見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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二〇二

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 何か言いたそうな顔をしているな。

「何か?」

「お前はなんと言うか……悪くはないんだが……こう、今一つ…… 」

 俺の問いにオオムカデンダルは苦言を呈した。

「ハッキリ言え」

「お前らの基準で言うと何だっけ?ナントカナイト?弱くは無いんだろうが……センスと言うか……いや、違うな」

 オオムカデンダル自身も言い淀んでいる。
俺が弱いとか何とか言いたいのだろう。
不本意だがアンタらと比べられたらたまらない。
誰でも弱く思えるだろうさ。

「アンタの言いたいことは判るが、こちらは人間基準での話をしている」

「んー、今やもうお前は弱くはないんだ。ただ……」

「ただ、何だ?」

「センスがない」

 言ってくれるな。

「センス?具体的には」

「体の使い方でしょ?」

 そばからフィエステリアームが口を挟んだ。

「そう、それ!」

 オオムカデンダルも我が意を得たりと膝を打った。

「お前は冒険者なんだろ?だから戦闘技術や知識はそれなりの物があると思うんだが……お前自身の特徴や体の使い方が今一つなんだよな」

 判るような判らんような。
つまり新しくなったこの体を使いこなせていないと言いたいのか?

「それもそうなんだが、動きが立体的じゃないと言うかだな……あー、何て言えば良いんだ!」

 そんな事はこっちが聞きたい。
いちゃもん付けてるのはアンタだろう。

「君たちには君たちのセオリーと言う物があるのだろう。けどそれは僕たちから見れば古い戦い方なんだよ。もっと高い次元で戦闘を見た方がいい。オオムカデンダルはそれが言いたいんだと思う」

 なるほど。
少しは判りやすい。
具体的にどうすれば良いのかはサッパリだが。

「オオムカデンダルは専門分野では天才なんだけどね。自分が判るもんだから他人が『判らない』前提で説明するのは苦手なんだよ」

 つまり、他人の『判らない』と言う感覚が判らないと言うことか。
天才にも悩みはあると言う見本だが、ややこしいな。
ただ、変人過ぎて天才とは思えないと言うのも付け加えて欲しい所だ。

「とにかく」

 オオムカデンダルが話を元に戻した。
自分の話題などどうでも良いのだろう。

「せっかく蜻蛉洲が改造してくれたんだ。もっと使いこなしてくれないと困る」

 そうは言われてもな。
訓練しろと言うのか。

「判った。訓練はしよう」

 俺は自己鍛練を約束した。

「それもそうなんだが」

 なんだ。
まだあるのか。

「今から修行をつけてやる」

 修行?
滝にでも打たれるのか。
何故だか水場は心が踊る。
クラゲだからか。

「お前に体の使い方と言う物を教えてやろう」

 オオムカデンダルがニヤリと笑う。 
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