見知らぬ世界で秘密結社

七三四

　遂に出てくるのか。
俺は不覚にも体が震えた。

　あの伝説の邪神が、破壊神が再びこの世に顕現しようとしている。
良いのか。
本当に俺たちだけで何とかなるのか。
ひょっとして今、取り返しの付かない事が起こっているんじゃないのか。　

　俺は色んな事を一瞬で考えた。
だが、一つもまとまらない。　
ただ恐ろしさと絶望のような物が俺を支配しようとしていた。

「おい、しっかりしろ。まだなんにもしてないぞ」

　オオムカデンダルの声で俺は我に返った。
オオムカデンダルもオニヤンマイザーも、普段通りの彼らだ。
必要以上にビビってなど居ない。
ただ興味深そうにプニーフタールを見ている。

　俺はその光景を見て、少しだけ安心した。
彼らの平常心には恐れ入るが、今はそれがこんなにも頼もしい。

「前も思ったんだが、コレ何だと思う？」

　オオムカデンダルがオニヤンマイザーに聞いた。

「さあね。見ただけではさすがに何とも。地球上の生物とは到底思えないが、とても興味深い」

　オニヤンマイザーは嬉しそうに言った。
平常心そのもののオニヤンマイザーだが、好奇心にワクワクしているのが判る。
いや、判るようになった。
表面上の冷静さとは別に圧し殺したような昂揚感が、俺にも判るようになったのか。

「なんか、宇宙生物だって言ってたぜ」

「そうかもな。あまりにも原生生物とは違い過ぎる。明らかに高い知能を持っている」

　オオムカデンダルとオニヤンマイザーが、互いにああでもない、こうでもないと言い始めた。
戦いの最中に何を言っているんだ。
本来なら、もうかなりヤバイ状況になっている。
緊張感はどこへ行ってしまったんだ。

「結局捕獲か」

「いや、さすがに無理じゃないか。捕獲できる程、戦力差があるとは思えないぞ」

「勿体なさ過ぎる。是非捕獲を試みるべきだ」

「べき論は今はやめておけ。まず最優先は討伐だ。その目処が立たないうちは捕獲など考えない方が良い」

「……やはりお前とは考えが合わないな」

　オニヤンマイザーが呟くように言った。

「だから良いんじゃないか」

　オオムカデンダルが笑って言った。

「レオ。ガーディアンに戻れ。ここからがガーディアンの本当の出番だぞ」

　オオムカデンダルにそう言われて、俺はすぐさまガーディアンへと戻った。

　ヴオォォォオオオオ！

　再びプニーフタールが叫んだ。

　ばきばきばきばき！
ばりいぃーん！

　空が割れる音が一際大きくなってきた。
もう、現れる。
伝説の厄災が、現実になろうとしている。
もう間もなく、今すぐにだ。

　俺はガーディアンに飛び乗ると、操縦席に身を沈めた。
もうやるしかない。
駄目なら世界が終わる。
こんな急に世界の終わりを掛けて戦う刻が来るものなのか。

　いつでも危機に直面する時は、その寸前までは普通に過ごしている物だ。
世の中とはそう言う物かもしれない。

「センチピードランチャー」

　オオムカデンダルの手に武器が握られる。

「クイックナパーム」

　オニヤンマイザーがクイックナパームの発射体勢に入る。

　ぼしゅっ！
ぼぼぼぼぼ！

　二人が同時に発射した。

　どどおぉーん！
ぼぼぼぼぼぼおぉん！

　無数の爆発が同時に起きる。
センチピードランチャーがまず炸裂して、大きな火球が膨らんだ。
その後、間髪入れずに無数の爆発が咲いた。

　ばひゅー！
ごおおおっ！

　爆風が吹き荒れる。
まるで砂嵐だ。

「フィエステリアーム、センチピーダーを呼べ」

「もう、呼んでる」

　オオムカデンダルの言葉にフィエステリアームが静かに答えた。