見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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七六八

「初めからそう言ってたろ」

「でも怪しかったから仕方が無いよね。勘弁してくれ給え」

 バーロックはそう言って俺の肩をバンバンと叩いた。

「じゃあ俺はここで失礼する」

 俺はそう言うとその場から離れる。

「あ、待ってくれよ」

 まだ何か用か。

「君に興味が湧いてきた。もっと話がしたいんだが」

「悪いな。俺にそんな暇は無い」

「ふぅん。何をそんなに急いでいるんだい?」

 バーロックがそう言った所で、俺はバーロックに向き直った。

「お前も仕事があるんだろう?何の為に酒場に踏み込んだんだ?」

 俺に言われてバーロックがのけ反る。

「忘れてないさ。君が彼らの一味じゃ無いなら、どうしてあそこに居たのか気になるだろ?」

「ただ一杯やりたかっただけだ」

「あの店で?表にいくらでも目立つ店があるのに?」

「別に良いだろ。俺は王国に詳しくないんだ。賑やかな繁盛店は好きじゃない」

 バーロックが怪しむように俺を見た。
信じていない目だ。

「へーぇ」

 バーロックはそう返事しても尚、着いてくるのを止めない。

「君さ、名前は?」

 言わねばならんか。
言わないと余計に怪しまれるとか。
いや、どっちでももう怪しまれている。

「……レオだ」

「そうかレオか。改めて僕はケン・バーロックだ。一九代目バーロック家の当主であり、王国騎士団の総隊長だ」

 何故それを改めて言う。

「で、君はどこのレオ君だい?」

「……どこのとは?」

「嫌だなあ。どこかに所属くらいしているだろ?君ほどの男がソロの冒険者とは考えにくいよ」

 何を考えているんだ。
それとも俺の背後を探っているだけか。

「例えそうでもお前には関係ない」

「冷たいなあ」

 考えても仕方が無い。
どうせ俺はそう言う腹芸みたいなのは得意では無いのだ。
だったら下手な小細工など逆に邪魔なだけだ。

「……最近ね、おかしな事ばかり起こっているんだ。この王国でね」

 突然ケンは話題を変えた。

「知っているかい?先日、突然無数のモンスターが王国を取り囲むように出現した事を。僕はこの世の終わりが始まるのかと思ったんだ。遂に僕の代で勇者として命を掛ける時が来たんだとね」

 俺はそれを聞きながらも、無反応を装って歩き続ける。

「でも、何故かそれらのモンスターたちは王国には見向きもしないで南へ進軍を開始したんだ。おびただしい数のモンスターたちが一斉にだよ。すぐ側に人間の住む王国が在ると言うのに全くの無視だ」

 知っているさ。
なんせその現場に居たんだからな。

「でもそれらは全滅したんだ。一匹も残らずにだぞ。何が起こったのか誰も知らない。巨大な火柱が上がった事だけは多くの人が目撃している。当然僕も見た」

 俺も見た。

「何者かと戦っていたんだ。僕はそう見ている。あんな数のモンスターと戦って全滅させるだなんて。魔王クラスかそれを超越している。ハッキリ言って勇者形無しだ」

 ……それは済まなかった。

「まあ、楽した上に助かったんだから僕としてはラッキーだったんだけど!」

 ケンは可笑しそうに笑う。
どうも本心らしい。
なんだコイツ。

「でもね」

 ケンが突然真面目な口調になる。

「その中には『世界亀アスピドケロン』が居たんだ」

 居たな。
俺も見た。

「あれ?あんまり驚かないんだね」

「荒唐無稽過ぎて作り話なんじゃないのかと思っている」

「ところがそうじゃないんだ。それどころかワイバーンも複数匹目撃された」

 ケンは話しながら俺の反応をつぶさに見ている。

「……邪神まで現れたとしらたら……君はどう思う?」

 ケンがじっと俺を背後から観察している。

「……どう、とは?」

「これは作り話なんかじゃない。本当の話だ。だって僕が見たんだからね」

 あの大きさだ。
見えるヤツには見えるだろう。
ましてやコイツが本当に勇者だと言うのなら、遠方を見るくらい容易い事だ。

「……何故それが邪神だと判る。邪神を見た事があるのか?」

 俺はケンに尋ねた。
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