見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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四一七

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 なんだ。
何か珍しい物なのか。

「これはひょっとして……ブラッドサファイアじゃないのか?」

 サルバスは唸るように言った。
ブラッドサファイア?
なんだそれは。

「滅多にお目にかかれない特別なサファイアじゃ」

 サファイアって青いんじゃないのか。
真っ赤だぞ。
俺はキロの姉が手にぶら下げたネックレスの宝石を、じっと見つめた。

「多少色の付いた宝石と言うのはあるが、見ろ。血のように真っ赤だ。これは普通のサファイアではないのじゃ」

 色違いだから高価だと言うのか。
しかしいくら高価とは言え、その程度で賢者であるサルバスが取り乱すのもおかしな話ではある。

「バカタレ。これはドラゴンの血が混じって、普通のサファイアになる筈だった物が変化した物じゃ」

 ドラゴンの血が?
どうもピンと来ない。
ドラゴンゆかりの物だから高価だと?
どう見てもただの赤い宝石にしか見えんが。
それに本当にドラゴン由来の物かどうかも確認のしようがない。
偽物かもしれんじゃないか。

「……ふん。これだから魔力の微細な者は」

 サルバスが呆れたように吐き捨てた。
確かに魔法は苦手だが、スネアだけは使えるぞ。
あまり使う場面は無いが。

「この滲み出る魔力が判らんか。ほとばしるような大量放出では無いのにもかかわらず、じんわりと、しかし強力に滲み出るこの圧倒的な魔力の存在感。これは十中八九ブラッドサファイアじゃ」

 サルバスが断定するように言った。
じゃあ仮に、これがそのブラッドサファイアだったとして、いったいどんな価値があると言うのか。

「金額ではいくらになるか想像もつかんわい。金貨五十枚なぞ子供の小遣いじゃ。国が買えるじゃろうよ」

 そんなにか。
俺は急にこのネックレスが神々しく見えてきた。

「俗物め。ただ高価なだけならワシもそこまで興味は無いわい。珍しい物である事には変わらんが」

 黒猫はそう言いつつも、別の何かをじっと見つめている。
なんだ。
発言と行動が合ってないぞ。

「これで何故マイヤードとか言う成金裏組織が、この宝箱を欲しがっているのか判ったわい」

 高価なだけでは無いと言うなら、もっと説明してくれなければ判らん。

「このブラッドサファイアにはの、退魔の力があるからじゃ」

 退魔の力?

「さよう。つまりモンスター全般に対して、力を無効化したり退けたりする作用がある。なんと言ってもドラゴンだからの。そこいらのモンスターなぞ裸足で逃げ出すわい。そう言う意味ではミスリル銀の反対の作用を持っているとも言えるな」

 ミスリル銀の反対か。
なるほど、判りやすい。
モンスターに怯えて暮らす人々にとっては、喉から手が出るほど欲しいに違いない。
だが、何故それをマイヤードが欲しがるのか。
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