い握り方だ。
一撃で深手を負わせる。
そうなれば、例え殺せなくても動けなくなるのは確実だ。
それから止めを刺せばいいのだ。
俺はジリジリとにじり寄るように前に出た。
地下室を蝋燭の頼りない灯りが照らす。
ヤツの影が壁にクッキリと浮かび上がり、それが炎の揺れに合わせて時々揺らめいた。
「カッ!」
俺は短く声を発して一足で斬り込んだ。
ドカッ
鈍い音がして、俺のロングソードがヤツの胴体に脇腹から食い込んだ。
やったか?
俺はヤツの顔を見た。
だが、袋を被ったヤツの顔は表情など読み取れなかった。
しかしその穴から覗いた目は大きく見開かれている。
明らかな苦悶の表情が読み取れる。
やったぞ。
俺は決着を確信した。
手応えも十分にある。
「我慢強いな。一言も発しないとは、誰かさんとは大違いだ」
オオムカデンダルがそう言って笑った。
コイツ、やっぱり俺を馬鹿にしているのだ。
「馬鹿にするなあッ!」
俺はヤツの体を怒りに任せて蹴り飛ばし、食い込んだ剣を引き抜いた。
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