見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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四六二

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「く……っ!何をしているっ!かかれ!コイツを捕まえんかあっ!」

 憲兵隊長は地面に座り込んだまま、隊員たちに命令する。
しかし、あれだけ斬りつけても全くの無傷なのだ。
これ以上どうせよと言うのか。
隊員たちは互いの顔を見合わせながら、困惑していた。

「あまり趣味では無いが、一応僕の力を少し見せておくか。少しは君たちの認識が変わる可能性もあるだろう」

 オニヤンマイザーはそう言うと、右手をギュッと握りしめて拳を作った。

「な、何の真似だ!」

 憲兵隊長が、危険を察知して後ずさる。
やめろ、それ以上は必要ない。
俺はオニヤンマイザーを止めようとした。

「ふん!」

 オニヤンマイザーが憲兵隊長めがけてパンチを繰り出した。

 ドゴオッ!

 凄まじい炸裂音がして、粉塵が舞い上がる。

「ひ……ひいいっ!」

 隊長が情けない声を上げて白目をむいた。
憲兵隊長の脚の間に打ち込まれたオニヤンマイザーのパンチは、硬い地面をえぐって大きな穴を開けていた。
憲兵隊員たちも、驚いてその場で固まっている。

「このくらいで理解してもらえると助かるが、これは本気ではない。その気になれば城も粉砕してみせる」

 オニヤンマイザーはそう言って、自らの拳に付いた砂を手で払った。
見た目通り神経質だな。

「もう一度だけ言う。僕は同じことを何度も言うのは嫌いなんだ。だから良く聞きたまえ。今後この地区は我々ネオジョルトが管理する。余計な詮索は無用だ。帝国はこれまで何もしていなかったのだから文句を言う権利など無いと自覚せよ」

 まるで独立を宣言するように、オニヤンマイザーは高らかに言った。
いや、これは事実上の独立宣言なのかもしれない。

 ネオジョルトは遂に始めたのだ。
これはそのホンの第一歩なのだ。
帝国の領土をホンの一部とは言え、奪ったのだ。

 これがどういう意味を持つか、この場の全員が理解していた。

 戦争が始まる。

 しかし、群衆の表情は何故か絶望よりも希望の方が色濃く見えた。
いや、俺の気のせいかもしれない。
だが確かにそう見えるのだ。

 これは虐げられてきた人たちの希望なのかもしれないなと思った。
どうせこのまま苦しいまま生きていくのなら、いっそ戦争でも起これば良いのに。
そう思っていた人たちの答えなのかもしれなかった。

「くそっ!貴様、覚えたからな!必ずこの借りは返してやるぞ!帝国に楯突いたんだ、後悔するなよ!」

 憲兵隊長は震える足に何とか言う事を聞かせて立ち上がった。
よく頑張ったな。
俺は生まれたての子馬を見守る気持ちで憲兵隊長を見届けた。
例えそれが情けない捨て台詞だとしても。
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