785 / 826
七八四
しおりを挟む
「貴様がここの首魁か?」
俺は男に尋ねた。
「ワシはここを任されておるだけだ。ここまでされたからには責任追及から逃れられんだろうが、せめてここで火消ししておかんとクビが飛ぶのでな」
組織の全体図が思い浮かばない。
かなり大きいのだろうと言う事は予測出来る。
どう王国の中枢と結びついているのか。
下手な真似をすると、トカゲの尻尾切りにあってしまう。
そうなっては、もう黒幕を追うのは難しいだろう。
生け捕りにして吐かせるのが得策か。
「この後リッチでも出る予定だったんじゃないのか?貴様でリッチの穴が埋まるのか?」
俺は男を挑発する。
「トラップとは言え、モンスターと最低でも同格でなければ召喚は出来ん。と言えば判ってもらえるか?」
リッチと同格だと。
また大きく出たな。
そんな事は有り得ない。
有り得ないからリッチなのだ。
貴様がリッチと同格ならば、リッチは人間を辞める必要など無い。
「僕を差し置いて話を進めないでくれるかい?ここへ女の子が来ただろう。その子供たちはどこに居るんだ」
ケンが話に入って来た。
「さぁね。一口に子供と言ってもみんな同じ使い道では無いのだよ」
使い道だと。
言い方が気に入らない。
お前の所有物では無い。
「ふふん。僕たちを見くびって、ずいぶんおしゃべりが過ぎるじゃないか。お前には証人として法廷で話してもらうからな」
ケンが抜刀する。
やはりやる気なのか。
俺と替わるつもりは、さらさら無いらしい。
「残念だな。そこまでくたびれていなければ、もう少し勝負になっただろうが」
「そうかい!」
ケンがいきなり衝撃波突きを繰り出す。
ボッ!
しかし男はこれを難なくかわす。
繰り出す途中から回避のモーションに入っていた。
読まれている。
初見でかわすのは難しい。
つまり、これまでの戦いを見ていたのだ。
「そんな使い古された技ではワシはやれんぞ」
「使い古された技だと……!」
ケンが気色ばむ。
「それは剣士が最終的に会得する技だろう。何百年も前から何も変わっていない。カビの生えた技だ」
男が鼻で笑った。
「へえ。その最終的な技まで辿り着く者は少ないんだがね。それを良く見てきたみたいな言い方をするんだね」
「ああ、幾度となく見てきた。もう見飽きたよ」
見飽きただと。
ハッタリか。
「面白い事を言う。だったら見たことの無い技をお披露目しよう」
ケンの気配がふっと変わる。
リラックスした雰囲気でありながら、ピリピリと張り詰めた緊張感。
これは、集中力だ。
相当な集中力を今発揮している。
魔法も無しにここまで集中力を高められるのか。
その事に俺は驚いた。
「ふむ」
男は何事か判らないまでも、警戒して身構える。
「スピリットフュージョン!」
ケンが叫んで剣を薙ぎ払う。
ビュオアッ!
剣の軌跡が実体化した。
と、同時にそれが真っ直ぐ男に向かって飛んだ。
「!?」
男はとっさに横へ跳ぶ。
ぎゅあっ!
