見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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八一六

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 いや、無かった筈だ。
それがこの状況と関係があるのか。
そう考えるのはそれほど突拍子な事ではあるまい。

「サフィリナックスヒューイット!」

 俺はもう一度触手を伸ばす。
王は前回のように弾き返さず、ヒューイットをかわした。

 やはり伸びる直前から回避動作に移っているように見える。
ホンの一秒以下のわずかな瞬間。
そこで判断して動いているように見える。

 ウロコフネタマイトもジッと観察している。
これが王のスキルと考えて間違いあるまい。
ただ、それがどう言う類の物か未だ判らない。

 俺はもう一度触手を伸ばす。
しかし、今回は牽制の為だ。
あえて正確には放っていない。
当てるつもりの無い攻撃だ。

「ふふふ、狙いが甘いな。牽制のつもりか」

 しかし今度は回避しない。
と言うよりも反応自体していない。
ヒューイットは空振りした。

 心を読まれたのか?

 俺は疑心暗鬼に駆られた。
試してみるか。

「サフィリナックスフレイム!」

 フレイムで広範囲を焼き払う。
屋内ではあまり使いたく無いが、そんな場合では無い。
俺は口のシャッターを開き、火炎放射の体勢に入った。

「!?」

 だが火を噴くと同時に、王は素早く射程外に逃げた。

「なんだと!?」

 何故、初見の筈のフレイムの射程外に。
やはり読まれている。
俺は確信した。

「違うわよ。超反応だわ。おそらく彼の目には全てがスローモーションに映っている筈よ」

 ウロコフネタマイトが断言した。

 スローモーション?
だから技の起こりが確実に見えていると言うのか。
拳を握っただけでパンチを予見している。
なるほど。
確かにそれならまるで予言者のように予測して行動する事が可能かもしれない。
今までの動きも腑に落ちる。

 これが王のスキルか。

「ほほう。観察だけで余のスキルに気付くとは女、中々やるな。その通り。余のスキルは時間の神『クロノス』に愛されたギフト!時間を伸ばす事も可能なスキル!仕掛けが判ったとて破る事は出来まい!」

 王が高らかに自慢する。

 時間を伸ばす?
それはつまりどう言う事だ。
今一つピンと来ない。

「つまり、それこそが全てをスローモーションに感じる力と言う事ね。そんな事が出来るなんて、全くデタラメな世界だわ」

 ウロコフネタマイトはため息を吐いた。
あれほどの力を持つネオジョルトでさえも、王の力には呆れざるをえないのか。

 時間の神『クロノス』のギフト。

 それだけのスキルなのか?
序盤の神懸かった動きは、それだけで説明が付かない。
相手をスローに捉えたからと言って、サフィリナックスカタラクトの出かかりを見てどんな技かまで知る事は不可能だ。

 この力は、きっと他にもある。
俺は漠然とそう感じた。
時間の神『クロノス』の力。
ここに秘密がある筈だ。

 俺は考えを切り替えた。

「良いだろう。破れるか破れないか試してやる」

 俺はそう言うと、サフィリナックスミラージュの体勢に入る。

「ははは!大ホラ吹きめ!そんな事など出来る物か!」

 国王が叫ぶ。

 果たしてそうかな。
驚くが良い!

「サフィリナックスミラージュ!」

 俺はサフィリナックスミラージュを起動した。
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