見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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四一

「クッ……!デカいな」

 ガイが唸るように言った。

 特に珍しくもない狼が、大きくなっただけでこんなにも恐ろしく感じるものなのか。
圧力が尋常ではない。
こんなのが一〇匹近くもいる。

「グルオアアアアアアアッ!」

 バルバの一撃を食らった狼が唸り声と共に立ち上がった。

 俺たちは思わず見上げる。
あまりの大きさにもう訳が判らない。
立ち上がった狼の影で、辺りが一瞬暗くなる。

 ひゅ!

 立ち上がった狼の目に石が命中した。

 ひゅ!ひゅ!ひゅ!

 次々と連続して石が飛ぶ。

 ルガのスリングだ。
いわゆる投石紐である。
中指にスリングの輪を掛けてもう片方を握る。
そしてその中央の広く帯になった部分に石を乗せて振り回す。
遠心力を十分に得て紐を離すと、石が発射される。

 昔からある原始的な武器だが威力は抜群だ。
レンジャーの中にはスリングを得意とする者がいる。
使い手の熟練度によっては弓と同じ飛距離や命中精度を誇る。

 ルガはそれを連続で発射し続ける。

 しかし小型モンスターなら一撃で倒せたであろうその威力も、この巨大な狼にはさほどのダメージはない。

 だがそれでいい。
隙を作り注意を惹く。
敵の妨害がパーティーの後衛におけるセオリーの一つだ。

 その隙にバルバがもう一度突っ込む。

 ドン!ドン!ドン!

 今度は打って変わって鈍い音がする。
狼の厚い毛皮にヌンチャクが当たる音だった。
あまりダメージが通っていないのは明らかだ。

 防御力も高い。
弱点以外はダメージを通すのは難しそうだ。

「クソッ!早くしないと他の奴らが来るぞ!」

 他の狼ももうそこまで迫っている。

 バルバが打って素早くガイの後ろに下がり、ガイが敵の攻撃を受け止めメイスを繰り出す。

 ドカッ!ドカッ!

 やはりあまり有効打になっていない。

「毛に覆われている部分は駄目!顔だ、顔を狙って!」

 ルガが叫ぶ。

 俺はその声とほぼ同時に飛び出した。

 ザクッ!

 腰の剣を抜くと同時に狼の脳天目掛けて剣を振り下ろした。

「浅いか」

 並みの狼ならば今の一撃は確実に頭を真っ二つにできていた。
骨も厚く硬い。

 もっと強くか。
そうなってくるとこの剣では綺麗に両断するのは難しいかもしれない。
武器の質まで問題になってくるとは。

「……だが、今ある物でやるしかない」

 俺は自分に言い聞かせた。

 防御力が高い相手には剣よりメイスのような打撃武器の方が有効だ。

 頭を斬りつけられ出血した狼は標的を俺へと定めた。

 ガオオンッ!

 短く叫んで前足を振り下ろす。

 ダムッ!

 前足が空を切って地面を強く叩いた。
俺は軽くそれをかわすと狼の腹の下へともぐり込んだ。
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