見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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一七五

「……ただの警備隊員だと?」

 賢者サルバスは訝しそうに俺の顔を覗きこむ。
なんだ。
なにか見通しているのか。
俺は内心、心を見透かされはしまいかとドギマギした。

「そうですが、なにか?」

 俺はとぼける。
他に方法などない。
下手に嘘に嘘を塗り固めるような愚行は犯したくない。

 なるべく饒舌にならないように。
言葉は少ない方がいい。
手がかりは与えてはいけない。

「ワシには人には思われなんだが」

 サルバスが自らの髭をいじりながら言う。
俺はマズルの顔を見た。
マズルも俺の顔を見ていたが、疑っている様子はない。

「賢者様、この男は凄い男です。腕もたつが胆も太い。常人離れしています。だから私が無理を承知で口説き落としたのです」

 マズルが助け船を出した。
本人は助け船だなどとは思っていまいが。

「ほお」

 サルバスは興味深そうに話の先を促した。
マズルは酒場で起きたことをそのまま話して聞かせていた。
ひょっとしてこのじいさん、普段退屈しているのではないだろうな。
今回の件もただの退屈しのぎなのかもしれない。
そんな気がしてきた。

「それほどまでに頼もしいとは、これならワシを狙う賊が居ってもなんの心配もいらぬな」

 そう言ってサルバスは、カカカカカと笑った。

 俺たちは予定のコースを外れていた。
サルバスが詰所に行きたくないとゴネたので仕方がない。

「で、どうなさるおつもりですか?」

 マズルが尋ねた。

「ミスリル銀山だ」

 サルバスはさも当然と言わんばかりに即答した。

「ミ……ミスリル銀山」

 マズルは動揺していた。
無理もない。
俺もついこの前までは同じ反応だったのだ。

「あんなモンスターの巣窟になぜ?」

「そこが彼奴らの総本山らしいからの」

 確かにその通りだ。
いったいどこまで知っているのか。
いや、おそらく将軍やソル皇子本人から見聞きした事は全て知っている筈だ。

 もしかしたらそれ以上の事も知っているのかもしれない。
なにせ賢者だ。
俺たちの常識で考えない方が良いだろう。

 ミスリル銀山まではそれなりに距離はある。
だが、ただの一本道だ。
ゆっくりでも歩いていればそのうち着く。
問題はどこで拐うか、どこで敵が現れるのかだ。

 俺たちは特に会話もなく、その後はただひたすらに歩いた。

 やがて南の町の入り口付近に差し掛かる。
町を出れば、後はミスリル銀山まで何もない。
途中まではただの街道だ。

その街道はミスリル銀山の手前で大きくカーブし、次の町へと続いている。
そこで街道を外れ、ミスリル銀山のふもとへ向かう。
そこからは山道だ。

 俺にしてみれば昨日来た道である。
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