見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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四三

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 さすがに奴らも馬鹿ではない。
獲物の異質さに気が付いたか、一気に襲ってくる気配がない。

 こちらの隙をうかがいながら、三匹は俺たちの周りに展開した。

 その外側のどこかにあと六匹くらい居るのだという。
まだ気は抜けない。

「どうしたワン公。こっちだ」

 ガンガンガンガン

 ガイがメイスでラージシールドよりも更に一回り大きな自慢の大楯を叩いて鳴らす。

 まだプラヴァケーションの効果は効いている。
狼は今、飛び出したい本能と戦っていた。

 ザザッ!

 堪えきれずに一匹が飛び出した。

 所詮は獣だ。

 俺はまっすぐ迎え撃つ。
鋭利で巨大な狼の爪はまるで斧のようだ。
それをスモールシールドで受け止める。

 ガキインッ!

 金属製のスモールシールドが悲鳴をあげる。
俺が受け止められてもシールドの方が辛そうだ。

 スモールシールドの真ん中辺りがへこむ。

 ズザザザザッ!

 俺は勢いに負けて後ろへ押し返された。
やはり重量差はいかんともしがたい。

「オォッ!」

 ガイが吼えた。
今度はガイに襲いかかっている。
それをガイは特大シールドで見事に受けきっている。

 なるほど。
確かにシールドに重量は必要だ。
ガイはこれが衛士だと言わんばかりに完全に狼の攻撃をシャットアウトしていた。
見事なものだった。

 隙を見て時々メイスをカウンター気味に繰り出している。
だが致命打にはなっていない。
一進一退だ。

 後衛からはルガのスリングが飛ぶ。
 狼の意識がルガに向くと、今度はガイがメイスを奮う。

 狼が一気に攻勢に転じようと前に出た瞬間。

「チェイッ!」

 気合いと共にバルバが狼の横っ面に飛び蹴りを見舞った。

 そして、そのまま顔の毛を掴むと力任せに引き寄せる。

「ハッ!ハッ!ハッ!」

 自分を狼に引き付けてから連続で膝蹴りを放つ。
並みの蹴りとは次元が違う。
格闘でモンスターを倒すなど普通の冒険者には無理だ。

 しかしモンクはそれを可能にする。
それは高次元の格闘技術によるものだ。
彼らは素手で巨大な岩石を粉砕する。
そういう技術を身に付けているのだ。

「オオンッ!」

 狼が悲鳴をあげた。
顔が蹴られた反動で反対に向いている。

「覇ッ!」

 気合い一閃。
着地したバルバが大きく踏み込んだ。

 ダンッ!

 草の生い茂った土の地面で、信じられないほど大きな足音が鳴り響く。

 バルバが踏み込んだ辺りの土が『どっ』と大きく舞い上がった。

「ィヤアッ!」

 バキッ!

 バルバの気合いと共に嫌な音がした。

 大きく踏み込んだバルバの正拳突きが狼の前足に勢いよく突き刺さった。

 折れた。

 狼の前足が関節のない部分でおかしな方向に曲がっていた。
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