見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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一七〇

「とにかく詰所に行こう。仲間にも紹介しておかないとな」

 マズルはそう言って俺の背中を押した。
警備隊は町の治安を守る組織だ。
領主が治めるこの町には軍隊は無い。
従って兵士もいない。

 軍を維持するのも金がかかる。
戦争もなく、敵対する国もない平和な町に軍は無用と言うわけだ。
代わりと言ってはなんだが、その為に警備隊がある。
組織としては大きくないが、これで十分に事足りている。
軍を維持するのに比べれば経済的にも都合が良かったのだろう。

 帝国も自治を認めている。
半分は帝国領みたいなものだが、帝国のわがままにある程度従っていれば、潰される心配もない。
実際、ここの領主は上手くやっている。

 そうこうするうちに、町の一番賑やかなところに出た。
店が多く立ち並び、人通りも多い。

「こっちだ」

 手招きするマズルに付いていくと、通りに面した平屋の建物の中に入った。
中は殺風景だ。
窓があって入り口があって、でかいテーブルと椅子が数脚。
ほぼ、それだけだ。

 まあ、仕事場なんてこんなものだろう。
だいたい警備隊は外を周ることの方が多いはずだ。

「あ、隊長」

 奥に続く通路から出てきた男がマズルを見て言った。

「みんな居るか?」

「いえ、今は自分だけです」

「そうか、紹介しよう。えー……なんて言うんだ?」

 マズルは気まずそうに俺の顔を見た。

「……レオだ。本職は冒険者、剣士だ。マズルに強引に勧誘されて賢者様の護衛を手伝うことになった。よろしく頼む」

 俺は仕方なく自己紹介を兼ねて挨拶をした。
本当は賢者誘拐の為だなどとは口が裂けても言えないが。

「そうだったのか、それは災難だったな。俺はヒスタ、よろしく」

「コラ、災難とはどういう意味だ」

「隊長ゴネるとしぶといですもん。でもこう見えてかなり腕は立つんだぜ。ブラックナイト級の試験に合格したのにそれを蹴って警備隊に入ったくらいだからな」

 そうなのか。
ブラックナイト級とは大したものだ。
以前の俺なら驚きと羨望の眼差しで見ただろう。
……とてもそうは見えないが。

「それに人を見る目もピカ一だ。隊長が勧誘したなら反対する者はいないよ」

 ずいぶんと人望が厚いんだな。
とてもそうは見えないが。

「……あの、さっきは助けてもらってお礼も言えてなかった。ありがとう。俺はスルダンだ」

 普通の男がバツが悪そうに自己紹介をした。

「いや、気にしなくていい。結果的に余計な真似だったみたいだ」

 俺はそう言うとスルダンの差し出した手を握った。

「他はおいおい紹介しよう」

 マズルはそう言って上座に座った。
隊長席か。
俺たちはそこから順に座った。
もちろん俺が一番末席だ。

「さて、レオの為にもう一度説明しよう」
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