見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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四二六

 しばらくボードを滑らせる。
やがてミスリル銀山が見えてくる。
上からだと良く判るが、この山は意外と大きい。
そして、至るところにたくさんのモンスターが居る事が一目で確認できる。
例えば眼下を悠々と歩くオウルベアの家族と思われる群れが確認できた。
よくこんな場所に拠点を構えようと考えたものだ。
今更ながらに驚く。

 その山頂にあるネオジョルトの拠点。
一見するとただの山だが、一部建造物がむき出しになっている。
だが、内部はほとんど我々の拠点だ。
この建築技術も、この世界の者にとっては驚愕するしかない事実である。

 すたっ

 俺はボードから飛び降りると、拠点の中へと入っていった。
オオムカデンダルの居そうな場所。
たぶん広間だろう。
俺はまっすぐ広間へ向かった。

 居た。
予想通り広間にはカルタス、オレコ、キロたち兄弟、その姉と勢揃いしていた。
彼らが立っている正面には巨大な長テーブルがあり、そこにオオムカデンダルたち幹部が座っていた。

 全員集合は珍しい。
それだけの理由があるのか。
俺は例のブラッドサファイアを思い出した。

「帰ったか」

 オオムカデンダルが俺を見て言った。

「あんまり重大な情報は無いけどな」

 俺はため息混じりにそう言うと、肩をすくめた。

「そんな事無いだろ」

 オオムカデンダルの言葉に俺の方が首をかしげる。

「マイヤードが恐れるモンスター。スラッグがバッケスで実はもう死んでいるとか、銀猫がモンスターだとか、盛りだくさんじゃないか」

 やはりもう知っているのか。
だがオオムカデンダルの表情から察するに、これらの情報にたいした関心が無い事はすぐに想像がつく。
予想できていたのか、或いは知らなかったにせよ、おそらくどうでも良い事なのだろう。

 庭で野良猫同士が喧嘩をしている、ああ、そうなのか。
その程度の出来事なのだ。

「……信じられんが間違いない。ベクターメタルだ」

 側で何かを見ていた蜻蛉洲が呟いた。
ベクターメタルとは?

「やっぱりそうか」

 オオムカデンダルが腕組みをして目を閉じた。
こんなオオムカデンダルを見るのは初めてかもしれない。
いったい何事か。

 この緊張感とは無関係に、ナノとピコは互いにキャッキャとふざけ合っている。
物凄いギャップである。
だが幹部の誰もそれを怒鳴ったりしないのも、逆に物凄いギャップであった。
悪の秘密結社とはこんなイメージだったか?

「これはな、俺たちの元居た世界の金属だ」

 オオムカデンダルが語り出した。
そして、サラリと凄い事を言っている。
だがキロたちはおろか、カルタスやオレコでさえもピンと来てはいないようだった。

「ベクターメタル。俺たちの邪魔をした最大の敵が身に付けていた金属だ」
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