見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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七六六

 この程度は想定済みだ。
突破するなど造作も無い。

 ひゅんひゅん

 俺は兵士たちの隙間を縫うように走る。
兵士たちは互いの距離が近過ぎて剣も振れない。
ましてや包囲用の長槍など、この状況では何の役にも立たない。

「まてぃ!」

 力自慢が俺を素手で捕まえた。
それは正解だ。
だが、素手で止められない所が悲しい所でもある。

「うあっ!」

 簡単に振り切られて、男は地面を転がった。

「止めろお!逃がすなあ!」

 うおおおお!

 兵士が何十人も折り重なって俺に飛び掛かる。
無駄だ。
それでは俺は止められん。
全て払いのけて、俺は路地を独走状態に入った。

「中々やるね。君は誰だ?」

 目の前に男が降ってきた。
屋根伝いに走ってきたのか。
そっちこそやるな。

 俺は質問には答えず男の横をすり抜けようとした。

「待ち給え。まだ質問の答えを聞いていない」

 男が素早く回り込んで行く手を塞ぐ。
素早いな。
だったら強行突破だ。
俺はそのまま構わずに走る。

 グンッ

 俺の腕が掴まれて、引き寄せられる。
なんだと!?
馬鹿な。
俺は驚いて腕を振り払う。
しかし払った腕が今度は上着を掴み、それを払うと今度は襟首を掴まえる。

 この。

 決して力で対抗しようとしてこない。
払えば離すが、その時には別の部分を掴まえてくる。
なんだ、コイツ。

「ホントに君は何者なんだ?僕にこれだけ捕まえさせないなんて」

 男も驚いた顔で俺を見た。
それはこっちのセリフだ。
俺は面倒になって振り払うのを止めた。
男はホッとした顔で俺の衣服から手を離す。

「君はアイツらの仲間じゃないのか?」

「違うと言えば信じるのか?」

 男は首を横に振った。

「……いや、無理だね。あの場所にはアイツらしか入れない。一見の酔客なんか居やしないんだから」

 そうだったのか。
まあ、そうかもな。

「お前も何者だ」

 俺も尋ねた。

「あれ?僕を知らないの?結構有名人だと思ったんだけどな」

 照れくさそうに男が頭を掻いた。

 良く見ると、普通の兵士とは違う。
頭は素面で、兜のような物は付けていない。
金髪、碧眼、整った端整な顔立ち。
ハッキリ言って美男子だ。

 鎧も最小限度だった。
どちらかと言えばレンジャーのような軽装備だ。
ただ言えるのは、金持ちだなと言う事か。
一つ一つの装備品は装飾が施され、高級そうな光沢を放っている。
衣類もこれはかなりの上物だ。
チェインメイルも着込んでいるが、見た事も無いほど目が細かい。
鉄をこんな形で繋げられるのか。

「ふふふ、そんなに珍しいかい?僕は君の方が珍しいよ。見た所装備品も普通の冒険者の物だし、どれもだいぶガタがきているね。君の実力とちぐはぐだ」

 大きなお世話だ。
愛着があるから使っているが、正直素手で戦った方が強いからな。
装備はあまり気にしていなかった。

「アンタ、ただの兵士じゃないな。隊長って訳でも無さそうだが?」

 俺は男の装備を一通り見て言った。

「本当に僕の事を知らないんだね。少し傷付いちゃうよ」

 なんだコイツ。
さっきから自意識過剰な。
気味が悪いぞ。

「仕方が無い。そこまで知りたいなら教えてあげようか。僕は……」

「いや、だったらいい」

 俺は聞くのを止めて来た道を引き返した。

「僕はね、王国騎士団を束ねるバーロックと言う者だ。バーロックはファミリーネームだ。バーロック家は知っているだろ?」

「知らん」

「そんな馬鹿な!誰でも知っている事だぞ?子供でも知っている!」

「いや、知らん」

 俺は歩く速度を上げた。
しかし、バーロックはピッタリと後ろから着いて来た。
何なんだコイツは。

「六つある王国騎士団の全てを束ねる総隊長だぞ?伝説の勇者『ジョン・バーロック』の家系だ。僕はその末裔であり、現バーロック家の一九代目当主だ。知らないのかい?なあ、知っているだろ?知っているよね?」

「知らんっ!」

 俺は思わず感情的になって否定した。
知らん物は知らん。
勇者の末裔?
それならこの間のバーデン将軍で充分に腹一杯だ。

「バーデン?バーデンだって?」

 バーロックが声を荒らげる。
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