見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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四五七

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「待ちたまえ、レオ」

 前に出ようとする俺を、蜻蛉洲が止める。

「何故だ」

「銀猫がやると言っている。任せるに相応しいか見極めるチャンスでもある」

 蜻蛉洲はどこまでも冷静だった。
俺は大人しく蜻蛉洲に従った。

「うおおおお!」

 雄叫びをあげて男たちが銀猫に襲い掛かる。

「は!」

 銀猫はそれを紙一重でかわしつつ、急所に肘や蹴りを見舞っていく。

「ぐぅ……!」

 みぞおち、脳天、金的、延髄。
どれも一発入ったら動けなくなる。
しかし、それでも銀猫はとどめを刺さなかった。

「……どうした?とどめは刺さないのかね?」

 蜻蛉洲が銀猫にたずねる。

「あんまり意味がないでしょう。蟻など殺しても殺さなくてもどっちでもいい」

「……だから殺さないと?」

「ネオジョルトはこの街を押さえたいんでしょう?コイツらも今後は我らが傘下です。殺すより言う事を聞かせた方がいい」

 銀猫は気後れする事無く、蜻蛉洲に言った。
度胸も座っているな。

「……なるほど。よく判った」

 蜻蛉洲はそう言って、わずかに笑った。

「まだ異議のある者は居るか!」

 銀猫が大きな声で言った。
野次馬たちは一言も発せず黙った。

「異議無しだな」

 銀猫は辺りを見渡した。

「ちょっと待ってくれ」

 群衆の中から男の声がした。

「なんだ。まだ異議のある者が居るのか」

 銀猫が声の主を探す。

「俺だ」

 群衆の中から現れた男を見て、銀猫がほお、と言った。

「マイヤードじゃないか」

 銀猫がその男の名前を口にする。

「今度はお前が相手か?」

「……いや、良い」

 マイヤードは銀猫との戦闘を避けた。
マイヤードの実力では銀猫には勝てない。

「本当にお前が仕切るのか。その男たちの傘下に入ったのか?」

「そうだ。ネオジョルトは今後世界を獲りに行く。我々はその傘下に加わったのだ。この地区は俺が担当だ。異論はいつでも受け付けるぞ」

 マイヤードは苦虫を噛み潰したように銀猫を見たが、とても事を構えるような気概は無かった。

「……じゃあ、俺たちはどうなる?追放か?」

「足を洗ってこの地区から出て行くか、我らの傘下に収まるか。二つに一つだ」

「……嫌だと言ったら?」

「その時は力ずくだ。俺たちの世界はそう言う世界だっただろう?」

 銀猫は不敵に微笑んだ。

「……これだけは言っておく。俺たちは傘下には入らねえ。だが……協力はしよう」

 銀猫は振り返って蜻蛉洲を見た。

「ふ。良いだろう。これまで通りで構わん」

 意外なほどあっさりと、蜻蛉洲はそれを許した。
人間の自由意思を尊重するという事なのか。

 オオムカデンダルの言っていた事はこういう事なのか。
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