見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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四九三

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 村を二つも犠牲にする。
軍でもそこまでやるかどうか疑問だ。

「お陰でと言うべきか、ワームは退治された。村二つで済むなら安い物だと言う意見も当然あったがの。しかし、これが世に知れたら大変な騒ぎになるであろうな」

 それを俺たちに話すのもどうかと思うが。
もしかして、バーデンを倒す事を俺たちに期待しているのか。

「メルドルムも、マザもお主たちに一度敗れておる。ネオジョルト討伐軍としてはバーデンを代わりに立てるつもりのようじゃ。魔導士もまだ一人残っておる。前の二人がレイスとリッチだった事は余も聞いた。ならば残りの一人もどうせ人間ではあるまい」

「そこまで判ってても、帝国はそれで良いのか?」

 オオムカデンダルが言った。

「余は良くないと思うておるぞ。だが、実権は皇帝陛下と、兄上が握っておる。余に出来る事は多くはない。だからお前たちに話しておるのじゃ」

「俺たちは世界征服を企む秘密結社だ。そこの所、ちゃんと判ってるのか?」

「判っておるぞ」

 オオムカデンダルとソル皇子の会話は、内容と見た目のギャップが激しい。
二人とも浮世離れし過ぎだ。

「俺たちがバーデンを倒す事を条件に、帝国を明け渡せと言うかも知れんぞ?」

「ほっほっほっほっ。嘘をつくな。お前はそんな事は言わぬよ」

「……ほう。なぜ?」

「与えられた物など要らぬのじゃろ?自分で勝ち取らねば気が済むまい。お前はそう言う男と余は見ておるが?」

 オオムカデンダルが、ちっ!と舌打ちをした。

「皇族にしておくには惜しいなアンタ。人をよく見ている」

「褒めていると受け取っておこうかの。人を見るのも皇子の務めなれば」

 ソル皇子もオオムカデンダルも、互いにそう言って少し笑った。

「良いだろう。ただし、それはバーデンがうちの縄張りに手を出してきたらと言う条件付きだ。わざわざ追っかけ回してまで倒したりはしない。俺たちは帝国に雇われた訳では無いからな」

「それで構わぬ。ただ、バーデンは強いぞ。勝てるか?」

 ソル皇子が試すようにオオムカデンダルに尋ねた。

「そうだな。レオなら良い線行くんじゃないの?」

 オオムカデンダルが俺を横目で見る。
良い線か。
オオムカデンダルの評価では五分だと見ているのが判る。

「……なるほどの。ではお前はどうじゃ?」

 ソル皇子がオオムカデンダル本人ならばどうかと尋ねた。

「負ける訳ないだろ。瞬殺だ」

 オオムカデンダルは興味無さそうに答えた。

「瞬殺かえ」

「瞬殺だ」

「そうか」

「そうだ」

 二人の会話はそれで終わった。
まるで、今朝何を食べたかを話すくらいのテンションである。
そうか。
俺は五分なのか。
俺もオオムカデンダルには瞬殺されるな。
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