見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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四七一

 しかし、何故日用品なんだ?
高級品とは言っているが、それなら金持ち相手の商売の方が利益があるだろう。

「まあ、そんな一面も確かにあるがね」

 オオムカデンダルが書類を見ながら言う。

「この国において、上流階級と呼ばれる人間がどのくらい居るか知っているか?」

 蜻蛉洲が会話を引き継いだ。

「いや、判らん。二割くらいか?」

 蜻蛉洲が鼻で笑った。

「とんでもない。一パーセント以下だ」

 一パーセント。
そんなに少ないのか。

「ほとんどの富を、ほんの一パーセント以下の人間が所有している。その下に六割の中流者。それ以外は全て貧民だ」

 知らなかった。
しかし言われてみれば、確かに貧民は多い。
線引きは曖昧だが、中流と呼ばれる人間でも多くはその日暮らしだ。

「帝国はこれを長年放って置いたわけだ。これで特に問題が起きないから、これで良いのだと」

 そうなんだろうな。
人々でさえ、これが当たり前だと思っている。

「一パーセントの人間相手でも、金だけは持っているのだ。彼らに向かって商売すれば、それなりに利益は出るだろうが、我々の目的は金儲けではない」

 蜻蛉洲が鋭く俺を見た。
じゃあ何なんだ?
世界征服は判っているが、日用品を売るのは金儲けじゃないのか。
俺は心の中で首をかしげた。

「いくら国内の富の大部分を握っているとは言え、その数はわずか一パーセントだ。これを勢力と見るならば相手にする価値は無い」

 勢力として見る?

「結局世界を作ってるのは、大多数の庶民なんだよ。文化も大半は庶民の文化だ。時々金持ちから生まれるムーブメントもあるが、庶民には手が出ない。判るか?世界を獲りたいなら俺たちが向かうのは庶民の方だ」

 そう言いながら、オオムカデンダルは読み終えた書類をテーブルに投げて俺を見た。

「俺たちは庶民の生活水準を向上させる。そうすれば日常の意識も同時に向上する。無意識に自分たちこそメジャーなのだとどこかで思い始めるのさ。上流階級も自分たちのムーブメントに追従し始めるからな」

 意識改革か。

「その為に『ネオジョルトは自分たちに必要だ』と意識させる。そして根付かせる。ここまで来れば侵略は九割完成だ。俺たちが活動を止めたら、庶民の生活は逆戻りだからな。俺たちの存在を支持するだろう」

 そんな事を考えていたのか。
暴力や権力を使わない侵略。
今までこの世界には無かったやり方だ。
それも彼らの技術力があって可能な唯一のやり方だ。

「庶民は敵に回しては駄目だ。暴力で挑むべき相手は敵対者だ」

 敵対者。

「つまり帝国だよ。いや、他にも王国やその他の諸国、現時点での支配者は全て俺たちの敵だ」

「!?」

 帝国以外もか!
世界征服なのだから、それはそうなのだろうが。
やはり本気だ。
俺は改めてオオムカデンダルの本気に衝撃を受けた。
雷に撃たれたようだ。

 痺れるとはこう言う事なのだろう。
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