見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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六九四

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 彼女が自ら『会えない』と言ったのだと。
真偽は判らないが、会えないと自分で言えているとしたら、もう起きて歩いたりしているのだろうか。
それともまだ寝たきりのような状態なのか。

 それはともかく、それでも無事だと言ったオオムカデンダルの言葉を俺は信じたい。

「どうだ。少しは安心したか?」

 オオムカデンダルが、やれやれだと言った顔で俺を見た。

「ああ。だが、どうして会いたくないんだ。傷痕が酷いのか?それとも寝たきりなのか?」

 俺は嬉しくなってつい深い所まで追求した。

「……本人から口止めされているから、これ以上の事は言えん。済まんな」

 俺は急に突き放されたような気がして、内心落ち込んだ。
しかし、今はそれでも良しとしよう。
俺は気持ちを持ち直した。

「……そうか。まあいい。無事だと判っただけでも意味はあった」

 そう言う俺を見て、オオムカデンダルがわずかに微笑んだ気がした。

「ならば良かった」

 オオムカデンダルはそう言うと、テーブルの上で両手を組んだ。

「レオの用事も済んだ事だし、ここからは改めて世界征服に本腰を入れようか」

 オオムカデンダルがモニターの操作をする。
壁に掛かった巨大モニターが点いた。

「やる事が多すぎて同時進行なのが辛い所だ。まだまだ人材不足だな」

 オオムカデンダルはそう言った。

「移住希望の民衆は毎日一〇〇から五〇〇人づつ増えている。こんなの聞いた事が無い」

 俺はオオムカデンダルに訴えた。
オオムカデンダルは手を組んだままモニターを見つめた。

「土地が足りない。増え続ける民衆を食わせるだけの食料を作るには、もっと多くの畑が必要だ。もちろんそれ以外もだ」

 今でさえ食料生産はフル稼働だ。
だがこのペースで増え続けると、早晩不足するのは目に見えている。

「……まあ、それは何とかなる。たいした事では無いな」

 何とかなる?
いくらネオジョルトでも土地を生み出す事は出来んだろ。
出来るのか?

「出来ん事は無いが簡単では無いな。そんな事よりも簡単に解決できる方法はある」

 本当か。

「住宅を高層化すれば良いだけだ」

 高層化?

「多層化とでも言えば伝わるか?二階建て三階建てにしていけば済む所は確保できる」

 まさか、そんな事が出来るのか。

「出来るさ、簡単な話だ。俺の世界では当たり前の話だ」

 当たり前なのか。
意味は理解できても想像はつかない。
どんな世界だったんだ。

「それとは別に勢力拡大は目指すべきだ。あくまでも領地では無く、勢力圏の拡大だな。武力制圧は手段としては下の下だ。俺はなるべく武力によらない『楽しい世界征服』を目指したい」

 なんだそれは。

「力関係を逆転させるのが好ましいな。
まずは帝国を俺たちに依存させる」

 それはもうやっているでは無いか。
ケーキやら珈琲やらで、今や帝国はそれなしには暴動が起きかねない。

「もっと直接的に押さえよう。よし、出掛けるぞ。レオ付いて来い」

 そう言ってオオムカデンダルは、やおら立ち上がった。
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