673 / 826
六七二
「さあ、掛かって来なさい」
そりゃ、俺のセリフだろ。
俺から掛かって行ったらそれで終わってしまうんだぞ。
判ってるのか。
いや、判ってないな。
判っていたらこんな茶番は必要ない。
この女は俺たちの事は知っているが、どんな物かは知らないのだ。
まったく、何しに来たんだ。
「……じゃあ、遠慮無く」
俺はそう言うと、素早く踏み込んで平手打ちを繰り出した。
ぱあんっ!
乾いた音が響き渡る。
これでもずいぶん優しく打ったんだが。
どさっ
女は軽く吹っ飛んで地面に倒れた。
やれやれ。
「く……っ!」
「どうした。終わりか?」
「ま、まだまだ!」
女は立ち上がると正面に剣を構えた。
「やああーっ!」
気合いと共に剣を突き出す。
ガキィッ!
その切っ先は、俺の胸で受け止められた。
「な、馬鹿なっ!?」
「通らんな」
ぱあんっ!
俺は再び彼女の頬を打った。
どさっ
女はさっきと同じく地面に倒れ込む。
「降参か?」
「……まだよ!」
やはり、根性はあるな。
それだけだが。
「はああっ!」
今度は二度突きを放ってから、脇腹目掛けて切り払ってくる。
ガキィッ!
だが、やはり俺の装甲を傷付ける事は出来なかった。
防御の必要さえない。
端っから勝負になっていない。
ホンの少もダメージを与えられないなら、戦う意味さえ無い。
「無駄だ。お前では一ミリも俺に痛みを感じさせる事など出来ん」
傷も付けられないのだから仕方がない。
「これほどとは……!」
どう言う情報を元に来たんだコイツら。
相手の事もロクに知らないのに、気軽に攻めて来やがって。
「……もう良い。変われ」
なに?
女が突然そう言った。
声音も変わっている。
「いや、まだ……」
「無理だ。お前に敵う相手では無い」
一人で会話しているのか。
おかしくなったか。
「……判った。任せます」
女がそう言ったかと思うと、突如雰囲気が一変した。
顔を上げると、その表情は凛とした物になっていた。
良く判らんが、訳ありか。
「行くぞ」
「ああ」
俺が返事をすると、今までとは別人の動きで女が襲い掛かる。
「!?」
あまりの変化に俺は一瞬面食らった。
ひゅばっ!
目の前を剣の先が通り過ぎる。
俺は間一髪、紙一重でこれをかわした。
今の攻撃は危険だ。
同じ剣だが、明らかに威力が違う。
まともに食らっては、無傷と言う訳にはいくまい。
「今のをかわすか……」
「……誰だお前」
お互いに相手の問いには答えない。
頭の中はそれどころでは無かった。
相手の正体は後回しだ。
さて、どうするか。
とにかく叩きのめしてから聞けば良い。
今は戦闘が優先だ。
幸い、勝てないような相手では無い。
かなりの腕だが、強化された今の俺の敵では無い。
以前なら互角か、相手の方が有利だったろう。
「サフィリナックスブレード」
俺は右手を剣に変えた。
相手の様子を観る必要も無い。
戦闘を引き伸ばす意味も無い。
一撃で決める。
「その腕は……」
女が気付いた。
警戒されているな。
しかし、警戒しても防ぐ事は出来ん。
ざっ!
俺は滑るように飛び出すと、そのまま女を通り抜けた。
ひゅあ……
風が遅れて巻き起こる。
女の髪が風に揺れた。
そりゃ、俺のセリフだろ。
俺から掛かって行ったらそれで終わってしまうんだぞ。
判ってるのか。
いや、判ってないな。
判っていたらこんな茶番は必要ない。
この女は俺たちの事は知っているが、どんな物かは知らないのだ。
まったく、何しに来たんだ。
「……じゃあ、遠慮無く」
俺はそう言うと、素早く踏み込んで平手打ちを繰り出した。
ぱあんっ!
乾いた音が響き渡る。
これでもずいぶん優しく打ったんだが。
どさっ
女は軽く吹っ飛んで地面に倒れた。
やれやれ。
「く……っ!」
「どうした。終わりか?」
「ま、まだまだ!」
女は立ち上がると正面に剣を構えた。
「やああーっ!」
気合いと共に剣を突き出す。
ガキィッ!
その切っ先は、俺の胸で受け止められた。
「な、馬鹿なっ!?」
「通らんな」
ぱあんっ!
俺は再び彼女の頬を打った。
どさっ
女はさっきと同じく地面に倒れ込む。
「降参か?」
「……まだよ!」
やはり、根性はあるな。
それだけだが。
「はああっ!」
今度は二度突きを放ってから、脇腹目掛けて切り払ってくる。
ガキィッ!
だが、やはり俺の装甲を傷付ける事は出来なかった。
防御の必要さえない。
端っから勝負になっていない。
ホンの少もダメージを与えられないなら、戦う意味さえ無い。
「無駄だ。お前では一ミリも俺に痛みを感じさせる事など出来ん」
傷も付けられないのだから仕方がない。
「これほどとは……!」
どう言う情報を元に来たんだコイツら。
相手の事もロクに知らないのに、気軽に攻めて来やがって。
「……もう良い。変われ」
なに?
