見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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四三一

 コイツ。
自分が路傍の石と言われたと受け止めたのか。
つまり、俺たちに反目していると自供した訳だ。

「……お前、俺たちと敵対するつもりか?理由は思い当たらんが、お前が最初に言ったんだぜ。お互いに敵対しない、干渉しないとな」

 銀猫はハッとなった。

「ち、違う……!これはッ……俺じゃないんだッ!」

 銀猫は突然苦しそうに顔を歪めた。
何を言っているんだ。
俺は眉をひそめた。

「やめろ!俺に付きまとうなッ!」

 銀猫が叫ぶ。
付きまとうなと言われるほど付きまとったつもりもないが。

「……お前、さっきから何を言っている」

 俺は銀猫の顔を覗きこむ。
銀猫は苦悶の表情を浮かべている。
額に脂汗が伝う。
おかしい。
あまりにも様子が変だ。

「おい、どうした。しっかりしろ」

 オレコもカルタスも、さすがに異変に気が付いた。
二人とも警戒してか、立ち上がっていた。

「く……ッ!うぅッ!」

 苦しげに銀猫がテーブルに突っ伏した。
肩がビクッ、ビクッと震えている。

「強情だな君は、ここまで抵抗するかね」

 突然、銀猫とは違う声がした。
俺たちはギョッとした。

「うる……さいっ!もう、貴様の言いなりにはならん!」

 今度は銀猫が強い口調で言った。
どちらも銀猫がしゃべっているのか。

「もう少し付き合ってもらわなければ困るのだが……」

 また銀猫の声ではない声がそう言った。

「……貴様、銀猫ではないな?誰だ」

 俺は銀猫に向けて言った。
だが、銀猫には本人以外の何かが居る。
そう感じる。

「ふふふ、バレてしまったね。まあ、こんだけ賑やかにされれば馬鹿でも気づくか。残念だ」

 その声は、ハッキリと俺の問いに反応して答えた。
この声、聞き覚えがあるぞ。
どこだったか。

「まさか、取り憑いているの?」

 オレコが気づいた。

「と、取り憑く!?ゆ、幽霊なのか!?」

 カルタスが情けない声を出した。
モンスター専門の傭兵が今さら幽霊を怖がってどうするんだ。

「お前な!幽霊は剣じゃ斬れねえんだぞ!」

 知ってるよ。
それが問題なのか。

「僕をスペクター辺りと同列に扱わないでもらいたいね。気分が悪い」

 銀猫が顔を上げる。
しかし、銀猫はしゃべってなどいなかった。
だったら、いったい誰が話しているのか。

 銀猫が意を決したように、自らの衣服を引っ張り降ろす。
肩口から大きく銀猫の肌が露出する。

「見るがいい」

 そう言った銀猫の肩から胸にかけて、人の顔があった。

「これは……ッ!」

 カルタスが驚いて後ろへ飛び退いた。
俺は知っているぞ、コイツの事を。

「……やあ、久しぶり」

「お前は……!」

 俺は意外な顔に驚いた。
しかし、すぐに合点がいった。
そこにはヴァンパイアの顔があった。
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