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六九八
ゆっくりと扉が開かれる。
俺はライエル将軍とオオムカデンダルに続いて部屋に入った。
「殿下、連れて参りました」
「うむ。ご苦労。下がって良いぞ」
「は、しかし……」
ライエルが横目でオオムカデンダルを見る。
「大丈夫じゃ」
「……申し訳ありません。ですがそう言う訳には参りません。この様な男を殿下と二人きりになど」
「お前は心配性じゃの。判った、そこに居れ」
「はっ」
ライエル将軍が頭を垂れる。
見上げた忠誠心だな。
「良いのかい?」
「構わぬ。それで帝国と同盟を結びたいとな?」
ソル皇子がオオムカデンダルに尋ねた。
「いや、違う。同盟では無く姉妹都市だ」
「姉妹都市?何故そのような物を結ぶ必要があるのじゃ」
「理由はいくつかあるが、簡単に言えば帝国を滅ぼさない為だな」
オオムカデンダルがさらりと言った。
ライエルが怒りを必死に堪えているのが判る。
それを察して、ソル皇子がライエルを手で制止するそぶりを見せた。
「帝国を滅ぼさない為とな?」
「俺たちの目的は世界征服だからして、そうなると帝国の存在も障害になってくる。そこで姉妹都市契約を結んでおけば、敵対しなくて済む」
「……それは西の繁華街の事じゃな?」
「そうだ」
ソル皇子が、ふぅむと言って考え込んだ。
個人的には良くても、帝国の皇子としては簡単には認められない。
「ただ、お前たちに滅ぼされない為と言うのが理由か?」
ソル皇子がオオムカデンダルに念を押すと、オオムカデンダルがニヤリと笑った。
「さすがは皇子。たったそれだけの為に、栄光あるイスガン帝国に姉妹都市になれとは言わない。今うちは住民が殺到していてね、帝国からも多数流入している」
ソル皇子がライエル将軍を見た。
「まことか?」
「……はい」
「何故報告せぬか」
「僭越ながら、西の繁華街は帝国領であります。領内で人の移動があること自体は特に何の法にも抵触致しません」
なるほど。
「帝国だけじゃ無いぜ。カッパー王国からも、もっと遠い国からも来ている」
話の内容とは裏腹に、ソル皇子の表情は明るかった。
喜んでいるのか。
「ほっほっほっほっ。お主の政が人々を惹き付けておるのだな」
「笑い事ではありません!」
堪らずライエル将軍が声を上げる。
「お前さっき、領内で人が移動しているだけだから問題無いと言ったじゃないか」
オオムカデンダルに指摘されてライエル将軍が悔しそうな顔をする。
「俺たちには目標がある。それを実現する為の力もあるぞ。俺はアンタと事を構えたくないんだ。姉妹都市契約を受けてくれ」
これは中々難しい。
契約したら、公的に西の繁華街がネオジョルトの領地だと認めた事になる。
「……話は判ったがの、それだけでは乗れんな」
やはり、そうなるよな。
「判ってるって。手土産だろ?」
オオムカデンダルが両手を広げて肩をすくめた。
「だから西の繁華街を売ってくれ。その上で姉妹都市契約を結んでくれ。金は言い値で払おう。うちは今や物流の交差点だ。全ての物と金と人と、そして情報が集まる一大拠点だ。それが帝国の領内に存在すると言うだけでも大きなメリットだと思うが?」
「くどい!西の繁華街は帝国領だ!」
ライエルが堪らず大声を上げる。
「そんなのどっちだって良いだろう。帝国の領土の中に在ると言う事が大事なんだ。気に入らないならアンタは帝国領だと思っておけば良い。別に国境がある訳でも、封鎖する訳でも無いんだからな。いつでも勝手に来て良いぞ」
俺はライエル将軍とオオムカデンダルに続いて部屋に入った。
「殿下、連れて参りました」
「うむ。ご苦労。下がって良いぞ」
「は、しかし……」
ライエルが横目でオオムカデンダルを見る。
「大丈夫じゃ」
「……申し訳ありません。ですがそう言う訳には参りません。この様な男を殿下と二人きりになど」
「お前は心配性じゃの。判った、そこに居れ」
「はっ」
ライエル将軍が頭を垂れる。
見上げた忠誠心だな。
「良いのかい?」
「構わぬ。それで帝国と同盟を結びたいとな?」
ソル皇子がオオムカデンダルに尋ねた。
「いや、違う。同盟では無く姉妹都市だ」
「姉妹都市?何故そのような物を結ぶ必要があるのじゃ」
「理由はいくつかあるが、簡単に言えば帝国を滅ぼさない為だな」
オオムカデンダルがさらりと言った。
ライエルが怒りを必死に堪えているのが判る。
それを察して、ソル皇子がライエルを手で制止するそぶりを見せた。
「帝国を滅ぼさない為とな?」
「俺たちの目的は世界征服だからして、そうなると帝国の存在も障害になってくる。そこで姉妹都市契約を結んでおけば、敵対しなくて済む」
「……それは西の繁華街の事じゃな?」
「そうだ」
ソル皇子が、ふぅむと言って考え込んだ。
個人的には良くても、帝国の皇子としては簡単には認められない。
「ただ、お前たちに滅ぼされない為と言うのが理由か?」
ソル皇子がオオムカデンダルに念を押すと、オオムカデンダルがニヤリと笑った。
「さすがは皇子。たったそれだけの為に、栄光あるイスガン帝国に姉妹都市になれとは言わない。今うちは住民が殺到していてね、帝国からも多数流入している」
ソル皇子がライエル将軍を見た。
「まことか?」
「……はい」
「何故報告せぬか」
「僭越ながら、西の繁華街は帝国領であります。領内で人の移動があること自体は特に何の法にも抵触致しません」
なるほど。
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話の内容とは裏腹に、ソル皇子の表情は明るかった。
喜んでいるのか。
「ほっほっほっほっ。お主の政が人々を惹き付けておるのだな」
「笑い事ではありません!」
堪らずライエル将軍が声を上げる。
「お前さっき、領内で人が移動しているだけだから問題無いと言ったじゃないか」
オオムカデンダルに指摘されてライエル将軍が悔しそうな顔をする。
「俺たちには目標がある。それを実現する為の力もあるぞ。俺はアンタと事を構えたくないんだ。姉妹都市契約を受けてくれ」
これは中々難しい。
契約したら、公的に西の繁華街がネオジョルトの領地だと認めた事になる。
「……話は判ったがの、それだけでは乗れんな」
やはり、そうなるよな。
「判ってるって。手土産だろ?」
オオムカデンダルが両手を広げて肩をすくめた。
「だから西の繁華街を売ってくれ。その上で姉妹都市契約を結んでくれ。金は言い値で払おう。うちは今や物流の交差点だ。全ての物と金と人と、そして情報が集まる一大拠点だ。それが帝国の領内に存在すると言うだけでも大きなメリットだと思うが?」
「くどい!西の繁華街は帝国領だ!」
ライエルが堪らず大声を上げる。
「そんなのどっちだって良いだろう。帝国の領土の中に在ると言う事が大事なんだ。気に入らないならアンタは帝国領だと思っておけば良い。別に国境がある訳でも、封鎖する訳でも無いんだからな。いつでも勝手に来て良いぞ」
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