女が突然そう言った。
声音も変わっている。
「いや、まだ……」
「無理だ。お前に敵う相手では無い」
一人で会話しているのか。
おかしくなったか。
「……判った。任せます」
女がそう言ったかと思うと、突如雰囲気が一変した。
顔を上げると、その表情は凛とした物になっていた。
良く判らんが、訳ありか。
「行くぞ」
「ああ」
俺が返事をすると、今までとは別人の動きで女が襲い掛かる。
「!?」
あまりの変化に俺は一瞬面食らった。
ひゅばっ!
目の前を剣の先が通り過ぎる。
俺は間一髪、紙一重でこれをかわした。
今の攻撃は危険だ。
同じ剣だが、明らかに威力が違う。
まともに食らっては、無傷と言う訳にはいくまい。
「今のをかわすか……」
「……誰だお前」
お互いに相手の問いには答えない。
頭の中はそれどころでは無かった。
相手の正体は後回しだ。
さて、どうするか。
とにかく叩きのめしてから聞けば良い。
今は戦闘が優先だ。
幸い、勝てないような相手では無い。
かなりの腕だが、強化された今の俺の敵では無い。
以前なら互角か、相手の方が有利だったろう。
「サフィリナックスブレード」
俺は右手を剣に変えた。
相手の様子を観る必要も無い。
戦闘を引き伸ばす意味も無い。
一撃で決める。
「その腕は……」
女が気付いた。
警戒されているな。
しかし、警戒しても防ぐ事は出来ん。
ざっ!
俺は滑るように飛び出すと、そのまま女を通り抜けた。
ひゅあ……
風が遅れて巻き起こる。
女の髪が風に揺れた。
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
一夜の過ちで懐妊したら、幼なじみの冷酷皇帝に溺愛されました
由香
恋愛
没落貴族の娘・柳月鈴は、宮廷で医官見習いとして働いていた。
ある夜、皇帝即位の宴で酒に酔い、幼なじみだった皇帝・李景珩と再会する。
遠い存在になったはずの彼。
けれど、その夜をきっかけに月鈴の運命は大きく動き出す。
冷酷と恐れられる皇帝が、なぜか彼女だけには甘すぎて――。
【完結】1王妃は、幸せになれる?
華蓮
恋愛
サウジランド王国のルーセント王太子とクレスタ王太子妃が政略結婚だった。
側妃は、学生の頃の付き合いのマリーン。
ルーセントとマリーンは、仲が良い。ひとりぼっちのクレスタ。
そこへ、隣国の皇太子が、視察にきた。
王太子妃の進み道は、王妃?それとも、、、、?
【完結】瑠璃色の薬草師
シマセイ
恋愛
瑠璃色の瞳を持つ公爵夫人アリアドネは、信じていた夫と親友の裏切りによって全てを奪われ、雨の夜に屋敷を追放される。
絶望の淵で彼女が見出したのは、忘れかけていた薬草への深い知識と、薬師としての秘めたる才能だった。
持ち前の気丈さと聡明さで困難を乗り越え、新たな街で薬草師として人々の信頼を得ていくアリアドネ。
しかし、胸に刻まれた裏切りの傷と復讐の誓いは消えない。
これは、偽りの愛に裁きを下し、真実の幸福と自らの手で築き上げる未来を掴むため、一人の女性が力強く再生していく物語。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
【大賞・完結】地味スキル《お片付け》は最強です!社畜OL、異世界でうっかり国を改革しちゃったら、騎士団長と皇帝陛下に溺愛されてるんですが!?
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞で大賞をいただきました】→【規約変更で書籍化&コミカライズ「確約」は取り消しになりました。】
佐藤美佳子(サトウ・ミカコ)、享年28歳。死因は、過労。連日の徹夜と休日出勤の果てに、ブラック企業のオフィスで静かに息を引き取った彼女が次に目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界だった。
新たな生を受けたのは、田舎のしがない貧乏貴族の娘、ミカ・アシュフィールド、16歳。神様がくれた転生特典は、なんと《完璧なる整理整頓》という、とんでもなく地味なスキルだった。
「せめて回復魔法とかが良かった……」
戦闘にも生産にも役立たないスキルに落胆し、今度こそは静かに、穏やかに生きたいと願うミカ。しかし、そんな彼女のささやかな望みは、王家からの突然の徴収命令によって打ち砕かれる。
「特殊技能持ちは、王宮へ出仕せよ」
家族を守るため、どうせ役立たずと追い返されるだろうと高をくくって王都へ向かったミカに与えられた任務は、あまりにも無謀なものだった。
「この『開かずの倉庫』を、整理せよ」
そこは、数百年分の備品や資材が山と積まれ、あまりの混沌ぶりに探検隊が遭難したとまで噂される、王家最大の禁足地。
絶望的な光景を前に、ミカが覚悟を決めてスキルを発動した瞬間――世界は、彼女の「お片付け」が持つ真の力に震撼することになる。
これは、地味スキルでうっかり国のすべてを最適化してしまった元社畜令嬢が、カタブツな騎士団長や有能すぎる皇帝陛下にその価値を見出され、なぜか過保護に甘やかされてしまう、お仕事改革ファンタジー。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜
クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。
生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。
母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。
そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。
それから〜18年後
約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。
アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。
いざ〜龍国へ出発した。
あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね??
確か双子だったよね?
もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜!
物語に登場する人物達の視点です。