見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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六八

「俺はお前が助けてくれと言うからやってるんだぜ。お前は何の為に手術を受けたんだ?」

 オオムカデンダルの言葉に俺は黙ってしまった。

 その通りだ。
一体何の為に彼の私兵にまでなったのか。
助けてくれる事への対価だった筈だ。

「……判った。あんたの言う通りだ。この件、やらせてもらう」

 俺は覚悟を決めて返事をした。
いつの間にか卑屈になっていた。
彼の強さに甘えていた。

 彼が強いことと、俺がやらなければならないことに何の関係もない。
彼女を助けるのは彼ではない、俺だ。

「……ふふん。少しはやる気になったか。だが、腑抜けたお前に出来るかね」

 オオムカデンダルが挑発するような口調で言った。

「正直判らん。その代わり死んだら骨は拾ってくれ」

 俺はそう言って黒猫をじっと見つめた。
黒猫は興味なさそうに後ろ足で首の辺りを掻いている。

「覚悟を決めたか。ま、いいだろう。お前の骨なんか拾うのは御免だが、女を助けるのにミスリル銀が必要だと言うことは覚えておけよ」

 黒猫はそう言うと、俺の返事など待たずに窓からゆっくりと出ていった。

「ふう……」

 俺は無意識に大きなため息をついた。
まだ何もしていないのだが、自ら地獄行きの馬車に乗ったのだ。
今から緊張している訳にもいくまい。

 さて。
こうなった以上、彼らを連れていくわけにはいかない。
遠足の目的地が草原から地獄になったなどとどの口で言うのか。

 俺は灯りを付けると手紙を書いた。
用事ができた、先に出発する。一緒に冒険できて良かった、ありがとう。
そんな内容だ。

 これを受付に預けて先に出よう。
俺は肌着を着替えると支度をする。

 腰に剣を携え、オオムカデンダルにもらったバックパックを背負った。
バックパックにはスモールシールドをぶら下げてある。

 このバックパック、何気にとても使いやすい。
冒険者にとってありがたい代物だ。
ひょっとして同じものを作って売ったら一生遊んで暮らせるのではないかとさえ思う。

 ま、今の俺にそんな選択肢はないが。

 一通り準備を済ませると、手紙を手に下の階へと階段を下りた。

 当然真っ暗だ。誰もいない。
俺はカウンターの呼び鈴を鳴らした。

 ややあって主人が眠そうにあくびをしながら出てきた。

「どうなさいました」

「済まない。急に出掛けなくてはならなくなった」

 会計は先払いだ。
すでに済んでいる。

「これを朝一番で斡旋所の受付に渡してもらいたい。レオから仲間宛だと言ってくれればいい」

 主人は、『はあ、判りました』と言って手紙を受け取った。
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