見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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一九六

 ミスリル銀山に登る。
これがどういう意味か。
数ヵ月前の俺には良く判っていた。

 自殺行為だ。
モンスターがひしめく魔物の巣窟。
雑魚は野犬から、大物はそれこそ普段はお目に掛かれないグリフォンやマンティコアのような物まで、何でもありだ。

 噂ではサイクロプスのような巨人族や、龍族であるワイバーンが出たこともあると言う。
まあ、百年前とか二百年前の事らしいから、おとぎ話と言う奴も居る。
しかし、実際にここへ来てみて思ったことは『本当だとしても不思議ではない』だった。

 そんな魔の山に、俺たち『ネオジョルト』は拠点を構えた。
オオムカデンダルによれば『出張所』のような物らしい。
そんな可愛いものではあるまい。

 途中で何度かモンスターに遭遇したが、大した相手ではなかった。
そのうち巨人族とか本当に出たらどうするのか。
気軽に外出しにくいだろうな、とは思う。

 歩き続けてようやくアジトへ辿り着いた。
馬に乗っているサルバスはともかく、歩き詰めのマズルはさすがだった。
少しも疲れた様子はない。

「こっちです」

 俺は入り口を案内した。
秘密結社と言いながら、入り口は堂々としていた。
隠し扉などではない。
立派な玄関を有している。
誰もこんな所まで来れないとタカを括っているのだろう。
実にオオムカデンダルらしい。

「これは……なんともはや」

 サルバスは入り口を見て苦笑いした。
感心したのか呆れたのか、理由は聞かないでおこう。

「開かないぜ?」

 マズルが扉の前で俺を見た。
俺は黙ってマズルの前に出た。
扉に近付く。

 ウィーン

 静かな音をわずかに発てて、扉は滑るように開いた。

「おわ……ッ!か、勝手に……」

 マズルが後ろへ後ずさる。

「俺たちじゃないと開かない」

「お前たちが近付いたら勝手に開くのか?」

「どうもそうらしい。俺も理屈は判らん」

 俺は正直に答えた。
俺にも本当に判らない。
とにかく彼らは魔法使いのようなのだ。
だが、魔法ではない。
彼らは『超科学』と呼んでいた。
超科学の意味も判らないのだから、理屈など俺に判ろう筈もない。

 サルバスは馬を適当に繋ぎ止めた。
こんな所に繋いでおいたら、出てきた時には骨だけになっていそうな気もする。
まあ、別にいいか。

 俺は二人を中に案内した。
いつもの大広間で良いだろう。
たぶんそこにみんな居る筈だ。

「よお、思ったより早く仕事が終わったじゃないか」

 広間に入るとオオムカデンダルが声を掛けてきた。
いつもの自分の席に着いたまま、片手をあげている。

「ヴァンパイアには時間が掛かっていたけどなあ」

 そして嫌みも忘れない。
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