見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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七三二

「後はヴァルキリーか」

 俺はヴァルキリーを見た。

「な……私を殺そうと言うのか!」

 何を言うか。
お前が俺たちを殺そうとしたんじゃないか。
これだけのモンスターの大群を引き連れて、俺たちどころか人間を皆殺しにするに十分な戦力だ。
お前の性格なら人間がついでに何万人死のうが気にも止めまい。

「う、うるさい!貴様たちは危険過ぎるのだ!いずれ神にも弓を引く」

「まあ……そりゃあなあ。行く道に立ちはだかってたなら、ぶつかるかもしれんが」

 オオムカデンダルは否定しなかった。
むしろぶつかりに行きそうな男なのに。

「その道を変えようなどとは思わないのが貴様らだ。神の道と同じ道を行こうとしている証拠だ。神と道でぶつかる?恐れ多いにも程があるわ!」

「人間をそんな風に造ったのが神なんだから、その責任は神自身にあるだろ。生まれてしまった以上、俺たちだって好きに生きるさ。消されて堪るか」

 オオムカデンダルはヴァルキリーに淡々と答えた。

「それが傲慢だと言うのだ。謙虚さの欠片も無い。神は親、人間は子だ。逆らう事など許されん!」

 ヴァルキリーがさも当然と高らかに言い切る。
女神だしな。
骨の髄から神側だ。
話し合いの余地など、初めから無い。

「やれやれ。これだから反抗期も無く大人になるといかんのだ。子供は親を超えて行く物だ。それが恩返しでもあり、親はまた子の成長を嬉しく思う物なんだが……神様は随分と狭量なんだな。ま、知ってたけど」

 オオムカデンダルは諦めたように言った。

「ふん……お前たちは神の失敗作だ。初めから無かった事にしてやる!」

「ふふふ。最高傑作なのにそれにも気付かんか。もう創造主を名乗るのは辞めろよ。お前らセンス無いよ」

 オオムカデンダルはそう言うと前に歩み出た。 

「子供の反抗期を見せてやる。掛かって来いよ」

 やる気か。
しかし、ヴァルキリーに勝ち目など無い。
なのにこの状況でまだ強がれるのは何故なのか。

 モンスターの大群も、インプも、全て負けているのに。

「ふふふ。不思議に思うか?」

 ヴァルキリーが俺を見る。
読まれているのか。

「何の手も無く、まんまと現れたとでも?」

 なんだ。
どんな奥の手があると言うのだ。

 ばうむ!

 突然、空間に穴が開いた。
なんだこれは。
いや、これは見た事があるぞ。

 ギロリ

 穴から巨大な目が覗く。
そうだ。
これは。

 ずぼおっ!

 穴から手が伸びる。
これは、プニーフタールだ!
前にもインプを捕まえて助けていた。
またか!

 むんず

 巨大な手が倒れているインプを掴まえた。
また、逃がすつもりか。
そうはさせん。

 ミーアの洗脳を解く鍵なのだ。
返してもらおうか。

 俺は瞬間的にプニーフタールの太い腕に飛び掛かった。

 ぶうん!

 プニーフタールの腕がインプを握り締めたまま、俺を跳ね飛ばす。

「ちい!」

 俺はそれを空中で受け止めると、一回転して着地した。
この野郎。

 だが、次の瞬間。
俺は呆然と立ち尽くした。

 んがっ

 プニーフタールが穴から巨大な口を開く。
まさか。
おい、やめろ!

 ぱくっ

 食った。

 プニーフタールは何の躊躇いも無く、インプを口へと放り込んだ。
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