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六九
俺はそうして宿屋を出た。
一体いま何時なのか。
朝にはまだかかりそうだ。
この国で銀山と言えばサボンだ。
ただし距離的に近いのは隣国の銀山フシュールである。
難易度的にはどっちも同じだろう。
銀山に巣食うモンスターは常に争っている。
山の主だけは実力的にそう頻繁には入れ替わらないが、どっちにしろ対策は立てにくい。
立てたところで役には立たんだろうが。
とにかく戦って戦って戦い抜いて、生き残るしかない。
その上で銀鉱を見付けてミスリル銀を掘る。
「自分で言っててまったく実感が湧かん……」
俺は一人歩きながらボヤいた。
そりゃそうだろう。
子供の戯言と変わらないのだから。
「道具が必要だな」
俺は思い出した。
ツルハシとか小さなピッケルとかバケツとか、とにかく採掘に必要な道具がない。
大荷物を持って移動する事を考えると、銀山に入山する直前に揃えたい。
他国に入ってしまうが最寄りの銀山が面倒が少なさそうだ。
と、なれば。
フシュール領の銀山か。
フシュールは、王国と帝国の間に存在する領地だ。
両国に比べれば小さかったが、銀山を始めとしていくつもの鉱山を抱えている。
ミスリル銀はその中の一つと言うわけだ。
そのお陰で領地は豊かだ。
大国の間にあって自治を守れているのにはそう言う理由があった。
夜が明けてきた。
俺はそれと同時にフシュール領に入った。
もっとも栄えている中心街を目指す。
まずは拠点探しだ。
適当な宿屋を探す。
それから道具が手に入りそうな店。
斡旋所が開くころに行き、情報も集めたい。
やることはたくさんあった。
宿屋に荷物を置いて店の当たりを付けると、俺はその足で斡旋所に向かった。
冒険者の為の斡旋所は大陸の全ての町に点在する。
国境さえまたいで、どこにでもあるのは斡旋所だけだ。
それゆえ、ただ仕事を斡旋するだけの存在とは異なっている。
輸入品も扱っているし、貿易関係の仕事も仕切っている。
情報の扱いから猫の捜索、各家庭の御用聞きまでとにかく手広い。
組合の力が強大すぎて、また、人々の暮らしに不可欠な存在になっていて、国さえも斡旋所に関しては存在を認めて干渉はほとんどしなかった。
だいたい国でさえ斡旋所に仕事を依頼することは珍しくない。
俺は扉の開いたばかりの斡旋所に飛び込んだ。
一番乗りである。
「銀山について情報が欲しい」
俺が受付でそう言うと、受付嬢が俺を二度見した。
「銀山……ですか?」
顔に『本気かお前』と書いてある。
本気だとも。
喜んでやる訳ではないが。
「一応、ご案内はしますが……銀山への入山をご希望されておいでですか?」
俺は、ああ、と答えた。
一体いま何時なのか。
朝にはまだかかりそうだ。
この国で銀山と言えばサボンだ。
ただし距離的に近いのは隣国の銀山フシュールである。
難易度的にはどっちも同じだろう。
銀山に巣食うモンスターは常に争っている。
山の主だけは実力的にそう頻繁には入れ替わらないが、どっちにしろ対策は立てにくい。
立てたところで役には立たんだろうが。
とにかく戦って戦って戦い抜いて、生き残るしかない。
その上で銀鉱を見付けてミスリル銀を掘る。
「自分で言っててまったく実感が湧かん……」
俺は一人歩きながらボヤいた。
そりゃそうだろう。
子供の戯言と変わらないのだから。
「道具が必要だな」
俺は思い出した。
ツルハシとか小さなピッケルとかバケツとか、とにかく採掘に必要な道具がない。
大荷物を持って移動する事を考えると、銀山に入山する直前に揃えたい。
他国に入ってしまうが最寄りの銀山が面倒が少なさそうだ。
と、なれば。
フシュール領の銀山か。
フシュールは、王国と帝国の間に存在する領地だ。
両国に比べれば小さかったが、銀山を始めとしていくつもの鉱山を抱えている。
ミスリル銀はその中の一つと言うわけだ。
そのお陰で領地は豊かだ。
大国の間にあって自治を守れているのにはそう言う理由があった。
夜が明けてきた。
俺はそれと同時にフシュール領に入った。
もっとも栄えている中心街を目指す。
まずは拠点探しだ。
適当な宿屋を探す。
それから道具が手に入りそうな店。
斡旋所が開くころに行き、情報も集めたい。
やることはたくさんあった。
宿屋に荷物を置いて店の当たりを付けると、俺はその足で斡旋所に向かった。
冒険者の為の斡旋所は大陸の全ての町に点在する。
国境さえまたいで、どこにでもあるのは斡旋所だけだ。
それゆえ、ただ仕事を斡旋するだけの存在とは異なっている。
輸入品も扱っているし、貿易関係の仕事も仕切っている。
情報の扱いから猫の捜索、各家庭の御用聞きまでとにかく手広い。
組合の力が強大すぎて、また、人々の暮らしに不可欠な存在になっていて、国さえも斡旋所に関しては存在を認めて干渉はほとんどしなかった。
だいたい国でさえ斡旋所に仕事を依頼することは珍しくない。
俺は扉の開いたばかりの斡旋所に飛び込んだ。
一番乗りである。
「銀山について情報が欲しい」
俺が受付でそう言うと、受付嬢が俺を二度見した。
「銀山……ですか?」
顔に『本気かお前』と書いてある。
本気だとも。
喜んでやる訳ではないが。
「一応、ご案内はしますが……銀山への入山をご希望されておいでですか?」
俺は、ああ、と答えた。
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