見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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四七〇

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 誰がこんな事を考え付くのか。
いや、無理だろう。
だいたい大量に金を持っていなければ出来ない事だし、それだけ金があれば普通はそれで満足する。
発行元よりも金を保有しているのに、それ以上どうこうしよう等とは誰も思わない筈だ。

 彼ら以外は。

 俺は判ったような判らないような、それでも何だかとんでもない事が起きようとしている事だけは判った。

「……その為に両替所を作ったのか?」

「そうだけど?」

 そうなのか。

「アンタがこれを全部考えたのか?」

「まあ、考えたと言うか……思い付いたのは俺だが、全ての計画を具体的に形にしたのは蜻蛉洲だ」

 蜻蛉洲か。
この綿密さは、確かに蜻蛉洲の感じはする。
一方、この人を食ったような大胆さはオオムカデンダルの感じだ。
俺は初めて合点がいった。

「蜻蛉洲は完璧だ。奴が計画を立てたんなら、まず間違いはない」

 オオムカデンダルが蜻蛉洲を認めるような発言をした。
いつもからかっているのに、やはり信頼しているのか。

「アイツの計画は細かいもんなー、性格出てるよ。友達少ないだろアレは」

 オオムカデンダルはそう言って笑った。
どうも俺の勘違いだったらしい。

「友達が少なくて悪かったな。友達など人生に必要か?」

 背後から聞きなれた声がした。
この声は蜻蛉洲だ。
笑わなくて良かった。
俺は振り返らずに、黙って立っていた。

「お、どうだ?上手く行っているのか?」

 オオムカデンダルが悪びれもせずに、蜻蛉洲に尋ねた。

「当たり前だろ。全て計画通りだ」

 蜻蛉洲は相変わらずの無表情で書類をオオムカデンダルに渡した。

「やる事は山積みだ。貴様も遊んでいる場合ではない」

「へえへえ。やりますとも」

 オオムカデンダルは適当に返事をしながら書類に視線を落とした。
蜻蛉洲は完成品のジョルターを手に取って眺めた。

「……まあまあだな」

 相変わらず厳しいな。

「十ジョルター、百ジョルター、五百ジョルターか」

 蜻蛉洲が数種類のコインを見比べる。
十、百、五百。
三種類か。
それぞれ銅貨、銀貨、金貨と言った所か。

「一ジョルターなど使い道がない。最低単位は十ジョルターで十分だ。五百よりも上は新たに紙幣を作る」

 しへい? 

「紙だ。紙に印刷した物を金として使う」

 紙?
本当に大丈夫なのか?
そんな物を本当に人々が欲しがるのか?

「大丈夫だ。価値さえあれば、人はやがて欲しがるようになる」

 蜻蛉洲はたいして興味も無さそうに答えた。
本当か?
不安だ。

「日用品も作るぞ。しかもこんな世界の粗悪品とは比べ物にならん上等な奴だ。あんまり便利なものを作っても馴染みがないと普及しにくいからな。同じ物の高級品質だ」

 オオムカデンダルが言う。
こんな世界で悪かったな。
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