見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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八〇六

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 これは玉座の間だな。
俺は足早に玉座の間へと向かった。

 たたたたっ

 エントランスから大きな階段を上がる。
その先はもう玉座の間だ。

 しかし、そこからは人が居た。
誰も俺には気付いていない。
侵入者そっちのけで玉座の間へと入っていく。
正確には入ろうとしているが、中々入れない様子だ。

 いったい何事だ。
俺は姿を消すと、人混みに紛れて玉座の間を覗いた。

 ドカッ!

 兵士がまとめて飛んできた。

 ドサドサドサドサッ

 戦闘だ。
大勢の兵士たちが次々に突っ込んで行く。
しかし、そのそばから片っ端に吹き飛ばされている。

 あれは。

 令子。
いや、ウロコフネタマイトだ。
子供たちを救助して帰ったんじゃ無いのか?
その側にはケンも居る。
お前、何やってんの。

 玉座には国王が座っており、その光景を眉一つ動かさずに見ている。

 どう言う状況だ。
俺は事情が飲み込めず、黙ってその光景を見守った。

「ええい!近衛兵をもっと呼べ!騎士団も全員来させろ!非番も関係無い!全員呼べええーッ!」

 玉座のそばで男が叫ぶ。
あれは宰相だ。
王の側にくっ付いて離れないのは親衛隊だな。

 良く判らんがケンとウロコフネタマイトは共闘しているのか。
どうやって仲良くなったんだ?
俺にはイマイチ事情が見えてこない。

 兵士の一人が宰相に報告した。

「なに?構わん、連れて来い!」

「ですが、さすがに城の中では……」

「そんな事を言っている場合かッ!王に万が一の事があったら、貴様とワシの首が飛ぶだけでは済まされんのだぞ!」

 えらい剣幕だな。

 怒鳴られて兵士はどこかへと去って行く。
まあ、ウロコフネタマイトが来ている時点で敗北は無いだろうが、この後いったいどうするつもりだ。

「貴様らッ!こんな事をしてただで済むと思っておるのかッ!国王の御前であるぞッ!控えんかッ、この痴れ者共があッ!」

 宰相が声を枯らして叫ぶ。
しかしそれは無駄な事だ。
ウロコフネタマイトにそんな脅しが効く訳が無い。

 兵士たちが大盾と長い槍を構えて、一列横隊で一斉に突撃する。
城の中でファランクスだと。
正気か。

「えいやああああああっ!」

 兵士たちの気勢が上がる。
わああ、とウロコフネタマイトとケンを押し潰すが如く、兵士たちが勢い良く突っ込んだ。

 ガガガキインッ!

 硬い音がする。
ウロコフネタマイトの装甲が、槍の穂先を弾き返す音だ。
大砲の砲撃さえモノともしないウロコフネタマイトに、今さらファランクスなんか通用するか。
ネオジョルト最高の防御力を誇るウロコフネタマイトだ。

「うふふふ。そんな柔らかい棒じゃアタシに声を上げさせるのは無理よ。ホラ、もっと頑張って」

 ウロコフネタマイトが妖しく言い放つ。

「ば、化け物……だ」

 兵士の中から声が上がる。
化け物ほど可愛くないがな。

 ルロロロロロロロオオッ!

 突然、咆吼が聞こえた。
今度はなんだ。
声の方を見る。

「ルロロロロロロロオオッ!」

 これは!

 ミノタウロスだと。
数十名に鎖で牽かれながら、下手の入り口からミノタウロスが入って来た。
馬鹿な。
王城の中だぞ。
しかも玉座の間に上級モンスターを連れ込むとは、気でも狂ったのか。

 巨大な扉でさえミノタウロスには低過ぎた。
体を低くして、窮屈そうに扉から中へと入って来る。

「ルロロロロロロロオオッ!」

 玉座の間の天井は高い。
とは言え、ミノタウロスの大きさに玉座の間自体が狭く感じる。

「あら、とても逞しそう。見掛け倒しじゃなきゃ良いけど」

 ウロコフネタマイトがミノタウロスを見て言った。

「なんて事を……城内にミノタウロスを招き入れるとは!宰相!どう言うつもりですか!」

 ケンが憤る。

「反逆者のクセにワシに説教する気か!この偽勇者め!」

 ケンは既に反逆者呼ばわりか。
だいたい判ってきたな。
しかしウロコフネタマイトが居る以上、俺に出番は無いように思われた。
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