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七四八
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この笑い方。
見た事があるぞ。
胸がきゅう、と締め付けられる感覚。
知っている。
俺はこの女を知っている。
「アニー……」
俺は彼女の名前を呼んだ。
アニー。
冒険者仲間であり、俺がずっと好きだった人の名前。
彼女と一緒に何度もパーティーを組んだ。
どこへでも出掛けて行って、冒険を繰り広げた。
幾度ものピンチを互いに助け合って乗り越えてきた。
そして。
死なせてしまった。
あの時、彼女も含めてパーティーは全滅した。
俺だけがたまたま助かった。
本当にたまたまだ。
崖から滑り落ち、気を失って、運良く死なずにここへ辿り着いた。
死に損なった。
満身創痍で、たまたま生きていたと言うだけで、やがて俺も死ぬ。
そんな状況だった。
今の俺はオオムカデンダルたちに生かされているだけの、ただの冒険者崩れだ。
それでもこうして生きているのは、彼女を救ってくれるとオオムカデンダルが言ったからだ。
何の確証も無いし、信用に足りる人物かどうかも判らない怪しい男の言葉に、俺はすがっただけだ。
他に頼れる物など無かったのだから仕方が無い。
神も悪魔も何の助けにもなりはしなかった。
祈ったけど助けの手は差し伸べられなかった。
差し伸べてくれたのは世界征服を企むとうそぶく、自称『悪の秘密結社 ネオジョルト』だけだ。
お題目は何でも良い。
やってくれるなら、俺は従おう。
ただそれだけの、シンプルな願いだった。
それが今。
俺の目の前に叶っていた。
俺の唯一の願い。
アニー。
君に会いたかった。
俺は彼女にフラフラと近付いた。
「アニー」
俺は優しく優しく抱き寄せた。
「私だって判るの……?」
「当たり前だ。判るさ。判るとも!」
俺は更にギュッと力を込めて抱き締める。
しかし、彼女はそれをやんわりと突き放した。
「……ありがとう。貴方のお陰で私が生きているんだって教わったわ」
別にそんな事は良い。
「でもね、今までのようにはいかないわ」
なんで。
どう言う意味だ。
俺は彼女の顔を見つめた。
人間のように精巧な仮面。
一瞬見ただけでは気付かない可能性さえある。
どうして仮面などかぶっているんだ。
俺を驚かそうと思ったんだろ。
もう良いじゃないか。
外して顔を見せて欲しい。
俺は彼女の頬に手を伸ばした。
はしっ
その手を彼女が優しく止める。
駄目なのか。
どうして。
まさか、顔に大きな疵でも残ったのだろうか。
そんな事など俺は少しも気にしない。
「駄目……見ないで」
アニーは小さく拒否した。
疵などネオジョルトの技術が有れば、綺麗に無くせそうな物だが。
それでも無理だったのか。
俺は疑問に思った。
「疵か?疵が残ったんだね。そんなの俺が気にすると思ったのか?」
アニーは答え辛そうに、黙ったまま俺の手を離そうとしなかった。
そんなに見られたく無いのか。
理由は判らないが、そこまで嫌がるのなら無理にそうする事もあるまい。
俺は彼女の顔を見たい気持ちを抑えて、我慢して手を引いた。
アニーの安堵する息づかいが聞こえた。
見た事があるぞ。
胸がきゅう、と締め付けられる感覚。
知っている。
俺はこの女を知っている。
「アニー……」
俺は彼女の名前を呼んだ。
アニー。
冒険者仲間であり、俺がずっと好きだった人の名前。
彼女と一緒に何度もパーティーを組んだ。
どこへでも出掛けて行って、冒険を繰り広げた。
幾度ものピンチを互いに助け合って乗り越えてきた。
そして。
死なせてしまった。
あの時、彼女も含めてパーティーは全滅した。
俺だけがたまたま助かった。
本当にたまたまだ。
崖から滑り落ち、気を失って、運良く死なずにここへ辿り着いた。
死に損なった。
満身創痍で、たまたま生きていたと言うだけで、やがて俺も死ぬ。
そんな状況だった。
今の俺はオオムカデンダルたちに生かされているだけの、ただの冒険者崩れだ。
それでもこうして生きているのは、彼女を救ってくれるとオオムカデンダルが言ったからだ。
何の確証も無いし、信用に足りる人物かどうかも判らない怪しい男の言葉に、俺はすがっただけだ。
他に頼れる物など無かったのだから仕方が無い。
神も悪魔も何の助けにもなりはしなかった。
祈ったけど助けの手は差し伸べられなかった。
差し伸べてくれたのは世界征服を企むとうそぶく、自称『悪の秘密結社 ネオジョルト』だけだ。
お題目は何でも良い。
やってくれるなら、俺は従おう。
ただそれだけの、シンプルな願いだった。
それが今。
俺の目の前に叶っていた。
俺の唯一の願い。
アニー。
君に会いたかった。
俺は彼女にフラフラと近付いた。
「アニー」
俺は優しく優しく抱き寄せた。
「私だって判るの……?」
「当たり前だ。判るさ。判るとも!」
俺は更にギュッと力を込めて抱き締める。
しかし、彼女はそれをやんわりと突き放した。
「……ありがとう。貴方のお陰で私が生きているんだって教わったわ」
別にそんな事は良い。
「でもね、今までのようにはいかないわ」
なんで。
どう言う意味だ。
俺は彼女の顔を見つめた。
人間のように精巧な仮面。
一瞬見ただけでは気付かない可能性さえある。
どうして仮面などかぶっているんだ。
俺を驚かそうと思ったんだろ。
もう良いじゃないか。
外して顔を見せて欲しい。
俺は彼女の頬に手を伸ばした。
はしっ
その手を彼女が優しく止める。
駄目なのか。
どうして。
まさか、顔に大きな疵でも残ったのだろうか。
そんな事など俺は少しも気にしない。
「駄目……見ないで」
アニーは小さく拒否した。
疵などネオジョルトの技術が有れば、綺麗に無くせそうな物だが。
それでも無理だったのか。
俺は疑問に思った。
「疵か?疵が残ったんだね。そんなの俺が気にすると思ったのか?」
アニーは答え辛そうに、黙ったまま俺の手を離そうとしなかった。
そんなに見られたく無いのか。
理由は判らないが、そこまで嫌がるのなら無理にそうする事もあるまい。
俺は彼女の顔を見たい気持ちを抑えて、我慢して手を引いた。
アニーの安堵する息づかいが聞こえた。
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