見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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一五九

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「では僕は彼女の両親の石化を見てこよう。治療できる事は間違いないが、レオの時と同じ方法とはいかんだろうからな」

 蜻蛉洲はそう言ってゆっくりと部屋から出て行った。

「どういうこと?」

 ナイーダが心細そうに俺の顔を見る。
そう言われても俺には判らない。
俺の場合は本当に簡単に治ったのだ。
飲み薬が主だった。

「ご両親は全身石化だし、自分で治療台に上ることもできないわ。注射針も受け付けないだろうし。だからその方法を考える必要があるんだと思うわ」

 令子が代わりに答えてくれた。
なるほど、そう言う事か。

「そんな事より、自分の背中の心配はいいのか?」

 オオムカデンダルが椅子に腰掛けたまま、くるくると回りながら言った。

 そうなのだ。
この椅子は回転する。
初めて見たときは驚いたが、慣れれば非常に便利で快適だ。

「私の事なんてどうでもいいわ。別にこれがあっても邪魔じゃないもの」

 ナイーダは木訥と答える。

「でもお前の背中のアザの為に両親は苦労したんだろ?お前は邪魔じゃなくても、周りの反応はお前を化物扱いしてうるさかった筈だ。違うか?」

「……そうだけど、気にしても仕方がないわ。洗ったって消える訳じゃなし、今までだって一人でも生きてこられた。周りが私を選ぶんじゃない。私が周りを選べばいいんだから」

 ナイーダの言葉に俺は不覚にも感心した。
どこも間違ってない。
全くもってその通りだ。

 この言葉が、まだ二十歳にも満たない少女の物だとは。
言葉とは裏腹に、相当な苦境があった事は疑いようがない。
この娘はやっぱり強い。

「それに、付き合うならあなた方の方が良いわ。見た目は化物みたいだけど、普通の人間の方が中身はよっぽど化物よ」

 辛辣だ。
だが、よく見ている。
彼らはけっして正義の味方ではないが、極悪人とも違う。
まあ、俺を化物にしたり、帝国軍に戦いを挑んだり、鉱山を勝手に占領して自分の領土にしたり……

 ……極悪人じゃないか。

「へへっ、結構。じゃあ化物同士仲良くしようぜ」

 オオムカデンダルが笑った。

「次はどうするの?」

 フィエステリアームが口をはさんだ。
相変わらず無表情で、どういう気持ちなのか判らない。

「そうねえ。偉い先生が欲しいって蜻蛉洲が言ってなかったか?」

「言ってた」

「じゃあ、その先生様を探さなきゃな」

「心当たりは?」

「ない」

「そっか」

 そうしてオオムカデンダルは俺の顔を見た。
来たな。

「レオ」

「拐ってこいと?」

「そう言うこった」

 やっぱり本気だったか。

「どうやって」

「自分で考えろよ。手段は問わない、全て任せる」

 これが上官と言うのだから部下はたまったものではない。
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