しかし剣の軌跡は途中で曲がると、男を狙ってその後を追う。
追尾している。
「なんだこれは……!」
男の声音がわずかに動揺を訴えた。
「ただの衝撃波じゃないんだぜ?食われな!」
あの軌跡の正体は何なんだ。
まるで、生きているように男の後を追い掛けている。
「生きていると言うのか……!」
男はそう言うと、急に立ち止まって剣の軌跡を待ち構えた。
迎え撃つ気だ。
「プロテクション」
男がプロテクションを唱える。
たちまちプロテクションが男の前に張られた。
魔法による防御壁だ。
これにケンのスピリットフュージョンがぶつかった。
俺は男に尋ねた。
「ワシはここを任されておるだけだ。ここまでされたからには責任追及から逃れられんだろうが、せめてここで火消ししておかんとクビが飛ぶのでな」
組織の全体図が思い浮かばない。
かなり大きいのだろうと言う事は予測出来る。
どう王国の中枢と結びついているのか。
下手な真似をすると、トカゲの尻尾切りにあってしまう。
そうなっては、もう黒幕を追うのは難しいだろう。
生け捕りにして吐かせるのが得策か。
「この後リッチでも出る予定だったんじゃないのか?貴様でリッチの穴が埋まるのか?」
俺は男を挑発する。
「トラップとは言え、モンスターと最低でも同格でなければ召喚は出来ん。と言えば判ってもらえるか?」
リッチと同格だと。
また大きく出たな。
そんな事は有り得ない。
有り得ないからリッチなのだ。
貴様がリッチと同格ならば、リッチは人間を辞める必要など無い。
「僕を差し置いて話を進めないでくれるかい?ここへ女の子が来ただろう。その子供たちはどこに居るんだ」
ケンが話に入って来た。
「さぁね。一口に子供と言ってもみんな同じ使い道では無いのだよ」
使い道だと。
言い方が気に入らない。
お前の所有物では無い。
「ふふん。僕たちを見くびって、ずいぶんおしゃべりが過ぎるじゃないか。お前には証人として法廷で話してもらうからな」
ケンが抜刀する。
やはりやる気なのか。
俺と替わるつもりは、さらさら無いらしい。
「残念だな。そこまでくたびれていなければ、もう少し勝負になっただろうが」
「そうかい!」
ケンがいきなり衝撃波突きを繰り出す。
ボッ!
しかし男はこれを難なくかわす。
繰り出す途中から回避のモーションに入っていた。
読まれている。
初見でかわすのは難しい。
つまり、これまでの戦いを見ていたのだ。
「そんな使い古された技ではワシはやれんぞ」
「使い古された技だと……!」
ケンが気色ばむ。
「それは剣士が最終的に会得する技だろう。何百年も前から何も変わっていない。カビの生えた技だ」
男が鼻で笑った。
「へえ。その最終的な技まで辿り着く者は少ないんだがね。それを良く見てきたみたいな言い方をするんだね」
「ああ、幾度となく見てきた。もう見飽きたよ」
見飽きただと。
ハッタリか。
「面白い事を言う。だったら見たことの無い技をお披露目しよう」
ケンの気配がふっと変わる。
リラックスした雰囲気でありながら、ピリピリと張り詰めた緊張感。
これは、集中力だ。
相当な集中力を今発揮している。
魔法も無しにここまで集中力を高められるのか。
その事に俺は驚いた。
「ふむ」
男は何事か判らないまでも、警戒して身構える。
「スピリットフュージョン!」
ケンが叫んで剣を薙ぎ払う。
ビュオアッ!
剣の軌跡が実体化した。
と、同時にそれが真っ直ぐ男に向かって飛んだ。
「!?」
男はとっさに横へ跳ぶ。
ぎゅあっ!
しかし剣の軌跡は途中で曲がると、男を狙ってその後を追う。
追尾している。
「なんだこれは……!」
男の声音がわずかに動揺を訴えた。
「ただの衝撃波じゃないんだぜ?食われな!」
あの軌跡の正体は何なんだ。
まるで、生きているように男の後を追い掛けている。
「生きていると言うのか……!」
男はそう言うと、急に立ち止まって剣の軌跡を待ち構えた。
迎え撃つ気だ。
「プロテクション」
男がプロテクションを唱える。
たちまちプロテクションが男の前に張られた。
魔法による防御壁だ。
これにケンのスピリットフュージョンがぶつかった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~
ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。
王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。
15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。
国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。
これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜
のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、
偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。
水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは――
古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。
村を立て直し、仲間と絆を築きながら、
やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。
辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、
静かに進む策略と復讐の物語。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる