見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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二三四

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「おおおぉぉぉ」

 サイクロプスがおかしな唸り声をあげる。
地の底から聞こえて来るような、気味の悪い声だ。

 俺はまた後ずさりしそうになって踏みとどまった。
下がるとオオムカデンダルがうるさい。

「どの道やるしかないんだ……!」

 俺はサイクロプスに向かって構えた。

「オオオオオオオオッ!」

 サイクロプスが俺を敵だと認識した。
雄叫びと共に巨大な拳骨が振り下ろされる。
俺は真横に跳んでそれをかわした。

 ドシイィン!

 拳が炸裂した地面が、爆発したように大量の土砂を巻き上げる。
なんて馬鹿力だ。
見ていて背筋が寒くなる。

「ウオオオオッ!」

 サイクロプスは手当たり次第に俺を攻撃した。
かわすのは訳ないが、この体格差は如何ともしがたい。

 第一、リーチが違う。
懐が深すぎて中に入り込めない。

「だったら……」

 俺は触手を再び伸ばした。

「ううぅぅぅ」

 サイクロプスは一歩下がった。
そして、その辺に生えている大木を易々と引き抜いた。

「警戒しているのか……」

 見た目に知能は低そうだが、どうもそうでは無いらしい。
相手の武器を見てどう言う物か察知しているように見えた。
サイクロプスの闘争本能なのかもしれない。

 ひゅっ!

 俺は触手を振り上げて試しに攻撃してみた。

 ズシンッ!

 意外なほど身軽に、サイクロプスは触手の範囲から飛び退いた。
そして手にした大木で俺の触手を受け止めた。

 バシィッ!

 触手の当たった場所がえぐれた。
そこから白煙が上がり、その部分の樹皮がボロボロと剥がれ落ちる。
おそらく毒のせいだ。

 サイクロプスはその様子を大きな隻眼で冷静に見ている。
やはり、高い知能を有している。
ウドの大木などではない。
そして、高い戦闘技術と戦いの勘を持っている。

「つまり戦士と言うわけか……」

 これは厄介な相手だと思った。
こんなのを召喚できるのか。
これ以上、妙なのを呼ばれては堪ったものではない。
早く決着をつけなければ。

 その間にもバッタはどんどん村へと広がっている。
この状況は如何にも不味かった。

 ザッ!

 俺は木に向かって地面を蹴った。
そして更に蹴る。
木から木に三角飛びで飛び移る。
死角を突くのだ。
あの隻眼では視野は広くあるまい。

「ううぅぅぅ」

 サイクロプスが唸った。
イライラしているのか。

「ウオオオオッ!」

 突然、堰を切ったようにサイクロプスが吼えた。
手にした大木を真一文字に薙ぎ払う。

 バキバキバキバキッ!

 辺りの木を一斉に叩き折った。

「うおおおっ!」

 俺は足元の木をへし折られ、地上に転落する。

 どかっ! 

 背中を強く打って、そのまま二度ほどバウンドした。

「クソ……この馬鹿力が……」

 頭を起こした瞬間、目の前に巨大な拳が迫っているのが見えた。
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