見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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五九八

 さて、どこへ降ろすか。
城の真ん前だと、さすがに不味いか。
離れて降ろして手で運んだ方が無難かもしれない。

 どのみち冷蔵庫ごと運ぶ事には変わりが無い。
目立つ事は避けられないだろう。

 俺は悩みながら着地場所を探していた。

「ん?」

 城門前に誰か居る。
あれはソル皇子だ。
待ちきれずに殿下自らお出ましになったのか。

 悩む意味無かったな。

 俺は手を振る殿下の近くにメタルシェルを下ろした。

「待っておったぞ。さ、早う早う」

 まるで子供のようにケーキの到着を待っている。

「殿下。荷物が結構大きいのですが」

 俺はどうするか尋ねた。

「構わぬ。箱ごと持って参れ」

 冷蔵庫ごとか。
ならば人手が要るな。
これは城の人間に任せて、早速俺は消えるとしよう。

「何を言うておる。そちが運ぶのじゃ」

 俺が?
運ぶのは簡単だが良いのか。
あまり人目に付きたくは無いが。

「良い。余が一緒だ、誰も文句は言わぬ」

 問題点の認識にズレがあるようだが、殿下が良いと言うならそうしよう。

「なら僕が持って行ってやろう」

 フィエステリアームが鼻を鳴らしてメタルシェルへと引き返す。
ソル皇子が不思議そうにその後ろ姿を眺める。

 たぶんフィエステリアームは自分がやってみたいのだ。
俺がやろうとしても自分でやるだろう。
俺はそう思ってフィエステリアームが戻ってくるのを黙って待った。

「のう。お主が運んでやらんで良いのかえ?」

「大丈夫です」

 しばらくすると、メタルシェルから巨大冷蔵庫を担いだフィエステリアームが出てきた。

「……なんと」

 ソル皇子が感嘆の声を漏らす。
無理もない。
フィエステリアームの見た目はまだ子供だ。

「余はお主たちとだけは、敵対したくないのう」

 ソル皇子は目を輝かせながら大笑いした。
殿下は好奇心旺盛だな。
恐れるよりも興味が勝っている。
どっかのムカデに似ている。

「さ、こっちじゃ。着いてまいれ」

 そう言うと、ソル皇子は意気揚々と先頭を歩いた。
さて、俺はここらで消えておくとしよう。

「殿下。私は姿を消しておきます。ですが
いつでもお側におります故、ご安心を」

「そうか。判った」

 ソル皇子の返事を聞いて、俺は透明化した。
これで見た目には、ソル皇子とフィエステリアームの二人だけになった。

 門を潜るとき、門番たちが目を丸くする。
その前を何事も無いようにソル皇子が通り過ぎ、その後ろからフィエステリアームが冷蔵庫を頭に乗せて通過した。

 俺は門番の顔を見て、噴き出しそうになるのを必死に堪えた。
城門を潜ると入り口へは向かわず裏手に回る。
荷物の搬入口がある方だ。
以前潜入した際に一度経験済みだ。
そこから城内に入って荷物置き場へ辿り着いた。

「殿下。冷蔵庫はここへ置いておくのですか?」

「レイゾウコ?」

 おっと。
その呼び名では通じないな。

「この箱の事です。食料を低温で冷やして保管する為の箱です」

「ほお、そんな事が可能なのか。ならば余の部屋へ運ぼう」

 冷蔵庫をか?
本気か。
この大きさだぞ。
部屋に入るのだろうか。

「問題ない」

 ソル皇子は嬉しそうにそう言うと、再び先頭を歩きだした。
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