見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

文字の大きさ
802 / 826

八〇一

しおりを挟む
「おかしな術を使いやがって。魔法戦士か?それともその鎧の魔法効果か?」

 耳飾りの男が俺を、頭の先からつま先まで観察する。
どっちでも無いが、答えてやる義理も無い。

 ツカツカツカツカ

 俺は男に無防備に近付いた。

「おっと!動くなと言った筈だぜ。聞こえなかったのか。それとも貴様こそ鶏か?」

 しかし俺はそんな言葉は無視して男に接近する。

「おい!聞こえねぇのか!このガキを殺すと言ったんだぜ!」

 男が少年の首を掴まえて持ち上げた。

「い……痛いよ……ヒック」

 俺の怒りは更に増した。

「おい!止まれ!本当に殺すぞ!」

 そんな事で俺が止まるとでも思っているのか。
馬鹿め。

「……ち!お前たち!ヤツをぶっ殺せ!」

 堪らず男はモンスターたちに俺を殺せと命令する。

 ギャアアアアアアゴ!

 モンスターたちは待ってましたと一斉に襲い来る。
コボルト、オーク、ゴブリン。
この辺りは中級冒険者のパーティーならたいした脅威でも無い。

 ホブゴブリン、オーガはそれよりも数段上のレベルだ。

 そしてリザードマンが数体。
ここがおそらく最強戦力か。

 なんらたいした事は無い。
魔法を得意とするモンスターも居ない。
まるで話にならんな。

 グアアアアアアッ!

 コボルトとオーク、ゴブリンの混成部隊が襲い掛かる。

「サフィリナックスブレード」

 俺は両腕を光の刃に変えると、敵の武器ごと真っ二つにする。
あっと言う間に甲板は血だまりとなった。

 オオオオオオオオオオッ!

 ホブゴブリンとオーガが左右から圧力を掛けて来る。

 ぶうんっ!

 オーガの鉄棒が振り下ろされた。

 がしっ

 それを容易く受け止める。

「何の冗談だ」

 俺はそれをそのまま持ち上げると、先を掴まえていたオーガごと吊り上げる。

「オオッ!?ゴギャアアアアッ!」

 オーガが叫ぶ。

「うるさい」

 ぶうんっ

 俺はそれを更に薙ぎ払い、ホブゴブリンにぶつける。

 どかっ!

「グガッ!?」

 すっぽ抜けたオーガが飛んでいって、ホブゴブリンに当たった。
そのまま甲板から海へと落ちていく。
手間が省けたな。

「キシャアアアアア!」

 リザードマンたちが足を止めた。
遠巻きにして中々近付いて来ない。
さすがは知能が高くて戦闘力も高いと言われるリザードマンだ。
考え無しには襲って来ない。
強力な魔法無しには、今の俺はどうにも出来んぜ。

 上級冒険者パーティーのライバルと言えば、タイタンやジャイアントなどの巨人族やミノタウロスやワイバーンなどだろう。
この中でもワイバーンは頭一つ抜けている。
ジン、イフリートなどの精霊魔神は上級冒険者でも全滅の可能性すらある。

 最低でもこの辺りで無ければ勝負にもならない。
俺は向かって来ないリザードマンをジリジリと追い詰める。

「どうした!掛かれ!殺せと言っているんだ!」

 耳飾りの男が声を張り上げた。

 判らんか。
このレベル差が。

 俺はだっ、と駆け出すと、たちまちリザードマンを全員一刀両断にした。

「グギイイイイイ!」

 リザードマンの断末魔を聞いて、船員たちは完全に戦意を喪失していた。

「後はお前だけだぞ」

 俺は耳飾りの男を見た。

「く……」

 男は少年を持ち上げると盾にするかの如く、自分の前に晒した。

「ゴミめ……!」

 俺の怒りは既に頂点に達している。

「サフィリナックスミラージュ」

 俺はサフィリナックスミラージュを使った。
俺の視界に数字が表示され、カウントダウンが始まる。

「六〇」

 六〇から始まった。

 伸びている。

 約一分近く使えるようになっている。
俺の基礎的な力が成長したから、機能の上限が開放されたのか。

 ひゅっ!

 俺は一瞬のそのまた半分の時間で男へ接近した。

 ザンッ!

 そして一連の動作の中で男の腕を切断し、子供を取り返す。

「五九」

 そこでサフィリナックスミラージュを停止した。

「あ!?あああああああ!」

 男は一瞬、何があったのか理解できなかった。
しかし、次の瞬間には無くなった自分の腕を見て絶叫した。

「この船の行き先を言え。言わなければ次は頭から真っ二つだ」

 俺は子供を胸に抱きながら言った。
しおりを挟む
感想 238

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

処理中です...