見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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八七

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 次第にコカトリスの動きは激しさを増した。
これ以上耐えるのは難しい。
俺は無理を承知でコカトリスの頭部へと打撃を加え続けた。

 ドカッ!ドカッ!ドカッ!

 しかし、硬い羽毛に守られたコカトリスは少しも怯む様子がない。

「うわっ!」

 コカトリスが大きくジャンプした。
反転しながら着地を繰り返す。
俺はとうとうコカトリスの背中から振り落とされた。

 ドウッ

 背中から地面に叩き落とされる。
一瞬呼吸が止まる。
だが苦しい中、俺は必死に起きあがる。
ほんの一秒でも止まったら死ぬ。

 !?

 かかとが何かに当たった。
マズい。

 肩越しに後ろを見た。
背中に山肌を背負っている。
つまり追い詰められたと言うことだ。

「ケーッ!」

 コカトリスが勝利を確信したか大きく鳴いた。
頭を大きく振り上げ、勢いをつけたくちばしで俺をついばみに掛かる。

「クッソ!」

 ガインッ!

 ひしゃげたスモールシールドで何とかくちばしを受け止めた。
だが、構わず二度三度とコカトリスはくちばしを振り下ろし続ける。

 ガインッ!

 ガインッ!

 ガインッ!

 次第にガード出来なくなってくる。
ガードする度に弾かれる腕を、防御のために構え直す。
そのスピードが追い付かなくなってくる。

「うおおおっ!」

 俺は雄叫びをあげて気合いを入れたが、これ以上は気合いだけではどうしようもない。

 !?

コカトリスが何かに気付いた。
攻撃が止まった。
どうした?

 コロンコロン

 足元に石ころが転がる。
なんだこりゃ。

 コロンコロン

 また一つ石ころが転がる。
ここは頂上だ。
崩落はない。

 とにかく俺はこの一瞬の隙を突いて壁際から脱出した。
コカトリスは何か見つけたように、どこかを凝視している。
俺はコカトリスの視線を追った。

 その見ている先にはナイーダがいた。

 ナイーダは石ころを両腕に抱えて立っていた。
まさか、俺を助けたのか。

 無茶だ。
俺でさえ手も足も出ないのだ。
石ころだけでどうにか出来る訳がない。

 よく見れば、ナイーダの足は震えていた。
これでナイーダを死なせたら俺は最悪だ。

 俺の中で何かのスイッチが入った。

 そうだ。
今まで強くなった事に安心して、どこかで慢心していた。

 必死さが足りない。
常に死を覚悟する、それは冒険者の心得だったはずだ。

 絶対にナイーダを死なせない。
俺は腹をくくった。

 コカトリスが走り出したら追い付けない。 
ナイーダに向かわせない事が肝心だ。
俺は遂に身に付けていたスモールシールドを外すと、それを力一杯コカトリスに投げつけた。

 ひしゃげたスモールシールドがコカトリスの頭に命中する。

 コカトリスが本能的に振り返った。

「行くぜこの野郎」

 俺は足に力を溜めて思い切り飛び出す。

 だんっ!

 コカトリスの体に体当たりを見舞う。
そして山の下に突き落とす。
これしかない。

 倒せなくとも一旦戦闘から離脱する。
その間に別ルートから下山する。
ナイーダが居ればそれは可能だ。
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